第708回 男子中の入試問題 速さ 3
「第708回 男子中の入試問題 速さ 3」
近年の男子中の入試で出された「速さ」の問題について考えています。
前回は「池タイプの旅人算」を見ました。
今回は「坂道の問題」、「規則性のある旅人算」を取り扱います。
1問目は坂道の基本問題です。
【問題】図のようにA地点からC地点までは上りで、C地点からB地点までは下りになっています。A地点からB地点に行くのに5時間30分、B地点からA地点に行くのに5時間45分かかります。このとき、BC間の距離は何㎞ですか。ただし、上るときは時速4㎞、下るときは時速6㎞の速さで進むものとします。
(本郷中学校 2024年 問題2-(5))
【考え方】
坂道の問題には、差集め算または消去算を利用する、2つの基本の解き方があります。
ここでは、差集め算を利用して解いてみます。
上の図のように、AC=DCとなるD地点を作ります。
AC=DCですから、
(A→Cにかかる時間)=(D→Cにかかる時間)
(C→Dにかかる時間)=(C→Aにかかる時間)
なので、
5時間45分-5時間30分=15分
は、DB間を上ったり下ったりする時間の差です。
1㎞を6㎞/時で進むときにかかる時間は
1㎞÷6㎞/時×60=10分、
1㎞を4㎞/時で進むときにかかる時間は
1㎞÷4㎞/時×60=15分
なので、1㎞を上ったり下ったりする時間の差は
15分-10分=5分です。
1㎞の上りと下りで5分の差、DB間の上りと下りで15分の差ですから、DB間の距離は
1㎞×(15分/5分)=3㎞
です。
3㎞÷6㎞/時=1/2時間=30分 … D→Bにかかる時間
5時間30分-30分=5時間 … A→C→Dにかかる時間
A→Cにかかる時間とC→Dにかかる時間の関係は、次の通りです。
5時間×2/(3+2)=2時間 … C→Dにかかる時間
6㎞/時×2時間+3㎞=15㎞
答え 15㎞
本問は、坂道の問題の基本が確認できる問題です。
なお、
③時間+2□時間=5.5時間
と
②時間+3□時間=5.75時間
のような式を作って、消去算を用いてもOKです。
2問目は、坂道以外に平地部分もありますが、1問目とほぼ同じレベルの問題です。
【問題】AさんとBさんは宿舎を同時に出発して球場に向かいます。宿舎から球場までは上り坂と下り坂と平地があり、平地の道のりは1.8㎞です。平地ではAさんは毎時3.6㎞、Bさんは毎時5.4㎞で進みます。上り坂ではBさんがAさんの4/3倍、下り坂ではAさんがBさんの1.2倍の速さで進みます。Bさんが上り坂と下り坂を進むのにかかった時間は合わせて27分で、Bさんの方がAさんよりも13分早く球場に着きました。次の問いに答えなさい。
(1)平地にかかった時間の差は何分か求めなさい。
(2)Aさんが上り坂にかかった時間および下り坂にかかった時間をそれぞれ求めなさい。
(暁星中学校 2024年 問題3)
【考え方】
(1)
1.8㎞÷3.6㎞/時×60=30分 … Aさんが平地にかかる時間
1.8㎞÷5.4㎞/時×60=20分 … Bさんが平地にかかる時間
30分-20分=10分
答え 10分
(2)
特に指定されていませんので、宿舎から球場まで平地、上り坂、下り坂の順にあるものとして、条件を整理します。
上りの速さの比 Aさん:Bさん=1:4/3=3:4
下りの速さの比 Aさん:Bさん=1.2:1=6:5
20分+27分=47分 … Bさんが宿舎から球場までにかかった時間
47分+13分=60分 … Aさんが宿舎から球場までにかかった時間
60分-30分=30分 … Aさんが上り坂と下り坂にかかった時間の和
坂道の部分について、この問題では消去算を利用してみます。
同じ距離にかかる時間の比は、速さの比の逆比ですから、上り坂にかかる時間の比は Aさん:Bさん=4:3、下り坂にかかる時間の比は Aさん:Bさん=5:6 です。
