第706回 男子中の入試問題 速さ 1
「第706回 男子中の入試問題 速さ 1」
前回まで、2024年度の男子中の入試で出された「比と割合」について考えてきました。
今回からは「速さ」がテーマの問題を取り扱います。
その1回目の今回は「速さと比」がテーマの問題を見ていきます。
1問目は基本レベルの問題です。
【問題】A地点からB地点まで時速4.2㎞で歩く予定でしたが、時速4.8㎞で歩いたので予定より15分早く着きました。A地点からB地点までの道のりは何㎞ですか。
(攻玉社中学校 2024年 問題2-(1) 問題文一部変更)
【考え方】
速さの問題は、条件を線分図やダイヤグラムに整理し、速さの3公式(速さ×時間=道のり など)が使えるか、「速さと比」の関係が使えるかの順に考えることが基本の解き方です。
整理をすると、「同じ道のりにかかる時間の比」がわかれば、時間の差の15分からAB間にかかる時間が求められとわかります。(比を未習の場合は差集め算の考え方を利用して解きますが、ここでは割愛します。)
⑧-⑦=15分 → ①=15分=1/4時間
⑧=1/4時間×8=2時間 … 予定の時間
※ 15分×8/(8-7)=120分としてもOKです。
4.2㎞/時×2時間=8.4㎞
答え 8.4㎞
本問は、速さと比の基本が確認できる問題です。
なお、解答例の他に、「道のりが同じとき、速さの比と時間の比は逆比の関係になる」ことを利用する解き方や、「道のりを1または速さの最小公倍数に仮定する」、「道のりを□㎞とする」として解く方法もあります。
2問目は、比で解く3人の旅人算です。
【問題】まっすぐに伸びた道をA君、B君、C君の3人が、それぞれ一定の速さでP地点から同じ方向へ進みます。最初にA君が歩き始め、その10分後にB君が走り始め、さらにその20分後にC君が自転車で出発しました。A君は歩き始めてから24分後にB君に追いつかれ、さらにその16分後にC君に追いつかれました。B君は、A君が歩き始めてから何分後にC君に追いつかれましたか。
(東京都市大学付属中学校 2024年 問題1-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
3人のダイヤグラムは読み取りが難しくなりやすいので、ここでは線分図で条件を整理します。
ここでは、「道のりが同じとき、時間の比と速さの比は逆比の関係」を利用してみます。
A君が24分で進む道のり(●→□)を、B君は
24分後-10分後=14分
で進みます。
時間の比 A君:B君=24分:14分=12:7
↓
速さの比 A君:B君=7:12
A君が40分で進む道のり(●→▲)を、C君は
40分後-30分後=10分
で進みます。
時間の比 A君:C君=40分:10分=4:1
↓
速さの比 A君:C君=1:4
3人の速さを整理します。
よって、B君とC君の速さの比は3:7です。
B君がC君に追いつかれる様子を、線分図に整理します。(1問目と同じように、ダイヤグラムに整理することもできます。)
「道のりが同じとき、速さの比と時間の比は逆比」ですから、P地点から追いつかれる地点までにかかる時間の比は7:3で、この差の4が出発時刻の差の20分にあたります。
20分×7/(7-3)=35分 … B君
10分後+35分=45分後
答え 45分後
本問も、前問と同様に「速さと比」の基本が確認できる問題です。
なお、解答例では速さの比を求めて解きましたが、時間の比だけを利用して解くこともできます。
最後は、大問形式の問題です。
【問題】駅と図書館の間の一本道を、Aさんは徒歩で、Bさんは自動車でそれぞれ一定の速さで移動します。Aさんは駅を10時に出発し、図書館に12時に到着しました。Bさんは図書館を10時20分に出発し、駅に到着後すぐにCさんを自動車に乗せて図書館に向かいました。BさんとCさんは図書館に11時に到着する予定でしたが、Aさんに追いついた時、Cさんが忘れ物に気づいたため、すぐに折り返しました。そして駅に到着後すぐに図書館に向かいました。このとき、次の問いに答えなさい。ただし、Aさん、Bさん、Cさんが止まっている時間は考えないものとします。
(1)BさんとCさんが図書館に到着した時刻は何時何分ですか。
(2)Aさんが駅を出発してからCさんが忘れ物に気づくまでに、Aさんがあるいた距離と、Bさんが自動車に乗って移動した距離と、Cさんが自動車に乗って移動した距離を合計すると19.8㎞でした。駅から図書館までの距離は何㎞ですか。
(明治大学付属中野中学校 2024年 問題5)
【考え方】
(1)
12時-10時=2時間 … Aさんが駅から図書館までにかかる時間
11時-10時20分=40分 … Bさんが図書館と駅の間を往復する予定の時間
40分÷2=20分 … Bさんが図書館から駅まで移動する時間
よって、AさんとBさんが同じ道のりを移動する時間の比は
2時間:20分=6:1
です。
従って、駅からCさんが忘れ物に気づく地点までにかかる時間の比も6:1です。
40分×1/(6-1)=8分 … Bさんが駅を出発してからAさんに追いつくまでの時間
わかったことを、線分図に整理します。
10時20分+20分+8分+8分+20分=11時16分 … BさんとCさんが図書館に到着する時刻
答え 11時16分
(2)AさんとBさんが同じ道のりを移動する時間の比が6:1ですから、速さの比は1:6です。
Aさんの分速を1□㎞、Bさん、Cさんの分速を6□㎞とします。
1□㎞/分×48分=48□㎞ … Aさんが48分間に進む道のり
6□㎞/分×(48-20)分=168□㎞ … Bさんが28分間に進む道のり
6□㎞/分×8分=48□㎞ … Cさんが8分間に進む道のり
48□㎞+168□㎞+48□㎞=19.8㎞
1□㎞=19.8㎞÷(48+168+48)=0.075㎞
0.075㎞×(168-48)=9㎞
答え 9㎞
本問は、「道のりが同じとき、時間の比と速さの比は逆比」の関係と「比を使った速さの3公式」について確認できる問題です。
なお、(2)は次のように整理して解くこともできます。
19.8㎞×(7-2)/(2+7+2)=9㎞
今回は、2024年度に男子中の入試で出された「速さと比」の問題をご紹介しました。
このような問題が苦手な場合は、はじめに比を用いない問題で「速さの3公式」の使い方を確認し、次に「道のりが同じとき」、「時間が同じとき」、「速さが同じとき」の3パターンで「比の関係」を復習します。
その後、今回のような問題で線分図やダイヤグラムなどの整理方法と使い方を練習するのように、少しずつレベルアップしながら復習をしてみましょう。