第709回 男子中の入試問題 速さ 4
「第709回 男子中の入試問題 速さ 4」
近年に男子中の入試で出された「速さ」の問題について考えています。
前回は「坂道の問題」と「規則性のある旅人算」を見ました。
今回は「流水算」を取り扱います。
1問目は、基本レベルの問題です。
【問題】川の上流にあるA町と下流にあるB町を行き来する船があります。いつもは、A町からB町へ行くのに30分、B町からA町に行くのに50分かかります。ある日、川の流れの速さがいつもの2倍になりました。この日、A町からB町まで行くのに何分かかりますか。ただし、A町からB町へ行くときもB町からA町に行くときも、船自体の速さはそれぞれ一定であるものとします。
(サレジオ学院中学校 2024年 問題2-(1) 問題文一部変更)
【考え方】
流水算では、はじめに状況図をかき、必要であれば線分図やグラフをかくという手順が基本の解き方です。
状況図から、
① 下りと上りとの道のりが同じなので、時間の比と速さの比は逆比の関係
② AB間の道のり(距離)を1または時間の最小公倍数に仮定
の2つの解き方が利用できるとわかります。
ここでは、AB間の道のりを時間(30分、50分)の最小公倍数の150□と仮定する解き方を選ぶことにします。
150□÷30分=5□/分 … いつもの下りの速さ
150□÷50分=3□/分 … いつもの上りの速さ
速さの関係を線分図に整理します。
(5□/分-3□/分)÷2=1□/分 … 流速
3□/分+1□/分=4□/分 … 静水時の速さ
ある日の流速は
1□/分×2=2□/分
ですから、A町からB町まで下るときの速さは
4□/分+2□/分=6□/分
です。
150□÷6□/分=25分
答え 25分
本問は、流水算の基本が確認できる問題です。
もし、速さを求められないようでしたら、解答例のような線分図をかいてみましょう。
2問目は、2つの船に関する問題です。
【問題】ある川の下流の地点Aと上流の地点Bを、速さの異なる船Xと船Yが往復します。船XがAからBまで上るのにかかる時間は、BからAまで下るのにかかる時間の1.6倍です。また、船XがBからAまで下るのにかかる時間と船YがAからBまで上るのにかかる時間は同じ80分です。ただし、川の流れの速さ、船Xの静水時の速さ、船Yの静水時の速さはそれぞれ一定とします。次の問いに答えなさい。
(1)船Xの静水時の速さと川の流れの速さの比を、最も簡単な整数の比で求めなさい。
(2)船XがAからBまで上るのにかかる時間は何分ですか。
(3)船YがAとBを往復するのにかかる時間は何分ですか。
(巣鴨中学校 2024年 問題2)
【考え方】
(1)
はじめに、状況図をかきます。
状況図から、船Xについて、「比の利用」、「道のりを仮定」のどちらもが可能であるとわかります。
今回は「比の利用」を用いてみます。
速さの関係を線分図に整理します。
(8-5)÷2=1.5 … 流速
5+1.5=6.5 … 静水時の速さ
(静水時の速さ):(川の流れの速さ)=6.5:1.5=13:3
答え 13:3
(2)
船XがAからBまで上る時間を□分とします。
□分:80分=8:5 → □=80分×8÷5=128分
答え 128分
(3)
(1)の結果を利用します。
船Xの静水時の速さを13□/分、流速を3□/分とすると、船Xの下りの速さは
13□/分+3□/分=16□/分
です。
「船XがBからAまで下るのにかかる時間と船YがAからBまで上るのにかかる時間は同じ」という条件より、船Yの上りの速さは船Xの下りの速さと同じ16□/分です。
16□/分+3□/分=19□/分 … 船Yの静水時の速さ
19□/分+3□/分=22□/分 … 船Yの下りの速さ
16□/分×80分=1280□ … AB間の道のり
1280□÷22□/分=640/11分=58 2/11分 … 船Yが下りにかかる時間
80分+58 2/11分=138 2/11分
答え 138 2/11分
本問も、流水算の基本が確認できる問題です。
もし、流水算が苦手であれば、状況図をかくことと、「比の利用と、「道のりを仮定」の2通りの解き方のどちらか一方がマスターすることから始めましょう。
最後は、流水算のグラフ問題です。
【問題】流れの速さが時速6㎞の川の上流にC地点、下流にA地点があり、A地点とC地点の真ん中にB地点があります。船はA地点からC地点まで行き、その後C地点とB地点でそれぞれ10分間停船してA地点に戻ります。船の静水時の速さは一定です。下のグラフは、船がA地点を出発してからA地点に戻ってくるまでの時間と、A地点からの距離の関係を表したものです。
(1)船がA地点を出発してからC地点に到着するまでにかかる時間は何分ですか。
(2)船の静水時の速さは時速何㎞ですか。
(3)A地点からC地点までの距離は何㎞ですか。
(4)船がA地点からC地点へ向かっている途中で船から浮き輪を流したところ、船と浮き輪が同時にB地点に着きました。浮き輪を流したのは船がA地点を出発してから何分何秒後ですか。
(成城中学校 2024年 問題6)
【考え方】
(1)
船がB地点を出発するのは
105分後+10分=115分後
です。
140分後-115分後=25分 … 船がB地点からA地点までにかかる時間
B地点はA地点とC地点の真ん中にあるので、C地点からB地点までにかかる時間も25分です。
105分後-25分=80分後 … 船がC地点を出発する時刻
80分-10分=70分
答え 70分
(2)
(1)のグラフより、船がB地点で停船しなければ、C地点からA地点まで下るのにかかる時間は
25分+25分=50分
とわかります。
比を利用します。
上りの速さを⑤/時として、速さの関係を線分図に整理します。
⑤㎞/時+6㎞/時+6㎞/時=⑦㎞/時 → ①㎞/時=12㎞/時÷2=6㎞/時
6㎞/時×5=30㎞/時 … 上りの速さ
30㎞/時+6㎞/時=36㎞/時
答え 時速36㎞
(3)
30㎞/時×70/60時間=35㎞
答え 35㎞
(4)
浮き輪は川の流れによって流されますので、BC間の途中で流され始めてB地点に着いたことになります。
35㎞÷2=17.5㎞ … BC間の距離
36㎞/時+6㎞/時=42㎞/時 … 下りの速さ
船と浮き輪の様子を線分図に整理します。
6㎞/時×(105分後-70分後)/60分=3.5㎞ … 浮き輪が70分後から105分後までに流された距離
ですから、船の●→○の距離と浮き輪の●→○の距離の和は
17.5㎞-3.5㎞=14㎞
です。
14㎞÷(30㎞/時+6㎞/時)×60=70/3分=23 1/3分=23分20秒 … ●→○の時間
70分後-23分20秒=46分40秒後
答え 46分40秒後
本問は、流水算の条件をグラフから読み取る基本レベルの問題です。
(4)は一見すると難しそうに思われますが、(3)までにわかったことを線分図に整理すると方針が立てやすい問題です。
なお、解答例では線分図に書き直しましたが、浮き輪の動きをグラフの中にかき込んでもよいでしょう。
今回は、2024年度に男子中の入試で出された「流水算」の問題をご紹介しました。
いずれの問題も、「道のり(距離)を仮定」や「比の利用」が利用できること、上り・下り・静水時・川の流れの速さの関係の理解度などが確認できる基本問題です。
既習範囲であれば、これらの問題で定着度をチェックしてみましょう。