『速さ 上級レベルの学習ポイント』
第156回 2014年度入試間近 前受け校研究 ~1~
「函館ラ・サール中学校過去問集26年春受験用
(実物に近いリアルな紙面のプリント形式過去問4年分)
(北海道中学校過去入試問題集)」教英出版
11月も半ばを過ぎ、2014年度の入試もいよいよ間近なものとなりました。
そこで今回のテーマは「前受け校」です。
前受け校は滑り止め校であること以外に、
中学受験おける「最後の模擬試験」という位置づけがあります。
・みんなが正解できる問題は自分も正解する。
・明らかに難しい問題をパスして、見直しなどで試験時間を有効に使う。
これらの第1志望校で実行したいことを、
「最後の模擬試験」でも実践できたかのチェックが可能だからです。
合格をもらうことができれば、「ちゃんと実践できた!」という大きな自信につながります。
ではここで、前受け校のひとつである函館ラ・サール中学校(前期)の
2013年度の入試問題を見てみましょう。
2014年度の入試要項によれば、
合格者には合格通知・入学手続書類・個人成績票が発送されるので、
実践できたことの検証も可能な学校です。
ただし、偏差値がやや高いので受験するかどうかは慎重に見極めたいところです。
※SAPIX:56 日能研:62(以上2014年度用) 浜学園:55(2013年度用)
函館ラ・サール中学校の平成25年度入試データは以下の通りでした。
合格者平均点 188.6点/300点(算数 合格者平均 62.5点/100点)
大問1…小問集合
(1)四則計算
(2)工夫ができる四則計算
(3)逆算
(4)数の性質(場合の数またはN進法の利用)
(5)消去算
(6)数の性質
(7)数の性質
大問2-1…速さ(小問3)
大問2-2…食塩水の濃さと消去算(小問2)
大問3-1…立体図形(正多面体 小問8)※実質は小問3とみなせます。
大問3-2…立体図形(回転体・点の移動 小問3)
大問4…2点の移動(旅人算・求積 小問2)
大問5…規則性(小問2)
平成25年度の入試問題は算数が直近3年の中では最も難しく、
合格者平均点も平成24年度の83.3点から大幅に下がっています。
小問数は22問(大問3-1を3問とみなす)ですから、1問あたり約5点です。
得点率が62.5%ですから、だいたい14問くらいの正解で合格者平均点になりそうです。
この偏差値の学校を受験するお子さんの実力から判断すると、
大問1(1)(2)(3)(5)(6)
大問2 1-(1)(2)(3)、2-(1)(2)
大問3 1-ウ~ク(2問相当)、2-(1)(2)
の14問は、かなりの確率で正解できる問題だと思います。
そこで今回は、「この1問が正解できれば、
もし上記から1~2問を失点してもカバーできる」問題の候補として、
「速さの定番問題 上級レベル」である大問4の解き方を見ていきます。
函館ラ・サール中学校 平成25年度入試問題 算数 大問4
4 右の図のように、半径2cmの円周上に点P、Qがあります。いま、点P、Qが右の図の状態から同時にスタートし、円周上を動き続けます。点Pは反時計回りに進み、1周するのに10秒かかり、点Qは時計回りに進み、1周するのに5秒かかります。次の問いに答えなさい。
(1)点Pと点Qが25回目に重なるのは、点P、Qが同時にスタートしてから何秒後ですか。
(2)点Pと点Qが2013回目に重なった点と、点Pと点Qが2014回目に重なった点と、点Pと点Qが2015回目に重なった点の3点を結んでできる三角形の面積は何cm2ですか。ただし、必要ならば1辺が2cmの正三角形の高さは1.7cmであることを用いなさい。
5年生のお子さんも、そろそろ「速さと比」の学習を終えていることでしょうから、
チャレンジするときは
「2×2×3.14=12.56cm…円周」
を用いなくても解くようにしてみてください。
「比」を利用すれば、比較的楽にこの問題を解くことができます。
もし、「比」を利用せずに「がんばって計算して解く」場合は、
「定番の中級レベル」として位置づけてください。
それでは以下に解き方を示しますので、
「速さと比」の解法が使えているかのチェックしてみてください。
(1)点Pの速さ:点Qの速さ は 1:2 (時間のの比の逆比です)ですから、
同じ時間にすすむ距離の比も 1:2 です。
216°/360°=3/5 ですから、
点Pが円の1/5、点Qが円周の2/5進むと1回目の重なりがおきます。
点Pが円周の1/5を進むのにかかる時間は、
10秒×1/5=2秒後…1回目の重なり
