第711回 男子中の入試問題 速さ 6
「第711回 男子中の入試問題 速さ 6」
これまで近年に男子中の入試で出された「速さ」の問題を見てきました。
「速さ」の最終回となる今回は、「速さとグラフ」の問題を取り扱います。
1問目は、基本レベルの問題です。
【問題】兄と弟の2人が家と公園の間を自転車で往復しました。兄は時速15㎞、弟は時速9㎞の速さで同時に家を出発しました。下のグラフは2人の間の距離と2人が家を出発してからの時間の関係を表したものです。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)兄は家を出発してから何分後に公園に到着したか答えなさい。
(2)アにあてはまる数を答えなさい。
(3)イにあてはまる数を答えなさい。
(日本大学豊山中学校 2024年 問題5)
【考え方】
(1)
隔たりグラフの問題です。
グラフ問題では、グラフが折れ曲がる点での「出来事」に着目します。
「出来事」は
① 2人が家を出発する
② 兄が公園に着く
③ 2人が出会う
④ 兄が家に戻る、または、弟が公園に着く
⑤ 弟が家に戻る
の順に起こります。
よって、兄が公園に着いたとき、弟はその3.6㎞後ろにいるとわかります。
3.6㎞÷(15㎞/時-9㎞/時)×60=36分
答え 36分後
(2)
(1)より、兄が36分後に公園に着いたことが分かりましたから、家と公園の間の距離は
15㎞/時×36/60時間=9㎞
です。
36分×2=72分 … 兄が往復にかかる時間
9㎞÷時速9㎞×60=60分 … 弟が家から公園までにかかる時間
ですから、2人の様子を進行グラフに書き直すと、次のようになります。
「弟が公園に着く」が「兄が家に戻る」よりも先の「出来事」ですから、ア=60(分)です。
答え 60
(3)
(2)より、イは兄が家に戻ったときの2人の間の距離とわかります。
9㎞/時×72/60時間=10.8㎞ … 72分間に弟が進む距離
ですから、兄が家に戻ったとき、弟は公園から
10.8㎞-9㎞=1.8㎞
のところにいます。
9㎞-1.8㎞=7.2㎞
答え 7.2
本問は、「グラフは折れ曲がる点に着目する」というグラフの読み取りの基本を確認できる問題です。
(2)のように、ある程度のことが分かってきたら、進行グラフ(ダイヤグラム)や線分図に整理し直すと、考えやすくなります。
また、(2)の解説では、「兄が家に戻る」と「弟が公園に着く」の2つの出来事もうちのどちらが先になるか、所要時間を求めて考えましたが、次のように、速さの比が15㎞/時:9㎞/時=5:3であることから考えることもできます。
2問目は1問目よりもやや複雑ですが、考え方は基本通りです。
【問題】バスの停留所Pから駅までは2400mあります。この2400mを三等分する地点に2つの停留所があります。バスは停留所でそれぞれ1分間停車します。AさんとBさんは停留所Pに集合し、Aさんは自転車で、Bさんはバスで駅に向かいます。Aさんが出発して3分後にバスはBさんを乗せて停留所Pを出発しました。Aさんの自転車は一定の速さで駅まで向かい、バスも停留所に停車する以外は一定の速さで走ります。しかし、駅の近くで渋滞し、バスだけ速さが遅くなったため、2人は同時に駅に着きました。下のグラフは、Aさんが停留所Pを出発してから駅に着くまでの時間とBさんとの距離の差の関係を表したものです。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)Aさんは毎分何mの速さで自転車に乗っていましたか。
(2)渋滞時のバスの速さは毎分何mですか。
(3)グラフのxの値はいくつですか。
(本郷中学校 2024年 問題3)
【考え方】
(1)
停留所P以降の停留所をQ、Sとして、グラフが折れ曲がる点での出来事を書き込みます。
バスが停留所Qに到着してから停車している1分間で、Aさんはバスとの間の距離を
200m-80m=120m
小さくしています。(グラフ中の赤色部分)
120m÷1分=120m/分
答え 毎分120m
(2)
2400m÷120m/分=20分 … Aさんが停留所Pから駅までにかかる時間
また、Aさんが停留所Pを出発してから10分後に、バスは停留所Pから
120m/分×10分+800m=2000m
の地点を走っていますから、渋滞中のバスは
20分-10分=10分
で
2400m-2000m=400m
を走行したことになります。
400m÷10分=40m/分
答え 毎分40m
(3)
バスが停留所Rに到着するのは、Aさんが停留所Pを出発してから
9分-1分=8分後
です。
ですから、バスが停留所Pから停留所Rまでを走行した時間は
8分-(3分+1分)=4分
です。
4分÷2=2分 … 停留所間の走行時間
800m÷2分=400m/分 … バスの速さ
バスが停留所Pを出発するとき、Aさんは
120m/分×3分=360m
前方にいます。
360m÷(400m/分-120m/分)=9/7分=1 2/7分 … バスが停留所Pを出発してからAさんに追いつくまでの時間
3分+1 2/7分=4 2/7分
答え 4 2/7(30/7)
本問も、隔たりグラフの読み取りを確認できる問題です。
前問よりも条件が複雑ですが、ある程度のことが分かってきたところで線分図や進行グラフ(ダイヤグラム)に整理し直すと、方針が立てやすいでしょう。
今回は、速さの最終回として、2024年度に男子中の入試で出された「速さとグラフ」の問題をご紹介しました。
隔たりグラフの問題はグラフ問題の中では難しい部類に属します。
ですから、この問題が苦手だと思われるときは、進行グラフ(ダイヤグラム)の問題で基本の読み取りを確認し、その後、隔たりグラフが折れ曲がる点での「出来事」の読み取りと整理の練習に取り組んでみるとよいと思います。