第608回 共学中の入試問題 比と割合 3
「第608回 共学中の入試問題 比と割合 3」
前回は、2022年度の共学中入試で出された「比と割合」の中から、「食塩水の濃さの一行問題」などを見ました。
今回は「食塩水の濃さ」の大問形式の問題を扱っていきます。
まずは、1問目です。
【問題】容器Aには濃度4%の食塩水が300g、容器Bには濃度10%の食塩水が200g入っています。容器Aと容器Bから同じ重さの食塩水を同時に取り出し、容器Aから取り出した食塩水は容器Bに、容器Bから取り出した食塩水は容器Aに入れてよくかき混ぜると、容器Aと容器Bの食塩水の濃度は等しくなりました。
(1)かき混ぜた後の容器Aの食塩水の濃度は何%ですか。
(2)容器Aから取り出した食塩水の重さは何gですか。
(成蹊中学校 2022年 問題3)
【考え方】
(1)
食塩水のやりとりの問題は、流れ図に整理することが解き方の基本です。
本問は「等量交換」をしますので、食塩水の重さの合計や食塩の重さの合計が変わらないことにも着目します。
また、「交換後の濃度が等しい」ことから、その濃度は「すべてを混ぜ合わせたときの濃度と同じ」という点も大切なポイントです。
(300g×0.04+200g×0.1)÷(300g+200g)=0.064
☆%=6.4%
答え 6.4%
(2)
(1)より、交換後の容器Aの中の食塩の重さは
300g×0.064=19.2g
と分かりますから、交換前よりも
19.2g-12g=7.2g
増加しています。
濃度4%の食塩水と濃度10%の食塩水を100g交換すると、食塩の重さは
100g×(0.1-0.04)=6g
変化します。
よって、交換した食塩水の重さは
100g×7.2g/6g=120g
です。
答え 120g
(別解)…天びん法の利用
(1)
容器Aと容器Bの食塩水をすべて混ぜたときの様子を天びん法で整理します。
重さの比 300g:200g=3:2
↓
うでの長さの比 ②:③
②+③=10%-4%
①=1.2%
4%+1.2%×2=6.4%
答え 6.4%
(2)
容器Aの様子を天びん法で整理します。
うでの長さの比 (6.4%-4%):(10%-6.4%)=2:3
↓
重さの比 ③:②
③g+②g=300g
①g=60g
60g×2=120g … BからAに移した食塩水の重さ
BからAに移した食塩水の重さとAからBに移した食塩水の重さは同じですから、答えは120gです。
答え 120g
本問は、食塩水の等量交換の解法が確認できる問題です。
「食塩水の濃さ」では定番問題の1つですので、正解できなかったときはすぐにおさらいをしましょう。
では、2問目です。
【問題】食塩水A、B、Cがあります。Aの量は、Cの量の2倍で、濃度はAが15%、Bが5%、Cが9%です。また、3つの食塩水をすべて混ぜ合わせると11%の食塩水が600gできます。このとき、次の各問いに答えなさい。
(1)AとCをすべて混ぜ合わせると何%の食塩水ができますか。
(2)Bは何gですか。
(3)AとBを混ぜ合わせて9%の食塩水をできるだけ多く作るとき、食塩水は何gできますか。
(山手学院中学校 2022年 問題3)
【考え方】
(1)
食塩水の重さが割合で表されていますので、天びん法を利用します。
②+①=15%-9%
①=2%
9%+2%×2=13%
答え 13%
(別解)
食塩水Aの重さを200g、食塩水Cの重さを100gと仮定して、次のように「塩分数」を用いて計算する方法もあります。
答え 13%
(2)
(1)の食塩水にBを混ぜると11%の食塩水が600gできます。
①+③=600g
①=150g
答え 150g
(3)
(2)より、AとCの重さの和は
150g×3=450g
ですから、Aは
450g×2/3=300g
です。
AとBのどちらか一方をすべて使う場合を調べます。
・Aをすべて使う場合
②=300g
より
③=450g
となりますが、Bは150gしかないのでこの組み合わせ方はできません。
・Bをすべて使う場合
③=150g
より
②=100g
となり、Aは350gありますので、この組み合わせ方は可能です。
100g+150g=250g
答え 250g
本問は、重さが割合で与えられているときの条件整理方法と「過不足がでる組み合わせ」の考え方が確認できる問題です。
今回は2022年度の共学中の入試で出された「食塩水の濃さ」の大問形式の問題について考えました。
「食塩水のやりとり」がテーマの問題を解くためには、流れ図などの整理方法、整理した条件の着眼点とそれに適した解法をマスターしておくことが大切です。
次回は、今回よりも少し難しい大問形式の「食塩水の濃さ」を取り扱う予定にしています。