2015年 中学受験対策 麻布中1
第191回 「麻布中 2014年」1
今回は「麻布中 2014年」の問題研究です。
算数は60分60点の試験です。
2014年度の入試結果は合格最低点が105点/200点(4科目)でしたから、
算数は30点超が必要という計算になります。
2014年度の入試については大問6の解説回でふれましたように、
基本レベル、中級レベル、上級レベルの問題が
非常にバランス良く出題されており、
実力の差がそのまま反映されやすいものでした。
ですから、算数が苦手というお子さんは、
いかに取りこぼしをしないかが大切だったといえます。
どの問題が取りこぼせなかったのか、
30点を目安に見ていきたいと思います。
大問1 決められた何種類かの整数を足し合わせて1つの整数を作る方法を考えます。例えば1、2、3のみを用いて5を作る方法は、
3+2、3+1+1、2+2+1、2+1+1+1、1+1+1+1+1
の5通り考えられます。ただし、足す順序が異なるだけのものは同じ方法とします。2、3、5のみを用いて30を作る方法は全部で何通りあるか答えなさい。
問題文中の例示と「ただし~」から、
たし算で考える必要はないという「ヒント」が読み取れます。
そこで「5」について場合分けをしていくと、
不定方程式タイプのつるかめ算(答えが複数あるつるかめ算)だとわかります。
「5」を6個たす場合…2×0+3×0+5×6=30 → 1通り
「5」を5個たす場合…2×1+3×1+5×5=30 → 1通り
「5」を4個たす場合…2×□+3×○+5×4=30 なので、
(□、○)=(5、0)(2、2)→ 2通り
「5」を3個たす場合…2×□+3×○+5×3=30 なので、
(□、○)=(0、5)(3、3)(6、1)→ 3通り
「5」を2個たす場合…2×□+3×○+5×2=30 なので、
(□、○)=(10、0)(7、2)(4、4)(1、6)→ 4通り
「5」を1個たす場合…2×□+3×○+5×1=30 なので、
(□、○)=(2、7)(5、5)(8、3)(11、1)→ 4通り
「5」を0個たす場合…2×□+3×○+5×0=30 なので、
(□、○)=(15、0)(12、2)(9、4)(6、6)(3、8)(0、10)→ 6通り
1通り+1通り+2通り+3通り+4通り+4通り+6通り=21通り
麻布中を受験する準備ができていれば、
不定方程式タイプのつるかめ算の処理に時間はかからないでしょうから、
大問1は正解が必要な問題です。
大問2 図1のようなたて3cm、横4cm、対角線5cmの長方形を、1辺の長さ7cmの正六角形にそってすべらないように転がします。図2の位置から矢印の方向に転がしていったところ、1周してもとの位置にもどりました。このとき、点Aの描いた曲線で囲まれた図形から正六角形を除いた部分の面積を求めなさい。
図形の転がり移動です。
正確な作図力と計算力が問われる問題です。
頂点記号を書くと間違いにくいですね。
下の図の3つのおうぎ形と2つの直角二等辺三角形の面積を求め、
3倍して答えを求めます。
(4cm×4cm×π×1/4+5cm×5cm×π×5/12+3cm×3cm×π×1/4
+3cm×4cm×1/2×2)×3
=50×π+36=193cm2
円周率をπ(または3.14)として最後にまとめて計算すると、
計算自体が楽ですし、間違いにくくなりますから、
「分配の決まり」や「結合の決まり」の練習はきちんとしておきたいところです。
解き方が決まっており、あとは正確な計算という問題ですから、
これが不正解ですと、合格点の確保は少し難しいように思われます。
大問3 線路にそって自転車で時速12kmで走っているたかし君は、上り電車には6分40秒おきに追い抜かれ、下り電車とは2分48秒おきにすれ違います。上り電車と下り電車はすべて同じ速さです。また、上り電車と下り電車はそれぞれ等間隔で走っており、その間隔の比は上りと下りで5:3です。電車の速さは時速何kmですか。ただし、電車の長さは考えないものとします。
「電車と人のすれ違い」問題です。
よく練習する問題は、
上りの電車も下りの電車も「等しい」間隔で走っていますが、
この問題では「5:3」となっています。
一見、難しく見えますが、
「等しい」と「1:1」が同じことだと考える癖をつけておけば、
この問題のように「5:3」であっても同じ考え方で解くことができます。
(距離の比)÷(時間の比)=(速さの比)を利用します。
電車の速さ-自転車の速さ=7、
電車の速さ+自転車の速さ=10 なので
(10-7)÷2=1.5…自転車の速さにあたる比、
10-1.5=8.5 …電車の速さにあたる比 と、
それぞれの速さが比で表せます。
ですから、自転車の速さ:電車の速さは 3:17 です。
自転車の速さは時速12kmとわかっていますので、
時速12km×17/3=時速68kmが電車の速さとわかります。
大問3は、
定番の解き方がなぜそうなっているのかを
理解しているお子さんには簡単に感じ、
解き方だけを暗記して問題を解いてきたお子さんには
「初めてみる問題」のように見えてしまい、
解くことができなかったかも知れません。
最難関中らしい良問で、
学習の質が問われる問題だと思います。
2014年度は「いかにも麻布中」といった問題だったのではないでしょうか?
