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第690回 共学中の入試問題 立体図形 5

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図形の練習問題 2024年09月28日18時00分

「第690回 共学中の入試問題 立体図形 5」

近年の共学中の入試で出された「立体図形」について考えています。

前回は「立体の切断」の応用問題と「水の入った容器を傾ける」問題を見ました。

今回は「水問題」を取り扱います。

 

1問目は、基本レベルの問題です。

 

【問題】1辺が5㎝の正方形を底面とする直方体の容器に水を入れ、鉄球を完全に沈めたところ、水があふれ出ることはなく、水位が2㎝上昇しました。1㎤あたりの鉄の重さを7.9gとすると、この鉄球の重さは何gですか。

(慶應義塾中等部 2024年 問題2-(3) 問題文一部変更)

 

【考え方】

条件を図で表してみます。

水の中に物を入れる問題には、「高い方の水面を延長する」という解き方があります。

図より、

水+★(すき間)=水+鉄球

ですから、鉄球の体積は★(すき間)の体積と同じです。

5㎝×5㎝×2㎝=50㎤ … ★の体積=鉄球の体積

7.9g/㎤×50㎤=395g

答え 395g

 

本問は、水の中に物を入れる場合の基本が確認できる問題です。

なお、鉄球を入れる前と入れた後を1つの図に表す方法でもOKです。

 

2問目は、水とグラフの問題です。

 

【問題】図1のように、縦15㎝、横40㎝、高さ32㎝の直方体の水そうに、縦15㎝、横8㎝の直方体のブロックと、縦15㎝、横20㎝の直方体のブロックをすき間なく敷き詰めました。水道Aから底面い□に向かって毎秒90mLの割合で水を入れます。水道Bからは底面ろ□に向かって一定の割合で水を入れます。図2は、水道Aだけを使ってこの水そうを満水にしたときの、時間と底面い□からの水面の高さの関係を表すグラフです。図3は、水道Bだけを使ってこの水そうを満水にしたときの、時間と底面ろ□からの水面の高さの関係を表すグラフです。このとき、次の各問いに答えなさい。

(1)ア□にあてはまる数はいくつですか。

(2)水道Bから入れる水は毎秒何mLですか。

(3)はじめに水道Aだけを使って何秒間か水を入れて、途中から水道Aと水道Bの両方を使うと、水そうが満水になるまでに125秒かかりました。このとき、水道Aと水道Bの両方を使った時間は何秒間ですか。

(山手学院中学校 2024年 問題7 問題文一部変更)

 

【考え方】

(1)

水道Aだけを使って水そうを満水する様子を、水そうを正面から見た図に整理します。

40~70秒までに入る水の量(図の右側の水)は

90㎤/秒×(70秒-40秒)=2700㎤

です。

ですから、この水の深さア□は

2700㎤÷(15㎝×20㎝)=9㎝

です。

答え 9

 

(別解)

32㎝-21㎝=11㎝ … ブロック(右)の高さ

20㎝-11㎝=9㎝

 

(2)

水道Bだけを使って水そうを満水する様子を、水そうを正面から見た図に整理します。

126秒後から270秒後までに入る水の量は

15㎝×40㎝×(32㎝-20㎝)=7200㎤

です。

水道Bだけでこの水の量を入れるのに

270秒-126秒=144秒

かかりますから、水道Bから入れる水の量は

7200㎤÷144秒=50㎤/秒 → 50mL/秒

です。

答え 毎秒50mL

 

(3)

15㎝×40㎝×32㎝=19200㎤ … 水そうの容積

15㎝×8㎝×20㎝+15㎝×20㎝×(20㎝-9㎝)=5700㎤ … 2つのブロックの体積の和

19200㎤-5700㎤=13500㎤ … 水そうに入れる水の量

水道Aは水そうが空のときから満水になるまで使い続けますから、水道Aから入る水の量は

90㎤/秒×125秒=11250㎤

です。

よって、水道Bを使う時間は

(13500㎤-11250㎤)÷50㎤/秒=45秒

です。

答え 45秒間

 

本問は、水問題のグラフの読み取りとその利用方法が確認できる問題です。

問題文は長いのですが、基本に従って水そうを正面から見た図に整理すると、着眼する点を見つけることができます。

 