です。
1回目に重なってから2回目に重なるまでに、
点Pと点Qはあわせて円1周ぶんの距離を進みますから、
点Pは円周の1/3、点Qは円周の2/3を進んで2回目の重なりがおきます。
点Pが円周の1/3を進むのにかかる時間は、
10秒×1/3=10/3秒
ですから、
1回目に重なった後は10/3秒ごとに2点は重なります。
ですから25回目の重なりは、
2秒+10/3秒×24回=82秒後
とわかります。
このように、
「池タイプ 出会いの旅人算 2点の進む距離の和=池1周」
という旅人算の中級テクニックに、
「速さと比」の視点から考えることで生まれる
「円周=2点の進む距離の比の合計」を利用すると、
簡単な計算で答えが求められました。
このように基本テクニックや中級テクニックを「比と割合の考え方」を持ち込むことで
より簡単に正解にたどりつける問題が「上級問題」だと思います。
つまり「上級問題」が解けるようになるためには、
「比」の使いこなしが重要だということです。
(2)は
(1)でわかった「点Pは円周の1/3進むごとに重なりがおきる」ことを使えば
簡単に答えが求められます。
2013~2015回目の重なりがどこで起ころうと、
これら3回の重なりは2013回目の重なった位置から、
反時計回りに円周の1/3ずつずれた点で重なりますから、
右のような図になります。
従って、
3.4cm×(1cm+2cm)÷2=5.1cm2
とわかります。
(1)で
「円を3等分する点で重なる」ことが上記の解説図のようにイメージできていれば、
(2)はサービス問題ですね。
(1)が解ければ(2)も解けますから、
大問4をパスしたり、失点したお子さんとは
約10点という大差がつく問題です。
「算数が中学入試の合否を左右する」
といわれる所以はここにあります。
このように
「上級問題が解ける=算数が得意になる」ことは、
中学入試にとって有利だと思います。
そのために、
基本問題を学習するときに、
・手を動かす(計算や作図、試行錯誤)
・図や表・グラフに落とし込む
といったことを通して、
「どういうことなのか」「なぜなのか」「どんなときに成立するのか」
といったことが理解できるようになり、
その力を使って中級レベルの定番問題を解けるようになっておきましょう。
「函館ラ・サール中学校過去問集26年春受験用
(実物に近いリアルな紙面のプリント形式過去問4年分)
(北海道中学校過去入試問題集)」教英出版
11月も半ばを過ぎ、2014年度の入試もいよいよ間近なものとなりました。
そこで今回のテーマは「前受け校」です。
前受け校は滑り止め校であること以外に、
中学受験おける「最後の模擬試験」という位置づけがあります。
・みんなが正解できる問題は自分も正解する。
・明らかに難しい問題をパスして、見直しなどで試験時間を有効に使う。
これらの第1志望校で実行したいことを、
「最後の模擬試験」でも実践できたかのチェックが可能だからです。
合格をもらうことができれば、「ちゃんと実践できた!」という大きな自信につながります。
ではここで、前受け校のひとつである函館ラ・サール中学校(前期)の
2013年度の入試問題を見てみましょう。
2014年度の入試要項によれば、
合格者には合格通知・入学手続書類・個人成績票が発送されるので、
実践できたことの検証も可能な学校です。
ただし、偏差値がやや高いので受験するかどうかは慎重に見極めたいところです。
※SAPIX:56 日能研:62(以上2014年度用) 浜学園:55(2013年度用)
函館ラ・サール中学校の平成25年度入試データは以下の通りでした。
合格者平均点 188.6点/300点(算数 合格者平均 62.5点/100点)
大問1…小問集合
(1)四則計算
(2)工夫ができる四則計算
(3)逆算
(4)数の性質(場合の数またはN進法の利用)
(5)消去算
(6)数の性質
(7)数の性質
大問2-1…速さ(小問3)
大問2-2…食塩水の濃さと消去算(小問2)
大問3-1…立体図形(正多面体 小問8)※実質は小問3とみなせます。
大問3-2…立体図形(回転体・点の移動 小問3)
大問4…2点の移動(旅人算・求積 小問2)
大問5…規則性(小問2)
平成25年度の入試問題は算数が直近3年の中では最も難しく、
合格者平均点も平成24年度の83.3点から大幅に下がっています。
小問数は22問(大問3-1を3問とみなす)ですから、1問あたり約5点です。
