小川大介の中学受験合格を実現する逆算受験術

中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 -> 主任相談員の中学受験ブログ -> 前田昌宏の中学受験が楽しくなる算数塾 -> 図形の練習問題  -> 水の問題 来年受験生になる5年生のお子さんへ

水の問題 来年受験生になる5年生のお子さんへ

このエントリーをはてなブックマークに追加
図形の練習問題 2012年12月01日18時00分
椿!

m_20121201_01.jpg

ツバキの種子です。

ツバキの仲間には、ヤブツバキ、サザンカ、カンツバキ、ナツツバキなどがあります。

サザンカを漢字では「山茶花」と書きますが、
これからも連想されるように「チャノキ(いわゆる『お茶』のことです!)」もツバキの仲間なんです。


お茶は食卓に欠かせないものですし、
最近脚光を浴びているツバキの種子からとれる椿油も、
平安時代の昔から髪油として長く生活にかかわってきたものです。


また、椿油は体や環境に優しい食用油としても使われています。


こんな昔からある椿油ですが、
ツバキの種子1㎏から採れる量は多くて250ccくらい、少ないと100ccもできないそうですから、
貴重なものなんですね。



ちはやぶる 伊豆のお山の 玉椿 八百万代も 色はかはらじ   源実朝



ところで、「cc」が「cubic centimetre(立方センチメートル)」の略だって知っていました?

ということで、今回のテーマは「立方センチメートル」が登場する、「水の問題」です。


水の問題には前回ご紹介した「水が入った容器を傾ける問題」もあるのですが、
今回はそれより少し易しい「棒入れ問題」です。


この問題を解くための図の書き方は2通りあるのですが、
それぞれに一長一短があるため、
5年生で学んだ時にうまく理解できないお子さんも多いようです。


また、棒入れ問題には「予測」を必要とする問題もあり、
このことも「水の問題」を難しく感じさせる一つの理由でしょう。


さて、この2つに解法を平成20年度の慶応湘南藤沢中の問題でみていきましょう。

円周率が与えられていますので、5年生で学んだことを使えば解くことができますよ。
難関校の入試問題ですが、ぜひチャレンジしてみましょう!



【問題】
円柱の形をした高さ20cmの容器Aと高さ6cmの容器Bがあり、容器Aと容器Bの底面の半径の比は3:2である。容器Aには高さ10cmまで水が入っており、容器Bは空である。いま、容器Bを容器の口を上にし、容器Bの底面を容器Aの底面と平行にしたまま水の中に沈めていく。容器の厚みは考えないものとして、以下の問いに答えなさい。(必要ならば円周率は3で計算しなさい。)
(1)容器Bの中に水が入る瞬間の、容器Aの水面の高さは何cmですか。
(2)容器Bに水が入り始めてから後、容器A の水面の高さが12cmになった。このとき、容器Bの底面から測った容器Bの水面の高さは何cmですか。

m_20121201_02.jpg

2つの解法のうち、まずは市販教材によく掲載されている解法で解いてみましょう。


「水の問題は、真正面から見た図を書く」が基本です。

そして、水面や容器の高さを図(長方形)のたてに、容器の底面積を図(長方形)の横に書き込みます。

「必要ならば円周率は3で計算しなさい」とありますが、ここは「比」を利用しましょう。

容器Aの底面も容器Bの底面も「円」ですから、底面は相似です。
その円の「半径の比が3:2」ですから、「面積の比は9:4」です。

ですから「水が入る瞬間」の図は、次のようになります。

m_20121201_03.jpg

この解法の特徴は「変化した部分に着目」するという点です。

つまり、「なぜ水面が上昇したのか?」を考えるのです。


もちろん、容器Bによって「押しのけられた」んですね。


この「押しのけられた水という、言葉がわからない」ために、
「水の問題が苦手」というお子さんがおられます。

ここがチェックポイントのひとつです。


図のように、
容器Bが元の水面より下に入り込んだ体積(=ア)の分だけ、水が押しのけられ(=イ)ているんですね。

つまり、ア=イ です。

m_20121201_04.jpg

アとイについて、
体積比  1:1
底面積比 4:5
なので、
高さの比 ⑤:④
です。

m_20121201_05.jpg

図から、⑤+④=6cm とわかりますので、④=8/3cm です。
問われているのは水面の高さなので、10+8/3=12 2/3cmとなります。


この解法は「押しのけられる」ということが理解できるならば、
解答のために書く図がシンプルなので、
手間がかからないというメリットがあります。



では、もう一つの解法だとどうなるのでしょう?

こちらの解法は「2つの図を見比べる」解き方です。

つまり、容器Bを沈める前と沈めた後の図を「横ならび」に書きます。

この「横ならび」というのが重要な部分です。

m_20121201_06.jpg

この解法のポイントは、「補助線=高くなった水面を延長する」です。

図を横ならびに書いているので、「補助線より下の部分の体積が等しくなる」からです。

m_20121201_070.jpg

つまり、(左の図)すき間+水=(右の図)容器Bの容積+水 です。
もちろん水の体積は同じですから、すき間=容器Bの容積 とわかります。

すき間と容器Bの容積について、
体積比   1:1
底面積比  9:4
なので、
高さの比  ④:⑨ です。

⑨=6cmですから、④=8/3cm となり、10+8/3=12 2/3cmと求められます。


この解法は、解答のために書く図が多いのが手間なのですが、
等しい体積が見つけやすいというメリットがあります。


この2つの解法は、どちらも使えるようになるのが望ましいと思います。

(1)は、等しい体積を見つけやすいので、
手間のかからない「図1つ」解法を選択できると、時間の節約ができますね。


では、(2)はどうでしょうか?

もちろん時間が節約できる「図1つ」解法でいつでも正確に解けるお子さんは、
そのやり方を継続してください。


実は「水の問題が苦手」といわれるお子さんの大半が、
この(2)のような問題で「図1つ」解法を使いこなせないんです。


そこで、そのようなお子さんにはぜひ「図2つ」解法を試してみて欲しいと思います。

m_20121201_08.jpg

この場合でも(1)と同じように、図を横にならべ、高くなった水面を延長します。
水は加えることも取り出すこともしませんでしたから、体積は変わりません。

ということは、図の「すき間 ア = すき間 イ」です。

すき間アとすき間イについて、
体積比   1:1
底面積比  9:4
なので、
高さの比  ④:⑨ です。

④=2cmですから、⑨=4.5cm となり、すき間イの高さが求められます。

答えるのは容器Bの中の水の高さですから、6-4.5=1.5cm です。


どうですか?
「どの体積が等しいんだろう?」なんて混乱することもなく、あっさりと解答できましたね。


算数には基本的な解き方と少し工夫をした解き方(いわゆる「別解」)があります。

この問題のように解法を2つ持っていると、問題に応じて、
①スピード解法
②安全策解法(正確さ優先) を
使い分けることができるので、
模試や入試有利だと思います。


市販教材や塾教材の一部には、複数の解法を記載しているものがあります。

家庭学習の時間が比較的とれる5年生のうちにそれ欄教材を利用して、
より多くの解法を習得できるといいですね。
 
このエントリーをはてなブックマークに追加
図形の練習問題 2012年12月01日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
Copyright (c) 2008- 中学受験情報局『かしこい塾の使い方』 All rights reserved.