第692回 共学中の入試問題 場合の数 2
「第692回 共学中の入試問題 場合の数 2」
近年の共学中の入試で出された「場合の数」について考えています。
前回は「場合の数」の基本レベルの問題を取り扱いました。
今回は、「場合分け」と「計算の活用」について見ていきます。
1問目は、「じゃんけん」がテーマの問題です。
【問題】A、B、C、Dの4人がジャンケンを1回するとき、次の問いに答えなさい。
(1)Aがパーを出したとき、あいこになる場合は何通りありますか。
(2)Aが勝つ場合は何通りありますか。ただし、2人以上が勝つ場合も含みます。
(法政大学中学校 2024年 問題3)
【考え方】
(1)
あいこになるのは、4人の出した手が1種類だけの場合と3種類すべての場合です。
(1種類だけの場合)
Aがパーを出しているので、他の3人もパーを出す場合の1通りです。
(3種類すべての場合)
4人で3種類の手を出しますから、同じ種類の手を出した人が2人います。
・グー、グー、チョキ、パーのとき
Aがパーを出しているので、「チョキ」に着目すると
3C1=3通り
とわかります。
・グー、チョキ、チョキ、パーのとき
Aがパーを出しているので、「グー」に着目すると
3C1=3通り
とわかります。
・グー、チョキ、パー、パーのとき
Aがパーを出しているので、残りの3人の手がグー、チョキ、パーです。
よって、全部で
1通り+3通り+3通り+6通り=13通り
です。
答え 13通り
(2)
Aだけが勝つ場合、Aを含めた2人が勝つ場合、Aを含めた3人が勝つ場合の3つの場合があります。
(Aだけが勝つ場合)
(A、他の3人)=(グー、チョキ)、(チョキ、パー)、(パー、グー)の3通りがあります。
(Aを含めた2人が勝つ場合)
勝つ人の組み合わせが(A、B)、(A、C)、(A、D)の3通り、手の出し方は(勝つ2人、負ける2人)=(グー、チョキ)、(チョキ、パー)、(パー、グー)の3通りですから、
3通り×3通り=9通り
です。
(Aを含めた3人が勝つ場合)
B、C、Dの3人のうちの1人だけが負ける場合ですから、負ける人の選び方は3通りです。
また、手の出し方は(勝つ3人、負ける1人)=(グー、チョキ)、(チョキ、パー)、(パー、グー)の3通りですから、
3通り×3通り=9通り
です。
よって、
3通り+9通り+9通り=21通り
です。
答え 21通り
本問は、「人を決める → 手を決める」のように2段階で解くという方針立てを確認できる問題です。
1つの計算式だけで求めることが難しい問題では、このように2段階に分けて考えていくことがポイントになります。
2問目も、「じゃんけん」がテーマの問題です。
【問題】5人で1回じゃんけんをするとき、あいこになる5人の手の出し方は全部で何通りですか。
(東京農業大学第一高等学校中等部 2024年 問題2-(3))
【考え方】
5人にA、B、C、D、Eの名前を付けると、Aの手の出し方はグー、チョキ、パーの3通り、Bの手の出し方もグー、チョキ、パーの3通り、…、Eの手の出し方もグー、チョキ、パーの3通りがありますから、5人の手の出し方は全部で
3通り×3通り×3通り×3通り×3通り=243通り
あります。
また、5人がじゃんけんをして勝負が決まる手の出し方は、グーとチョキ、チョキとパー、パーとグーの3通りです。
さらに、勝つ人数は1人だけ、2人、3人、4人つの4つの場合があります。
1人が勝つ場合 … 5C1=5通り
2人が勝つ場合 … 5C2=(5×4)/(2×1)=10通り
3人が勝つ場合 … 2人が負けることになるので、5C2=10通り
4人が勝つ場合 … 1人が負けることになるので、5C1=5通り
ですから、全部で
5通り+10通り+10通り+5通り=30通り
あります。
手の出し方が3通り、勝つ人が30通りありますから、5人がじゃんけんをして勝負が決まる場合の数は
3通り×30通り=90通り
とわかります。
よって、あいこになる5人の手の出し方は、勝負が決まる場合以外の
