水の問題 来年受験生になる5年生のお子さんへ
椿!
ツバキの種子です。
ツバキの仲間には、ヤブツバキ、サザンカ、カンツバキ、ナツツバキなどがあります。
サザンカを漢字では「山茶花」と書きますが、
これからも連想されるように「チャノキ(いわゆる『お茶』のことです!)」もツバキの仲間なんです。
お茶は食卓に欠かせないものですし、
最近脚光を浴びているツバキの種子からとれる椿油も、
平安時代の昔から髪油として長く生活にかかわってきたものです。
また、椿油は体や環境に優しい食用油としても使われています。
こんな昔からある椿油ですが、
ツバキの種子1㎏から採れる量は多くて250ccくらい、少ないと100ccもできないそうですから、
貴重なものなんですね。
ちはやぶる 伊豆のお山の 玉椿 八百万代も 色はかはらじ 源実朝
ところで、「cc」が「cubic centimetre(立方センチメートル)」の略だって知っていました?
ということで、今回のテーマは「立方センチメートル」が登場する、「水の問題」です。
水の問題には前回ご紹介した「水が入った容器を傾ける問題」もあるのですが、
今回はそれより少し易しい「棒入れ問題」です。
この問題を解くための図の書き方は2通りあるのですが、
それぞれに一長一短があるため、
5年生で学んだ時にうまく理解できないお子さんも多いようです。
また、棒入れ問題には「予測」を必要とする問題もあり、
このことも「水の問題」を難しく感じさせる一つの理由でしょう。
さて、この2つに解法を平成20年度の慶応湘南藤沢中の問題でみていきましょう。
円周率が与えられていますので、5年生で学んだことを使えば解くことができますよ。
難関校の入試問題ですが、ぜひチャレンジしてみましょう!
【問題】
円柱の形をした高さ20cmの容器Aと高さ6cmの容器Bがあり、容器Aと容器Bの底面の半径の比は3:2である。容器Aには高さ10cmまで水が入っており、容器Bは空である。いま、容器Bを容器の口を上にし、容器Bの底面を容器Aの底面と平行にしたまま水の中に沈めていく。容器の厚みは考えないものとして、以下の問いに答えなさい。(必要ならば円周率は3で計算しなさい。)
(1)容器Bの中に水が入る瞬間の、容器Aの水面の高さは何cmですか。
(2)容器Bに水が入り始めてから後、容器A の水面の高さが12cmになった。このとき、容器Bの底面から測った容器Bの水面の高さは何cmですか。
2つの解法のうち、まずは市販教材によく掲載されている解法で解いてみましょう。
「水の問題は、真正面から見た図を書く」が基本です。
そして、水面や容器の高さを図(長方形)のたてに、容器の底面積を図(長方形)の横に書き込みます。
「必要ならば円周率は3で計算しなさい」とありますが、ここは「比」を利用しましょう。
容器Aの底面も容器Bの底面も「円」ですから、底面は相似です。
その円の「半径の比が3:2」ですから、「面積の比は9:4」です。
ですから「水が入る瞬間」の図は、次のようになります。
この解法の特徴は「変化した部分に着目」するという点です。
つまり、「なぜ水面が上昇したのか?」を考えるのです。
もちろん、容器Bによって「押しのけられた」んですね。
この「押しのけられた水という、言葉がわからない」ために、
「水の問題が苦手」というお子さんがおられます。
ここがチェックポイントのひとつです。
図のように、
容器Bが元の水面より下に入り込んだ体積(=ア)の分だけ、水が押しのけられ(=イ)ているんですね。
つまり、ア=イ です。
アとイについて、
体積比 1:1
底面積比 4:5
なので、
高さの比 ⑤:④
です。
図から、⑤+④=6cm とわかりますので、④=8/3cm です。
問われているのは水面の高さなので、10+8/3=12 2/3cmとなります。
この解法は「押しのけられる」ということが理解できるならば、
解答のために書く図がシンプルなので、
手間がかからないというメリットがあります。
では、もう一つの解法だとどうなるのでしょう?
こちらの解法は「2つの図を見比べる」解き方です。
つまり、容器Bを沈める前と沈めた後の図を「横ならび」に書きます。
この「横ならび」というのが重要な部分です。
この解法のポイントは、「補助線=高くなった水面を延長する」です。
図を横ならびに書いているので、「補助線より下の部分の体積が等しくなる」からです。
つまり、(左の図)すき間+水=(右の図)容器Bの容積+水 です。
もちろん水の体積は同じですから、すき間=容器Bの容積 とわかります。
すき間と容器Bの容積について、
体積比 1:1
底面積比 9:4
なので、
高さの比 ④:⑨ です。
⑨=6cmですから、④=8/3cm となり、10+8/3=12 2/3cmと求められます。
この解法は、解答のために書く図が多いのが手間なのですが、
等しい体積が見つけやすいというメリットがあります。
この2つの解法は、どちらも使えるようになるのが望ましいと思います。
(1)は、等しい体積を見つけやすいので、
手間のかからない「図1つ」解法を選択できると、時間の節約ができますね。
では、(2)はどうでしょうか?
もちろん時間が節約できる「図1つ」解法でいつでも正確に解けるお子さんは、
そのやり方を継続してください。
実は「水の問題が苦手」といわれるお子さんの大半が、
この(2)のような問題で「図1つ」解法を使いこなせないんです。
そこで、そのようなお子さんにはぜひ「図2つ」解法を試してみて欲しいと思います。
この場合でも(1)と同じように、図を横にならべ、高くなった水面を延長します。
水は加えることも取り出すこともしませんでしたから、体積は変わりません。
ということは、図の「すき間 ア = すき間 イ」です。
すき間アとすき間イについて、
体積比 1:1
底面積比 9:4
なので、
高さの比 ④:⑨ です。
④=2cmですから、⑨=4.5cm となり、すき間イの高さが求められます。
答えるのは容器Bの中の水の高さですから、6-4.5=1.5cm です。
どうですか?
「どの体積が等しいんだろう?」なんて混乱することもなく、あっさりと解答できましたね。
算数には基本的な解き方と少し工夫をした解き方(いわゆる「別解」)があります。
この問題のように解法を2つ持っていると、問題に応じて、
①スピード解法
②安全策解法(正確さ優先) を
使い分けることができるので、
模試や入試有利だと思います。
市販教材や塾教材の一部には、複数の解法を記載しているものがあります。
家庭学習の時間が比較的とれる5年生のうちにそれ欄教材を利用して、
より多くの解法を習得できるといいですね。