第586回 女子中の入試問題 立体図形 5
「第586回 女子中の入試問題 立体図形 5」
2021年度、2022年度の女子中の入試問題の中から「立体図形」の問題を取り扱っています。
今回は「水問題」について考えます。
1問目は、「棒入れ」の問題です。
【問題】図1のように上部が開いている直方体の水そうを水平において、水を1200㎤入れました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)図1の水面の高さは何㎝ですか。
(2)図1の水そうの中に、図2の直方体の重りを底面が水そうの底にぴったりとくっつくように入れたとき、水面の高さは何㎝になりますか。
(3)図1の水そうの中に、図3の直方体の重り1個を水の中に完全にしずめたとき、水面の高さは何㎝上がりますか。
(4)図1の水そうの中に、図3の直方体の重りを何個か完全にしずめていきます。何個目の重りを完全にしずめたときに初めて水があふれますか。また、あふれた水の体積は何㎤ですか。
(田園調布学園中等部 2021年 問題3)
【考え方】
(1)
容器の底面積×水の高さ=水の体積です。
1200㎤÷(8㎝×10㎝)=15㎝
答え 15㎝
(2)
見取り図をかくと次のようになります。
「水問題」はこのような見取り図をかいて考えてもかまいませんが、見取り図よりもかきやすい水そうを正面から見た図(投影図)利用するとよいでしょう。
投影図を利用するときは、
1.水そう(長方形)の横は底面積をかく。
2.棒を入れる前と後の図を並べてかく。
ことがポイントです。
水の体積(=赤色斜線の長方形の面積★)は変わりませんから、縦(水の深さ)の長さの比は横(底面積)の長さの比の逆比です。
底面積比 80㎠:50㎠=8:5
↓
水の深さの比 ⑤:⑧
⑤=15㎝ → ①=3㎝
⑧=3㎝×8=24㎝
答え 24㎝
(3)
投影図は次のようになります。
(2)のときと異なりおもりを沈めた後の水(★)が長方形ではないので「比」を利用できません。
このようなときは、「高い方の水面を延長」します。
水の体積は変わりませんから、☆の体積とおもりの体積が等しいことになります。
15㎠×6㎝÷80㎠=1.125㎝ … ☆の高さ=水面の上がる高さ
答え 1.125㎝
(4)
水があふれる瞬間を投影図で表します。
(3)と同じように考えると、☆の体積=おもりの体積です。
80㎠×(25㎝-15㎝)=15㎠×6㎝×□個
□=8.88…(個)
よって、9個目のおもりを沈めると水があふれ出します。
また、水があふれた理由は、はじめにあったすき間(☆)よりも沈めたおもりの体積が大きいからです。
あふれる水の体積=沈めたおもりの体積の合計-はじめのすき間の体積
15㎠×6㎝×9個-80㎠×(25㎝-15㎝)=10㎤
答え 9個、10㎤
本問は、水問題の中の「棒入れ」と「あふれる水」の基本レベルの問題です。
本問などを利用して、水問題の投影図の使い方を確認してみましょう。
2問目は、「容器の向きを変える」問題です。
【問題】[図4]のように三角柱の形をした水そうに水が入っています。この水そうの面ABCを底面とするように水そうをたおしたとき、水の深さは何㎝になりますか。式を書いて求めなさい。
(日本女子大学附属中学校 2022年 問題2-(9))
【考え方】
水そうに入っている水の形は台形を底面とする四角柱です。
これに着目しても構わないのですが、より計算のしやすい「すき間(三角柱)」を利用していきます。
三角形ABCと三角形ADEは相似で、相似比は
BC:DE=16㎝:4㎝=4:1
です。
ですから、AC=12㎝=④とすると①=3㎝=AEとわかります。
4㎝×3㎝÷2×10㎝=60㎤ … すき間の体積
水そうを面ABCが底面となるようにたおすと次のようになります。
60㎤÷(16㎝×12㎝÷2)=0.625㎝ … すき間の高さ
10㎝-0.625㎝=9.375㎝
答え 9.375㎝
本問は、三角形の相似を利用して解く問題でした。
上記の解答例ではすき間の体積を求めましたが、
すき間の底面(三角形ADE)の面積:容器の底面(三角形ABC)の面積=(1×1):(4×4)=1:16
から、向きを変えたときのすき間の高さが容器の高さの1/16となることを使って答えを求めることもできます。
解答例のように解けるようでしたら、この比を利用した解き方にもチャレンジしてみてください。
今回は、近年の女子中の入試で出された「水問題」の中から、「棒入れ」と「容器の向きを変える」問題をご紹介しました。
次回は、同じ「水問題」の中からグラフに関する問題を取り扱う予定です。