奇をてらわず、学習したことを「覚える」だけでなく、
「活用」すると解ける問題がこの前半の3題です。
全部で大問が6題ですから、
30点/60点を超えるためには、
これらの3題は正解しておきたいところです。
そのためには、
学んだ解き方について「どんな理由でそうなるのか」を
説明できるような家庭学習と、確実な計算力が必要だといえます。
後半の3問については、次回見ていきたいと思います。
今回は「麻布中 2014年」の問題研究です。
算数は60分60点の試験です。
2014年度の入試結果は合格最低点が105点/200点(4科目)でしたから、
算数は30点超が必要という計算になります。
2014年度の入試については大問6の解説回でふれましたように、
基本レベル、中級レベル、上級レベルの問題が
非常にバランス良く出題されており、
実力の差がそのまま反映されやすいものでした。
ですから、算数が苦手というお子さんは、
いかに取りこぼしをしないかが大切だったといえます。
どの問題が取りこぼせなかったのか、
30点を目安に見ていきたいと思います。
大問1 決められた何種類かの整数を足し合わせて1つの整数を作る方法を考えます。例えば1、2、3のみを用いて5を作る方法は、
3+2、3+1+1、2+2+1、2+1+1+1、1+1+1+1+1
の5通り考えられます。ただし、足す順序が異なるだけのものは同じ方法とします。2、3、5のみを用いて30を作る方法は全部で何通りあるか答えなさい。
問題文中の例示と「ただし~」から、
たし算で考える必要はないという「ヒント」が読み取れます。
そこで「5」について場合分けをしていくと、
不定方程式タイプのつるかめ算(答えが複数あるつるかめ算)だとわかります。
「5」を6個たす場合…2×0+3×0+5×6=30 → 1通り
「5」を5個たす場合…2×1+3×1+5×5=30 → 1通り
「5」を4個たす場合…2×□+3×○+5×4=30 なので、
(□、○)=(5、0)(2、2)→ 2通り
「5」を3個たす場合…2×□+3×○+5×3=30 なので、
(□、○)=(0、5)(3、3)(6、1)→ 3通り
「5」を2個たす場合…2×□+3×○+5×2=30 なので、
(□、○)=(10、0)(7、2)(4、4)(1、6)→ 4通り
「5」を1個たす場合…2×□+3×○+5×1=30 なので、
(□、○)=(2、7)(5、5)(8、3)(11、1)→ 4通り
「5」を0個たす場合…2×□+3×○+5×0=30 なので、
(□、○)=(15、0)(12、2)(9、4)(6、6)(3、8)(0、10)→ 6通り
1通り+1通り+2通り+3通り+4通り+4通り+6通り=21通り
麻布中を受験する準備ができていれば、
不定方程式タイプのつるかめ算の処理に時間はかからないでしょうから、
大問1は正解が必要な問題です。
大問2 図1のようなたて3cm、横4cm、対角線5cmの長方形を、1辺の長さ7cmの正六角形にそってすべらないように転がします。図2の位置から矢印の方向に転がしていったところ、1周してもとの位置にもどりました。このとき、点Aの描いた曲線で囲まれた図形から正六角形を除いた部分の面積を求めなさい。
図形の転がり移動です。
正確な作図力と計算力が問われる問題です。
頂点記号を書くと間違いにくいですね。
下の図の3つのおうぎ形と2つの直角二等辺三角形の面積を求め、
3倍して答えを求めます。
(4cm×4cm×π×1/4+5cm×5cm×π×5/12+3cm×3cm×π×1/4
+3cm×4cm×1/2×2)×3
=50×π+36=193cm2
円周率をπ(または3.14)として最後にまとめて計算すると、
計算自体が楽ですし、間違いにくくなりますから、
「分配の決まり」や「結合の決まり」の練習はきちんとしておきたいところです。
解き方が決まっており、あとは正確な計算という問題ですから、
これが不正解ですと、合格点の確保は少し難しいように思われます。
大問3 線路にそって自転車で時速12kmで走っているたかし君は、上り電車には6分40秒おきに追い抜かれ、下り電車とは2分48秒おきにすれ違います。上り電車と下り電車はすべて同じ速さです。また、上り電車と下り電車はそれぞれ等間隔で走っており、その間隔の比は上りと下りで5:3です。電車の速さは時速何kmですか。ただし、電車の長さは考えないものとします。
「電車と人のすれ違い」問題です。
よく練習する問題は、
上りの電車も下りの電車も「等しい」間隔で走っていますが、
この問題では「5:3」となっています。
一見、難しく見えますが、
「等しい」と「1:1」が同じことだと考える癖をつけておけば、
この問題のように「5:3」であっても同じ考え方で解くことができます。
(距離の比)÷(時間の比)=(速さの比)を利用します。
電車の速さ-自転車の速さ=7、
電車の速さ+自転車の速さ=10 なので
(10-7)÷2=1.5…自転車の速さにあたる比、
10-1.5=8.5 …電車の速さにあたる比 と、
それぞれの速さが比で表せます。
ですから、自転車の速さ:電車の速さは 3:17 です。
自転車の速さは時速12kmとわかっていますので、
時速12km×17/3=時速68kmが電車の速さとわかります。
大問3は、
定番の解き方がなぜそうなっているのかを
理解しているお子さんには簡単に感じ、
解き方だけを暗記して問題を解いてきたお子さんには
「初めてみる問題」のように見えてしまい、
解くことができなかったかも知れません。
最難関中らしい良問で、
学習の質が問われる問題だと思います。
2014年度は「いかにも麻布中」といった問題だったのではないでしょうか?
奇をてらわず、学習したことを「覚える」だけでなく、
「活用」すると解ける問題がこの前半の3題です。
全部で大問が6題ですから、
30点/60点を超えるためには、
これらの3題は正解しておきたいところです。
そのためには、
学んだ解き方について「どんな理由でそうなるのか」を
説明できるような家庭学習と、確実な計算力が必要だといえます。
後半の3問については、次回見ていきたいと思います。