2013年 中学入試 平成26年度に向けて⑫
~今回も「大問形式」、テーマは「数の性質」です。~
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前回の「速さ」に引き続き、
多くの受験生が難しいとする「数の性質」&「場合の数」が
今回の問題のテーマです。
「数の性質」、「場合の数」の難しいところは、
基本問題が覚えやすく、計算式も単純なのに、
応用問題がとても難しく、
そのギャップがとても大きいところにあります。
応用問題が解けるようになるために必要な、やや高度な知識の数が多いこと、
さらにそれらの知識の組み合わせが多いことが、
ギャップが大きくなる理由だと思います。
「数の性質」、「場合の数」の応用問題では、
どのように知識を組み合わせて利用するのか、
2013年灘中2日目-2をとおしてみていきましょう。
2 2013は4個の連続する数字0,1,2,3を並べ替えてできる数です。また、4213も4個の連続する数字1,2,3,4を並べ替えてできる数です。このように、4個の連続する数字を並べ替えてできる4桁の数について考えます。
(1)3で割り切れるものは全部で何個ありますか。
(2)千の位、百の位、十の位の数を左から順に並べてできる3桁の数を3で割ったときの余りと、1一の位の数を3で割ったときの余りが等しいものは全部で何個ありますか。
「3で割り切れる」、「3で割った余り」は、難関中で頻出のテーマです。
5年生であれば、
「各位の数の和が3で割り切れる整数は3の倍数」という、
倍数判定法を習ったことがあるでしょう。
この問題のように中学入試では、
「3の倍数」と「場合の数」を組み合わせた問題が多くあります。
3の倍数判定法に加え、
順列や組み合わせの計算技術が土台となった問題です。
順列は、「A,B,Cの3人が横1列に並びます。何通りの並び方がありますか。」
などを基本問題として扱いますね?
樹形図で解けるようになれば、
次は「3×2×1=6(通り)」といった、計算方法をマスターします。
組み合わせは、
「A,B,C,D,Eの5人がいます。この中から2人を選びます。何通りの選び方がありますか。」
などが基本問題です。
樹形図などの書き出し方法を覚えたら、
「5×4÷2=10(通り)」といった、計算方法を学びます。
倍数判定法のような知識や場合の数の計算技術が自由自在に使えることは、
難関中を目指すお子さんには必須です。
(1)は、ここにちょっとだけ高度な知識を加えると、とても簡単に解くことができます。
ポイントは問題文中にあった「連続する」です!
そうです!
「3つの連続する整数の和は3の倍数になる」という知識です。
これをこの問題の「4個の連続する数字」に利用すると…。
4個の連続する数字ア、イ、ウ、エのうち、イ+ウ+エが3の倍数なのですから、
もし、アが3の倍数であれば、ア+イ+ウ+エも3の倍数になることがわかります。
ということは、
(0,1,2,3)、(3,4,5,6)、(6,7,8,9)の3パターンだけが
(1)にあてはまる4個の連続する数字の組み合わせです。
あとはこの並べ替え方=場合の数です。
(0,1,2,3)→3×3×2×1=18(個)
(3,4,5,6)→4×3×2×1=24(個)
(6,7,8,9)→4×3×2×1=24(個)
ですから、 18+24+24=66(個)が(1)の答えです。
(2)は(1)で気づいたことを利用できそうです。
つまり、2013年度の灘中2日目-2は「誘導タイプ」の大問ということなんですね。
「誘導」を利用するためには、
例えば「3で割って1余る整数+3で割って1余る整数=3で割って2余る整数」のような、
「余りの応用」の知識が必要です。
奇数+奇数=□数 などがその基本問題です。
最初は具体的な奇数を考えて、「3+5=8 なので、偶数だ!」でOKです。
それができるお子さんは「奇数は2で割った余りが1になる整数」なので、
(偶数+1)+(偶数+1)=偶数+2=偶数のように、
余りだけに着目しても大丈夫だという知識を手に入れておくと、
この(2)のような難関中の問題でも有利です。
さっそく使ってみましょう。
4桁の整数をABCDで表すと、
「3桁の整数ABCを3で割った余り=Dを3で割った余り」
という問題にですから、
3桁の整数ABCを3で割った余り……0 1 2
Dを3で割った余り……………………0 1 2(+
4桁の整数ABCDを3で割った余り…0 2 1
のように場合分けができます。
(1)でわかったことから、4つの連続する数をア、イ、ウ、エとすると、
4桁の整数を3で割った余りが0のときは、ア=0,3,6
4桁の整数を3で割った余りが1のときは、ア=1,4
4桁の整数を3で割った余りが0のときは、ア=2,5
(注意:7,8,9からはじまる4つ連続する数字はありません。)
の7組の4連続する数字について考えればよいことがわかります。
ⅰ)4桁の整数ABCDを3で割った余りが0のとき
(0,1,2,3)→D=0のとき、(1,2,3)の並べ方は、3×2×1×=6(個)
(0,1,2,3)→D=3のとき、(0,1,2)の並べ方は、2×2×1×=4(個)
(3,4,5,6)→D=3のとき、(4,5,6)の並べ方は、3×2×1×=6(個)
(0,1,2,3)→D=6のとき、(3,4,5)の並べ方は、3×2×1×=6(個)
(6,7,8,9)→D=6のとき、(7,8,9)の並べ方は、3×2×1×=6(個)
(0,1,2,3)→D=9のとき、(6,7,8)の並べ方は、3×2×1×=6(個)
ⅱ)4桁の整数ABCDを3で割った余りが2のとき
(2,3,4,5)→D=4のとき、(2,3,5)の並べ方は、3×2×1×=6(個)
(5,6,7,8)→D=7のとき、(5,6,8)の並べ方は、3×2×1×=6(個)
ⅲ)4桁の整数ABCDを3で割った余りが1のとき
(1,2,3,4)→D=2のとき、(1,3,4)の並べ方は、3×2×1×=6(個)
(4,5,6,7)→D=5のとき、(4,6,7)の並べ方は、3×2×1×=6(個)
ⅰ)が34個、ⅱ)とⅲ)が12個ずつなので、34+12+12=58(個)が(2)の答えです。
(途中から、それぞれが全部6個であることに気づけると、もっとはやく正解できますね。)
このように難関中の「数の性質」&「場合の数」という問題は、
「書き出し力」だけでは厳しい問題が多いようです。
ですからこれらのハイレベルな問題を正解できるようになるためには、
1 順序よく「書き出し」、「場合分け」ができる。
2 順列の計算方法ように、知識を正確に使うことができる。
3 「2」の知識のワンランク上の知識を学ぶ。
という段階があります。
「数の性質」、「場合の数」とも決して易しい単元ではありませんが、
「3」の段階が勝負のポイントです。
5年生のときは「3」の知識を学ぶところまで、
6年生は「3」の知識の理由とその実戦までを当面の目標に、
これらの単元を学習できればいいなと思います。