第583回 女子中の入試問題 立体図形 2
「第583回 女子中の入試問題 立体図形 2」
前回から、近年の女子中の入試で出された「立体図形」の問題について考えています。
今回は「立体図形の求積」について見ていきます。
【問題】たて、横、高さがそれぞれ4㎝、8㎝、12㎝の直方体があります。真上から見たとき図1の斜線の部分となるように、四角柱の形の穴を反対側の面まであけます。次に真横から見たとき図2の斜線の部分となるように、側面に垂直にもとの立体の反対側の面までくりぬき、穴をあけます。すると、できた立体は、図3のようになりました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)できた立体の体積は何㎤ですか。
(2)できた立体の表面積は何㎠ですか。
(淑徳与野中学校 2021年 問題7)
【考え方】
(1)
くり抜いた立体は次のようになります。
影をつけた部分は重なりですから、2つの四角柱の体積の和から引きます。
2㎝×2㎝×(12㎝+8㎝)-2㎝×2㎝×2㎝=72㎤ … くり抜いた立体の体積
4㎝×8㎝×12㎝=384㎤ … 元の直方体の体積
384㎤-72㎤=312㎤
答え 312㎤
(2)
できた立体の外側の面積は、元の直方体の表面積よりも穴の面積の分だけ少なくなっています。
(4㎝×8㎝+8㎝×12㎝+12㎝×4㎝)×2-2㎝×2㎝×4=336㎠ … 外側
できた立体の内側の面積は、下の図の影をつけた部分(穴の面以外)の面積と同じです。
「積み木」と同じように、3方向から見て面積を求めます。
12㎝×8㎝-5㎝×3㎝×4=36㎠ … 真正面から見た面積
(12㎝-2㎝)×2㎝=20㎠ … 真横から見た面積
2㎝×(8㎝-2㎝)=12㎠ … 真上から見た面積
(36㎠+20㎠+12㎠)×2=136㎠ … 内側
336㎠+136㎠=472㎠
答え 472㎠
本問は2方向からのくり抜きですから、3方向からのくり抜きに比べると解きやすい問題です。
くり抜き問題の解き方は、元の立体とくり抜いた立体に分けるところがポイントです。
では、次の問題です。
【問題】下の<図1>のように、高さが10㎝の直方体と、高さが15㎝で底面が直角二等辺三角形の三角柱を組み合わせた立体があります。この立体と底面が合同で体積が同じ立体を作ったところ、<図2>のように高さが12㎝になりました。<図1>のあ○とい○の長さの比を求めなさい。
(横浜雙葉中学校 2021年 問題1-(6))
【考え方】
底面積と体積が同じですから、図1の立体を「均す」と図2の立体になるという意味です。
そこで真正面から見た図を書いて考えます。
赤色斜線の面積:青色斜線の面積=1:1
赤色斜線のたて:青色斜線のたて=(12㎝-10㎝):(15㎝-12㎝)=2:3
↓
赤色斜線の横:青色斜線の横=3:2
わかったことを真上から見た図に書きこみます。
直方体の底面と三角柱の底面は高さが同じ長方形と三角形ですから、面積比=(上底+下底)の比です。
面積比 長方形:三角形=3:2
↓
上底+下底の比 (あ○×2):い○=3:2
あ○:い○=1.5:2=3:4
答え 3:4
本問は具体的な体積を求めることができませんので、比を利用することになります。
このとき、上記のように真正面から見た図を利用すると考えやすくなりますが、水問題のときと同じように、図の「底辺」にあたる部分が「底面積」であることに気をつけます。
最後は、円すいに関する問題です。
【問題】右の図1のような円すいがあります。図2は、図1の円すいを底面に平行な平面で切って高さの等しい3つの立体に分け、上の立体と下の立体を重ねてできた立体です。図2の立体の表面積を求めなさい。
(頌栄女子学院中学校 2021年 問題1-(5))
【考え方】
円すいの側面積=母線の長さ×底面の半径×円周率という円すいの特別な公式と、相似を利用します。
6㎝×3㎝×3.14=18㎠×3.14 … 図1の側面積
3㎝×3㎝×3.14=9㎠×3.14 … 図1の底面積
図2の立体は図1の立体を次のように切断しています。
相似を利用するために、底面の半径が1㎝、2㎝、3㎝の3つの円すいで考えます。
3つの円すいの相似比は1:2:3ですから、底面積や側面積の比は1:4:9です。
18㎠×3.14×(9-4+1)/9=12㎠×3.14 … 図2の立体の側面積
9㎠×3.14×(9+4-1)/9=12㎠×3.14 … 図2の立体の底面積
12㎠×3.14+12㎠×3.14=75.36㎠
答え 75.36㎠
本問は、円すいの特別な公式と相似の利用が確認できる問題でした。
ここでは面積比を用いましたが、それぞれの円すいの母線の長さを求めてから側面積を計算してもOKです。
今回は、近年の女子中の入試で出された立体図形の求積に関する問題をご紹介しました。
どの問題も、立体図形の見取り図や投影図を利用しながら、順番に処理をしていくことがポイントになっています。
基本的な解き方を積み重ねていけば正解できる問題ですので、立体図形を習い終えていたらこれらの問題で解法の定着度をチェックしてみましょう。