④分+5□分=30分 …(ア)
③分+6□分=27分 …(イ)
□を30でそろえます。
①=45分÷9=5分
5分×4=20分 … Aさんが上り坂にかかる時間
30分-20分=10分 … Aさんが下り坂にかかる時間
答え 上り坂 20分、下り坂 10分
本問も、坂道の問題の基本が確認できる問題です。
解答例では消去算を利用しましたが、1問目と同じように、差集め算を利用して解くこともできます。
もし、坂道の問題が苦手なようでしたら、まずは、差集め算を利用する解き方と消去算を利用する解き方のどちらか一方の解き方をマスターすることから始めましょう。
最後は、規則性のある旅人算です。
【問題】点Aと点Bを結ぶ長さが12㎝のまっすぐな線上を動く2点PとQがあり、点Pは毎秒1㎝、点Qは毎秒3㎝の速さで常に動くものとします。まず、点P、点Qはともに点Aを出発し、点Bに向かって進みます。その後、点Qは点Bに到着すると、向きを変えて点Aに向かって進みます。次に、点Qは点Pと出会うと、また向きを変えて点Bに向かって進みます。点Pが点Bに到着するまで、点Qはこの動きを繰り返します。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)2点P、Qが点Aを出発したのちに、初めて出会うのは点Pが点Aを出発してから何秒後ですか。
(2)2点P、Qが点Aを出発したのちに、2回目に出会うのは点Pが点Aを出発してから何秒後ですか。
(3)2点P、Qが点Aを出発したのち、11.6秒後までに2点P、Qが出会う回数は何回ですか。
(4)(3)において2点P、Qが最後に出会うときまでに点Qが進んだ道のりの合計は何㎝ですか。
(浅野中学校 2024年 問題3)
【考え方】
(1)
条件を線分図に整理します。
点Pと点Qが点Aを出発してから出会うまでに進んだ道のりの和は
12㎝×2=24㎝
です。
24㎝÷(1㎝/秒+3㎝/秒)=6秒後
答え 6秒後
(2)
条件を線分図に整理します。
点Pと点Qが1回目に出会ってから2回目に出会うまでに進んだ道のりの和は
6㎝×2=12㎝
です。
12㎝÷(1㎝/秒+3㎝/秒)=3秒後
6秒後+3秒後=9秒後
答え 9秒後
(3)
(1)、(2)の線分図から、2点P、Qが点Aを出発してから1回目に出会うまでに2人が進む道のりの和が
12㎝×2=24㎝
1回目に出会ってから2回目に出会うまでに2人が進む道のりの和が
6㎝×2=12㎝
のように、次に出会うまでに2人が進む道のりの和がその前の半分になることがわかります。
この規則性を利用すると、次のような表に整理できます。
ですから、2点P、Qが点Aを出発してから11.6秒後までに出会う回数は4回とわかります。
答え 4回
(4)
点Qは休まずに11.25秒間動き続けます。
3㎝/秒×11.25秒=33.75㎝
答え 33.75㎝
本問は、規則性を利用した解き方が確認できる問題です。
(3)も(1)、(2)と同様に線分図をかいても構いませんが、解答例のように規則性を利用すると解きやすくなります。
また、条件をダイヤグラムに整理し、グラフの中にある相似形に着目する解き方もあります。
今回は、2024年度に男子中の入試で出された「坂道の問題」と「規則性のある旅人算」をご紹介しました。
坂道の基本問題は初見では難しいと思いますが、差集め算または消去算の一方を利用した解き方をマスターすると、解ける問題を増やすことができます。
既習範囲であれば、今回の1問目や2問目で考え方の定着度を確認してみましょう。
3問目の(3)は、ていねいに線分図をかくと正解できますが、規則性を使って解ける問題もあるということも覚えておけるといいですね。