最後は、応用レベルの問題です。

 

【問題】図のような空の水そうに、一定の割合で水が入る蛇口Aと一定の割合で水が出る蛇口Bを使って、次の2つの操作をしました。

【操作 1】はじめに蛇口Aを開き、水そうの7/12の高さまで水が入ったところで蛇口Bを開きました。その後、水そうが満水になったところで蛇口Aを閉じると、水を入れ始めてから80分後に水そうは空になりました。

【操作 2】はじめに蛇口Aを開き、水そうの3/4の高さまで水が入ったところで蛇口Bを開きました。その後、水そうが満水になったところで蛇口Aを閉じると、水を入れ始めてから72分後に水そうは空になりました。

(1)操作1と操作2で蛇口Aだけを開く時間の差が4分のとき、1分間に蛇口Aから入れる水の量と蛇口Bから出る水の量の比を、最も簡単な整数の比で答えなさい。

(2)操作1において、水そうの7/12の高さまで水が入ったところで、たて40㎝、横40㎝、高さ50㎝の直方体のおもりを完全に沈めて、蛇口Bを開けました。その後、操作を続けて、空になるまでの時間を調べたところ、おもりを入れなかったときと比べて15分短縮されました。この水そうの容積は何Lですか。

(青山学院中等部 2024年 問題14 問題文一部変更)

 

【考え方】

(1)

水そうの高さを12として、操作1、2の様子をグラフに整理してみます。

12×7/12=7 … 操作1で蛇口Bを開くときの水の高さ

12×3/4=9 … 操作2で蛇口Bを開くときの水の高さ

グラフより、蛇口Aだけで水を4分間入れると、水の深さが

9-7=2

増えるとわかります。

2÷4分=1/2 /分 … 蛇口Aから1分間に入る水の深さ

ですから、操作1で蛇口Aだけを使った時間は

7÷1/2 /分=14(分)

です。

また、蛇口Aと蛇口Bを使って入れた水の深さは、操作1では

12-7=5

操作2では

12-9=3

ですから、かかる時間の比は5:3です。

さらに、水色部分が平行四辺形ですから、

⑤=4分+③+(80分-72分) → ①=6分

です。

以上のことから、操作1で満水になるのは

14分+6分×5=44分後

とわかりますから、操作1で蛇口Bだけを使って満水の水そうを空にするのにかかる時間は

80分-44分=36分

です。

12÷36分=1/3 /分 … 蛇口Bから1分間に出る水の深さ

1/2 /分:1/3 /分=3:2

答え 3:2

 

(2)

条件を図に整理します。

おもりを入れるとその体積と同じだけ水の出し入れがなくなりますから、14分後から44分後(蛇口Aから水を入れながら蛇口Bから水を出す時間)までと、44分後から80分後
(蛇口Bだけで水を出す時間)で合わせて15分の時間が短縮されます。

蛇口Aから水を入れながら蛇口Bから水を出すと1分間に水の深さが

1/2-1/3=1/6

増え、蛇口Bだけで水を出すと1分間に水の深さが1/3減りますから、同体積(おもりの体積)分にかかる時間の比は逆比の

1/3:1/6=2:1

です。

15分×1/(2+1)=5分 … 44分後から80分後で短縮された時間

おもりの体積と水そうの容積の比は時間の比の

5分:36分=5:36

と同じですから、おもりの体積が水そうの容積の5/36にあたるとわかります。

40㎝×40㎝×50㎝=80000㎤=80L … おもりの体積

80L÷5/36=576L

答え 576L

 

本問は、水問題のグラフの使い方が確認できる問題です。

かかる時間の差が見やすくなるように「グラフがないから、とりあえず書いてみようかな」と考えると着目する点が見つけやすくなります。

なお、グラフの代わりに(2)のような図で考えてもOKです。

自分にとってわかりやすい方法を選ぶとよいでしょう。

 

今回は、2024年度に共学中の入試で出された「水問題」をご紹介しました。

もし、「水問題」が苦手のようでしたら、1問目や2問目などの基本問題で、図のかき方やグラフの読み取り方、読み取った条件の整理方法をまずはチェックしてみましょう。

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図形の練習問題 / 中学入試の算数問題 2024年09月28日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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