243通り-90通り=153通り
です。
本問は、すべての場合の数から求める答え以外の場合の数を引く、「余事象」と呼ばれる考え方が確認できる問題です。
あいこになる場合から考えて正解できなかったときは、勝負が決まる場合を先に考える解き方を使って直しをしてみましょう。
最後は「分け方」の問題です。
【問題】今日はAさんの誕生日です。BさんとCさんの2人でケーキを6個買い、Aさんの家で誕生日パーティーをすることになりました。このケーキを3人で分けるとき、次の問いに答えなさい。ただし、誕生日のAさんは必ずケーキを1個以上もらえるものとします。
(1)ケーキの種類がすべて異なるとき、6個のケーキを2個ずつ3人に分ける分け方は何通りありますか。
(2)ケーキの種類がすべて同じとき、6個のケーキを3人で分ける方法は何通りありますか。ただし、BさんとCさんは1個ももらえなくても良いものとします。
(3)ケーキの種類がすべて異なるとき、6個のケーキを3人で分ける分け方は何通りありますか。ただし、1個ももらえない人がいてはいけないものとします。答えだけでなく、途中の計算や考え方も書きなさい。
(江戸川学園取手中学校 2024年 問題5)
【考え方】
(1)
はじめに、Aさんが6個の中から2個を選ぶことにします。
6C2=(6×5)/(2×1)=15通り
次に、Bさんが残りの4個の中から2個を選ぶことにします。
4C2=(4×3)/(2×1)=6通り
Cさんは残った2個をもらうので、1通りです。
15通り×6通り×1通り=90通り
答え 90通り
(2)
6個のケーキのうち、Aさんが必ずもらう1個を除いた5個の分け方を考えます。
ケーキを○、取り分を決めるための棒を|で表します。
例えば、次の図1のようにケーキの間に棒を置くと、Aさんが1個、Bさんが2個、Cさんが2個もらえます。
また、図2の場合はAさんが0個、Bさんが5個、Cさんが0個もらえます。
ですから、5個のケーキの分け方は、つぎのような7つのマスの中に5個のケーキと2本の棒を入れる場合の数と同じです。
2本の棒を入れるマスの選び方は、
7C2=(7×6)/(2×1)=21通り
あります。
答え 21通り
(3)
個数について場合分けをし、(1)と同じように考えていきます。
(1個、1個、4個)の場合
Aさんが1個、Bさんが1個、Cさんが4個のケーキをもらうとします。
はじめにAさんが6個の中から1個を選ぶ方法は6通り、次にBさんが残りの5個の中から1個を選ぶ方法は5通り、最後にCさんは残った4個をもらうので1通りですから、場合の数は
6通り×5通り×1通り=30通り
です。
ケーキを4個もらう人はAさん、Bさん、Cさんの3通りの場合がありますから、全部で
30通り×3通り=90通り
です。
(1個、2個、3個)の場合
Aさんが1個、Bさんが2個、Cさんが3個のケーキをもらうとします。
はじめにAさんが6個の中から1個を選ぶ方法は6通り、次にBさんが残りの5個の中から2個を選ぶ方法は5C2=10通り、最後にCさんは残った3個をもらうので1通りですから、場合の数は
6通り×10通り×1通り=60通り
です。
もらうケーキの個数の決め方は
ですから、全部で
60通り×6通り=360通り
です。
(2個、2個、2個)の場合
(1)で求めた90通りです。
以上より、全部で
90通り+360通り+90通り=540通り
です。
答え 540通り
本問は、場合分け、2段階で考える、「○|解法」などが確認できる問題です。
(3)は難しい問題ですが、(1)が誘導になっています。
今回は、2024年度に共学中の入試で出された「場合分け」と「計算の活用」の問題をご紹介しました。
1問目と2問目はどちらも「じゃんけん」がテーマの問題でしたが、順に考えていく1問目、余事象を利用する2問目のように、「場合の数」の問題は同じテーマでも求めるものや条件が変わると解き方も変わることがあります。
正解できない問題があれば、このような違いに気をつけて解いたかを確認してみましょう。