第585回 女子中の入試問題 立体図形 4
「第585回 女子中の入試問題 立体図形 4」
これまで、2021年度、2022年度の中学入試問題の中から、女子中で出された「立体図形」の問題を見てきています。
今回取り扱うテーマは「立体図形の切断」です。
1問目は、立方体の切断です。
【問題】(2)(3)について、解答用紙に途中の計算や考えた過程をかきなさい。図の立体は1辺6㎝の立方体です。この立方体を点A、点B、点Cを通るような平面で切断しました。
(1)切断面の図形を最もふさわしい名前で答えなさい。
(2)切断されてできた2つの立体のうち、小さい方の立体の体積は何㎤ですか。
(3)切断されてできた2つの立体について、大きい方の立体の表面積と小さい方の立体の表面積の差は何㎠ですか。
(品川女子学院中等部 2022年 問題5)
【考え方】
(1)
「切断の3原則」に従って作図をします。
切断の3原則は次の通りです。
①同じ面にある2点を結ぶ。
②平行に向かい合う面の切り口は平行になる。
③延長する。
はじめに切断の3原則①に従い、AとB、AとCを結びます。
次に切断の3原則②を利用します。
立方体の手前の面と奥の面は平行ですから、手前の面の切り口ACと平行な直線をBから奥の面に引きます。
このとき、正面から見た図(投影図)を先にかくと、切り口(BD)がどのようになるかがわかります。
最後に切断の3原則①に従ってCとDを結ぶと作図は完成です。
切断の3原則②より、向かい合う面の切り口ABとCD、ACとBDはそれぞれ平行ですから、四角形ABCDは平行四辺形です。
さらに、三角形ABPと三角形ACQに着目します。
三角形ABPと三角形ACQは合同な直角三角形ですから、AB=ACです。
従って、四角形ABCDはひし形とわかります。
答え ひし形
(2)
(1)の作図から、切断面より下側の立体が体積の小さい方の立体とわかります。
この立体は、底面が1辺6㎝の正方形、高さ4㎝の直方体を半分に切ったものです。
6㎝×6㎝×4㎝÷2=72㎤
答え 72㎤
(3)
2つの立体の表面積のうち、切断面(水色斜線)の面積と上下の正方形(赤線)の面積はそれぞれ同じですから、表面積の差は側面積の差に等しいことがわかります。
そこで元の立方体の側面の展開図をかきます。
上の図より、2つの立体の表面積の差(展開図の赤線の上側と下側の差)は
2㎝×24㎝=48㎠
と求められます。
答え 48㎠
本問は、重要な「切断の3原則」のうち、「同じ面にある2点を結ぶ」、「平行に向かい合う面の切り口は平行になる」の2つが確認できる問題でした。
では、もう1問見ていきます。
【問題】図のような立方体があります。この立方体を点P、Q、Rを通る平面で切ります。ただし、点P、Q、Rは、立方体の辺をそれぞれ2等分する点です。このとき、切り口の面積は、正三角形ABCの面積の何倍ですか。答えを出すために必要な式、図、考え方なども書きなさい。
(鷗友学園女子中学校 2021年 問題4)
【考え方】
はじめに切断の3原則「同じ面にある2点を結ぶ」に従い、PとQ、PとRを結びます。
切断の3原則の「同じ面にある2点を結ぶ」、「平行に向かい合う面の切り口は平行になる」が利用できませんので、「延長する」を使います。
PQ、PRのどちらを延長しても構いません。
ここではPQを延長してみます。
PQをQ側に延長する場合、元の立方体の右隣に「もう1個立方体をくっつける」と作図がしやすくなります。
上の図で、赤色斜線の三角形は合同ですから、点Sも立方体の辺を2等分する点であることに気をつけます。
次に、元の立方体の上下の面が平行ですから、切断の3原則「平行に向かい合う面の切り口は平行になる」を利用して、Sからの切り口を作図します。
上の図で、赤色斜線の三角形は合同ですから、2点T、Uも立方体の辺を2等分する点です。
さらに、元の立方体の前後の面が平行ですから、切断の3原則「平行に向かい合う面の切り口は平行になる」を利用して、Uからの切り口を作図します。
三角形BUVと三角形CSQは合同ですから、点Vも立方体の辺を2等分する点です。
最後に、切断の3原則「同じ面にある2点を結ぶ」に従ってQとT、AとVを結ぶと、切り口が正六角形になっていることがわかります。
求めるのは「切り口の面積÷正三角形ABCの面積」ですから、正三角形ABCを上の図と並べてみます。
図より、切り口の面積は三角形QTSの6倍、正三角形ABCの面積は三角形QTSの4倍とわかります。
6÷4=1.5(倍)
答え 1.5倍
本問は、重要な「切断の3原則」のうち、「延長する」が確認できる問題でした。
今回は、近年の女子中で出された入試問題の中から「立体図形の切断」をご紹介しました。
立体図形の切断では、切断の3原則と見取り図、投影図を利用すると考えやすくなります。
また、図をかくときには合同や相似を利用し、切り口が通過する位置がどこなのかも大切です。
立体図形の切断を習い終えていれば今回見たような基本レベルの問題を用いて、知識や解法の確認をしてみるとよいと思います。