第702回 男子中の入試問題 比と割合 2
「第702回 男子中の入試問題 比と割合 2」
前回から、2024年度に男子中の入試で出された「比と割合」を取り扱っています。
2回目の今回は「相当算」、「倍数算」、「年令算」の問題を見ていきます。
1問目は「相当算」です。
【問題】兄と弟で700円のお守りをおそろいで買うことにしました。しかし、弟の所持金が足りなかったため、兄が弟に300円をわたしたところ、2人ともお守りを買うことができました。そして、買った後の兄と弟の所持金の比は5:2になりました。2人の最初の所持金の合計が2100円のとき、兄の最初の所持金を求めなさい。
(明治大学付属中野中学校 2024年 問題2-(1))
【考え方】
条件を線分図に整理します。
兄から弟に300円を渡しても2人の所持金の合計は変化しませんから、お守りを買った後の残金の合計は
2100円-700円×2=700円
です。
このときの兄の残金を⑤円、弟の残金を②円とします。
⑤円+②円=700円
①円=700円÷(5+2)=100円
よって、兄の残金は
⑤円=100円×5=500円
とわかりますから、最初の所持金は
500円+700円+300円=1500円
です。
答え 1500円
本問は、「やりとり」と「相当算」の考え方が確認できる問題です。
なお、解答例では①解法によって兄の残金を求めましたが、兄の残金を
700円×5/(5+2)=500円
のように比例配分を用いてもOKです。
2問目は「倍数変化算」です。
【問題】A君とB君のはじめに持っていた金額の比は5:2でした。A君は1500円、B君は240円使ったので、A君とB君の残った金額の比は7:4になりました。A君がはじめに持っていた金額は何円ですか。ただし、消費税は考えないものとします。
(東京都市大学付属中学校 2024年 問題1-(3) 問題文一部変更)
【考え方】
はじめの比が5:2、使った金額の比が1500:240=50:8、残金の比が7:4のように、3つの比がすべて異なる倍数変化算です。
倍数変化算は線分図や比例式を利用して解くことができます。
ここでは比例式を用いることにします。
A君がはじめに持っていた金額を求めますから、A君がはじめに持っていた金額を⑤円、B君がはじめに持っていた金額を②円とします。
(⑤-1500)円:(②-240円)=7:4
内項の積と外項の積は等しいので
(②-240)円×7=(⑤-1500)円×4
です。
分配のきまりを使って計算をします。
②円×7-240円×7=⑤円×4-1500円×4
⑭円-1680円=⑳円-6000円
①=(6000円-1680円)÷(20-14)=720円
⑤=720円×5=3600円
答え 3600円
本問は倍数変化算の基本が確認できる問題です。
①の値を間違えるようでしたら、下のような線分図をかいて考えましょう。
3問目は「年令算」です。
※ 問題文の「齢」と「歳」の表記は原文通りとし、解説と解答では「令」と「才」で表記しています。
【問題】今、私は15歳で母は51歳です。母の年齢が私の年齢の5倍だったのは今から何年前ですか。
(学習院中等科 2024年 問題2-(3) 問題文一部変更)
【考え方】
私と母の年令の差は常に同じですから、5倍であったときも年令の差は
51才-15才=36才
です。
このことを線分図に整理します。
36才÷(5-1)=9才 … 1にあたる年令
母の年令が私の年令の5倍だったのは私が9才のときですから、今から
15才-9才=6年前
のことです。
答え 6年前
本問は、2人の年令の差は変わらないという年令算の基本が確認できる問題です。
解答例では線分図に整理しましたが、次のような表を利用してもOKです。
では、今回の最後の問題です。
【問題】両親と息子2人がいます。現在、父と長男の年齢の和は44です。20年後に父の年齢は長男の年齢の2倍となります。次の問いに答えなさい。
(1) 現在の父と長男の年齢を求めなさい。
(2) 現在、母と次男の年齢の比は8:1です。[あ]年後、父と長男の年齢の和と母と次男の年齢の和の比が7:6となり、次男が10才になります。[あ]にあてはまる数を答えなさい。
(暁星中学校 2024年 問題2 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
条件を表に整理します。
父の年令も長男の年令も20年後には現在よりも20才増えますから、年令の和は
20才×2=40才
増えます。
★=44才+40才=84才
84才×2/(2+1)=56才 … 20年後の父の年令
56才-20才=36才 … 現在の父の年令
44才-36才=8才 … 現在の長男の年令
答え 父 36才、長男 8才
(2)条件を表に整理します。
父と長男、母と次男はどちらも2人ずつなので「年令の和」の差は常に同じで、[あ]年後の様子を比で表したときの父と長男の年令の和が「7」、母と次男の年令の和が「6」で父と長男の年令の和の方が母と次男の年令の和よりも大きいですから、現在も父と長男の年令の和の方が母と次男の年令の和よりも大きいです。
現在、母の年令と次男の年令と2人の年令の和の比が8:1:9ですから、母と次男の年令の和は44より小さい9の倍数です。
母と次男の年令の和が44才に近い9の倍数の36才のときについて調べてみます。
36才×8/9=32才 … 現在の母の年令
36才-32才=4才 … 現在の次男の年令
10才-4才=6年後
上の表のように、「母と次男の年令の和が36才」は「父と長男の年齢の和と母と次男の年齢の和の比が7:6」という条件を満たしますから、あ=6 です。
答え 6
本問の(1)は「20年後に2人の年令の和が40増える」こと、(2)は年令が整数であることがポイントです。
なお、(2)は計算がやや複雑になりますが、消去算を用いて解くことも可能です。
今回は、2024年度に男子中の入試で出された「相当算」、「倍数算」、「年令算」の問題をご紹介しました。
もし、正解できない問題があれば、線分図や表などを用いた条件整理ができるか、①解法や比例式、比例配分、分配のきまりなどを正確に利用できるかを確認し、課題を克服していきましょう。