得点率が62.5%ですから、だいたい14問くらいの正解で合格者平均点になりそうです。
この偏差値の学校を受験するお子さんの実力から判断すると、
大問1(1)(2)(3)(5)(6)
大問2 1-(1)(2)(3)、2-(1)(2)
大問3 1-ウ~ク(2問相当)、2-(1)(2)
の14問は、かなりの確率で正解できる問題だと思います。
そこで今回は、「この1問が正解できれば、
もし上記から1~2問を失点してもカバーできる」問題の候補として、
「速さの定番問題 上級レベル」である大問4の解き方を見ていきます。
函館ラ・サール中学校 平成25年度入試問題 算数 大問4
4 右の図のように、半径2cmの円周上に点P、Qがあります。いま、点P、Qが右の図の状態から同時にスタートし、円周上を動き続けます。点Pは反時計回りに進み、1周するのに10秒かかり、点Qは時計回りに進み、1周するのに5秒かかります。次の問いに答えなさい。
(1)点Pと点Qが25回目に重なるのは、点P、Qが同時にスタートしてから何秒後ですか。
(2)点Pと点Qが2013回目に重なった点と、点Pと点Qが2014回目に重なった点と、点Pと点Qが2015回目に重なった点の3点を結んでできる三角形の面積は何cm2ですか。ただし、必要ならば1辺が2cmの正三角形の高さは1.7cmであることを用いなさい。
5年生のお子さんも、そろそろ「速さと比」の学習を終えていることでしょうから、
チャレンジするときは
「2×2×3.14=12.56cm…円周」
を用いなくても解くようにしてみてください。
「比」を利用すれば、比較的楽にこの問題を解くことができます。
もし、「比」を利用せずに「がんばって計算して解く」場合は、
「定番の中級レベル」として位置づけてください。
それでは以下に解き方を示しますので、
「速さと比」の解法が使えているかのチェックしてみてください。
(1)点Pの速さ:点Qの速さ は 1:2 (時間のの比の逆比です)ですから、
同じ時間にすすむ距離の比も 1:2 です。
216°/360°=3/5 ですから、
点Pが円の1/5、点Qが円周の2/5進むと1回目の重なりがおきます。
点Pが円周の1/5を進むのにかかる時間は、
10秒×1/5=2秒後…1回目の重なり
です。
1回目に重なってから2回目に重なるまでに、
点Pと点Qはあわせて円1周ぶんの距離を進みますから、
点Pは円周の1/3、点Qは円周の2/3を進んで2回目の重なりがおきます。
点Pが円周の1/3を進むのにかかる時間は、
10秒×1/3=10/3秒
ですから、
1回目に重なった後は10/3秒ごとに2点は重なります。
ですから25回目の重なりは、
2秒+10/3秒×24回=82秒後
とわかります。
このように、
「池タイプ 出会いの旅人算 2点の進む距離の和=池1周」
という旅人算の中級テクニックに、
「速さと比」の視点から考えることで生まれる
「円周=2点の進む距離の比の合計」を利用すると、
簡単な計算で答えが求められました。
このように基本テクニックや中級テクニックを「比と割合の考え方」を持ち込むことで
より簡単に正解にたどりつける問題が「上級問題」だと思います。
つまり「上級問題」が解けるようになるためには、
「比」の使いこなしが重要だということです。
(2)は
(1)でわかった「点Pは円周の1/3進むごとに重なりがおきる」ことを使えば
簡単に答えが求められます。
2013~2015回目の重なりがどこで起ころうと、
これら3回の重なりは2013回目の重なった位置から、
反時計回りに円周の1/3ずつずれた点で重なりますから、
右のような図になります。
従って、
3.4cm×(1cm+2cm)÷2=5.1cm2
とわかります。
(1)で
「円を3等分する点で重なる」ことが上記の解説図のようにイメージできていれば、
(2)はサービス問題ですね。
(1)が解ければ(2)も解けますから、
大問4をパスしたり、失点したお子さんとは
約10点という大差がつく問題です。
「算数が中学入試の合否を左右する」
といわれる所以はここにあります。
このように
「上級問題が解ける=算数が得意になる」ことは、
中学入試にとって有利だと思います。
そのために、
基本問題を学習するときに、
・手を動かす(計算や作図、試行錯誤)
・図や表・グラフに落とし込む
といったことを通して、
「どういうことなのか」「なぜなのか」「どんなときに成立するのか」
といったことが理解できるようになり、
その力を使って中級レベルの定番問題を解けるようになっておきましょう。