第704回 男子中の入試問題 比と割合 4
「第704回 男子中の入試問題 比と割合 4」
ここまで、2024年度に男子中の入試で出された「比と割合」の問題について考えています。
4回目の今回は「売買算」と「仕事算」を取り扱っていきます。
1問目は「売買算」です。
【問題】ある商品を800円で100個仕入れ、2割の利益を見込んで定価をつけて売りました。ところが、いくつか売れ残ってしまったので、定価の3割引きで売ったところ、すべての商品を売り切ることができ、3616円の利益が出ました。定価の3割引きで売った商品の個数はいくつですか。
(巣鴨中学校 2024年 問題1-(4))
【考え方】
「(原価に)2割の利益を見込む」は、原価(仕入れ値)の
1+0.2=1.2(倍)
にするという意味です。
800円×1.2=960円 … 定価
また、「定価の3割引き」は、定価の
1-0.3=0.7(倍)
にするという意味です。
960円×0.7=672円 … 3割引きしたときの売価
条件を表に整理します。
「売り上げ-仕入れ=利益」ですから、売り上げは
800円×100個+3616円=83616円
です。
ここからは、つるかめ算です。
(960円×100個-83616円)÷(960円-672円)=43個
答え 43個
本問は、「多数売りの売買算は表に整理できる」という知識が確認できる問題です。
表に整理することで、つるかめ算に気づきやすくなります。
なお、定価で売ると1個あたり160円の利益があり、3割引きで売ると1個あたり128円の損失となることから、「弁償算」として解くこともできます。
(160円×100個-3616円)÷(160円+128円)=43個
2問目からは「仕事算」の問題です。
【問題】6人ですると40日かかる仕事があります。この仕事を□人ですると30日かかります。□に当てはまる数を入れなさい。
(学習院中等科 2024年 問題2-(1) 問題文一部変更)
【考え方】
太郎さんや花子さんのような人名が出てこない、「名前のない仕事算」です。
「名前のない仕事算」は、単位時間(例:1日)あたりの1人の仕事量を仮定することが基本の解き方です。
そこで、1人が1日にする仕事量を1とします。
1×6人×40日=240 … 全体の仕事量
1×□人×30日=240 → □日=240÷30日=8人
答え 8人
本問は、「名前のない仕事算」の基本が確認できる問題です。
3問目も基本レベルの問題です。
【問題】A君が1人で働くとちょうど10日、A君とB君の2人で働くとちょうど6日で終わる仕事があります。B君がこの仕事を1人でするとき、仕事を始めてから終わるまでにちょうど何日かかりますか。
(高輪中学校 2024年 問題2-(3))
【考え方】
A君やB君のように「名前のある仕事算」は、全体の仕事量を1または時間(例:日数)の最小公倍数に仮定することが基本の解き方です。
ここでは、全体の仕事量を日数(10日と6日)の最小公倍数の30と仮定することにします。
30÷10日=3 … A君が1日にする仕事量
30÷6日=5 … A君とB君の2人で1日にする仕事量
5-3=2 … B君が1日にする仕事量
30÷2=15日
答え 15日
本問は、「名前のある仕事算」の基本の考え方が確認できる問題です。
では、4問目です。
【問題】ある仕事をするのに、A君は3日間で全体の1/4の仕事ができ、B君は4日間で全体の1/6の仕事ができます。この仕事をA君とB君の2人で行うと何日間でできますか。
(佼成学園中学校 2024年 問題2-(3) 問題文一部変更)
【考え方】
「名前のある仕事算」で全体の仕事量を日数や時間の最小公倍数に仮定するときは、同じ仕事量(例:全体の仕事量)をする日数や時間で考えることが必要です。
3日間÷1/4=12日間 … A君が全体の仕事量をするのにかかる日数
4日間÷1/6=24日間 … B君が全体の仕事量をするのにかかる日数
全体の仕事量を12日間と24日間の最小公倍数の24に仮定します。
24÷12日間=2 … A君が1日間にする仕事量
24÷24日間=1 … B君が1日間にする仕事量
24÷(2+1)=8日間
答え 8日間
本問は、全体の仕事量を最小公倍数に仮定するときのポイントが確認できる問題です。
なお、全体の仕事量を1に仮定すると、次のような解き方になります。
1/4÷3日間=1/12 … A君が1日間にする仕事量
1/6÷4日間=1/24 … B君が1日間にする仕事量
1÷(1/12+1/24)=8日間
今回の最後の問題です。
【問題】ある仕事をするとBさんはAさんの1.5倍、CさんはAさんの2倍の時間がかかります。3人いっしょにこの仕事をすると6時間かかります。Aさん1人だけでこの仕事をすると何時間かかりますか。
(本郷中学校 2024年 問題2-(1))
【考え方】
はじめに、仕事にかかる時間の割合を整理しておきます。
「1時間にする仕事量×仕事をする時間=仕事量」ですから、仕事量が同じとき、1時間にする仕事量と仕事をする時間は逆比の関係です。
時間の比 2:3:4
↓
1時間にする仕事量の比 1/2:1/3:1/4=6:4:3
「名前のある仕事算」ですが1時間にする仕事量の比がわかりましたので、これを利用して解き進めます。
Aさんが1時間にする仕事量を6とすると、Bさんは4、Cさんは3となりますから、3人がいっしょに1時間でする仕事量は
6+4+3=13
です。
13×6時間=78 … 全体の仕事量
78÷6=13時間
答え 13時間
本問は、単位時間あたりの仕事量(例:1時間にする仕事量)がわかるときの考え方が確認できる問題です。
なお、時間の比が2:3:4とわかることから、全体の仕事量を時間の最小公倍数の12として解くこともできます。
今回は、2024年度に男子中で出された「売買算」と「仕事算」をご紹介しました。
4問目までは定番問題、最後は練習する機会があまりないタイプの問題でしたが、いずれも考え方の基本が定着できれば正解できるものです。
また、1問目のように問題を解く過程でつるかめ算や消去算のような文章題の解法が必要になることもあります。
もし、間違えた原因が文章題の解法にあれば、ここまでに学んだ文章題についても復習をしましょう。