第687回 共学中の入試問題 立体図形 2
「第687回 共学中の入試問題 立体図形 2」
前回から近年の共学中の入試で出された「立体図形」について考えています。
今回は「立体図形」の中から「回転体」と「積み木」の問題を取り扱います。
1問目は、回転体の基本問題です。
【問題】図のような台形を、直線ABを軸として1回転させてできる立体の表面積は何㎠ですか。ただし、円周率は3.14とします。
(慶應義塾中等部 2024年 問題3-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
できる立体の見取り図をかきます。
回転体の見取り図は、回転させる図形を回転の軸を対象とする位置にもかき、対応する点をなめらかに結んで作図します。
見取り図より、できる立体は円すい台とわかります。
「円すい台は円すい(大)から相似な円すい(小)を取り除いた立体」というのが、基本の考え方です。
長さを求めるために、断面図で考えます。
大小の直角三角形の相似比は
8㎝:3㎝=8:3
です。
⑧-③= 12㎝ → ①=2.4㎝
2.4㎝×8=19.2㎝ … 円すい(大)の母線
2.4㎝×3=7.2㎝ … 円すい(小)の母線
円すいの側面積は「母線×底面の半径×円周率」で求められますから、できる立体の表面積は
8㎝×8㎝×3.14+3㎝×3㎝×3.14+19.2㎝×8㎝×3.14-7.2㎝×3㎝×3.14
=205㎠×3.14
=643.7㎠
です。
答え 643.7㎠
本問は、回転体の基本が確認できる問題です。
なお、解答例以外に、面積比を利用して表面積を求める方法もあります。
2問目も回転体の問題です。
【問題】下の図のようにAB=BC=3㎝の直角二等辺三角形ABCを直線DEを軸に1回転させたときにできる立体の体積は何㎤ですか。ただし、円周率は3.14とします。必要であれば円すいの体積は「(底面積)×(高さ)÷3」で求められることを使ってもかまいません。
(栄東中学校 2024年 問題1-(8) 問題文一部変更)
【考え方】
前問と同じ手順で、できる立体の見取り図をかきます。
できた立体を2つに分けて考えることにします。
長さを求めるために、断面図で考えます。
1㎝×1㎝×3.14×2㎝-1㎝×1㎝×3.14×1㎝÷3
=5/3㎤×3.14 … 上側の立体の体積
2㎝×2㎝×3.14×2㎝÷3-1㎝×1㎝×3.14×1㎝÷3
=7/3㎤×3.14 … 下側の立体の体積
(5/3+7/3)㎤×3.14=12.56㎤
答え 12.56㎤
本問は、回転する図形の一部が重なる場合の考え方が確認できる問題です。
前問よりは少し難しいのですが、定番問題でもありますので、既習であれば正解したい問題です。
3問目は、「積み木」の問題です。
【問題】1辺が1㎝の立方体を18個使って、図1のような立体を作りました。図2はこの立体を、ま上から見た図です。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)この立体の表面積を求めなさい。
(2)この立体を一度くずし、全ての立方体を使って新たな立体を作りました。この新たな立体を正面、ま横、ま上から見た図が次のようになるとき、表面積を求めなさい。
(法政大学中学校 2024年 問題5)
【考え方】
(1)
積み木の表面積は、隠れた面がない場合、前後、左右、上下から見える面積の和で求められます。
また、前と後ろから見える面積、右と左から見える面積、上と下から見える面積はそれぞれ同じです。
(10㎠+7㎠+9㎠)×2=52㎠
答え 52㎠
(2)
前から見える立方体の個数と横から見える立方体の個数から積み重ねられた立方体の個数を考え、上から見た図に書き込みます。
すると、アとイ以外は次のように決まります。
前から見える立方体の個数と横から見える立方体の個数から、アとイは少なくとも一方が「2」です。
また、「立方体を18個」という条件から、アとイの和が
18-(1×8+3×2)=4
ということもわかります。
ですから、ア=2、イ=2と決めることができます。
このことを元にして立体の見取り図をかくと、次のようになります。
見取り図から、赤色部分の3つの正方形(向かい合ったところも3つあります)は前後、左右、上下のどこから見ても「隠れて見えない」ことがわかります。
ですから、この立体の表面積は(前から見える面+右から見える面+上から見える面+赤色部分の面)×2 のように計算できます。
(7㎠+7㎠+12㎠+3㎠)×2=58㎠
です。
答え 58㎠
本問は、積み木の表面積の求め方を確認できる問題です。
なお、(2)では、上から見た図に書き込んだ数値だけでの隠れた面の数がわかるのであれば、見取り図を省略しても構いません。
今回は、2024年度に共学中の入試で出された「回転体」と「積み木」の問題をご紹介しました。
少し難しい問題も含まれていますが、考え方や解き方はいずれも基本となるものです。
もし、正解できない問題があれば、用いる図の選択、作図、計算などに分け、どこが十分でないかをチェックしましょう。