第684回 共学中の入試問題 平面図形 6
「第684回 共学中の入試問題 平面図形 6」
近年の共学中の入試で出された「平面図形」の問題について考えています。
前回は「点や図形の移動」を取り扱いました。
今回は「転がり移動」がテーマの問題を見ていきます。
1問目は、基本問題です。
【問題】下の図のように、長方形ABCDの中に半径1㎝の円があります。円が長方形の内側の辺上をすべることなく転がるとき、円が通過することができる部分の面積を求めなさい。ただし、円周率は3.14とします。
(芝浦工業大学附属中学校 2024年 問題2-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
円がAB上、BC上を転がる様子は、次の通りです。
ですから、長方形の内側を1周するときに通過できる部分は次のようになります。
赤色部分を区切ってもよいですし、長方形ABCDのから白色部分を除く解き方もあります。
ここでは、後者の方法で進めていきます。
5㎝×10㎝=50㎠ … 長方形ABCDの面積
1㎝×6㎝=6㎠ … 中央の白色部分
2㎝×2㎝-1㎝×1㎝×3.14=0.86㎠ … 四隅の白色部分
50㎠-(6㎠+0.86㎠)=43.14㎠
答え 43.14㎠
本問は、円が図形の内側を転がるときの作図が確認できる問題です。
なお、通過した部分を区切る場合は、次のような計算になります。
2㎝×8㎝×2+2㎝×3㎝×2-1㎝×1㎝×4=40㎠ … 4つの長方形から重なりを引いた面積
1㎝×1㎝×3.14=3.14㎠ … 四隅の四分円を集めた面積
40㎠+3.14㎠=43.14㎠
2問目は、円が図形の外側にそって転がる問題です。
【問題】図のように1辺が3㎝である正三角形2つと1辺が6㎝の正三角形を並べた図形があります。この図形の周りを半径3㎝の円がすべらないように1周するとき、円の中心が動いた部分の長さを求めなさい。ただし、円周率は3.14とします。
(帝京大学中学校 2024年 問題2-(7))
【考え方】
円が直線上を端から端まで転がるとき、次のような長方形を作図することができます。
ですから、円が図形の各辺の端から端まで動く様子は、次のようになります。
また、図形の頂点では、円はその頂点を中心に回転します。
さらに、円が図形の上部でアの位置からイの位置に向けて正三角形の頂点を中心に回転するときは、円は赤色の正三角形に「ぶつかる」まで次のように回転します。
よって、中心の動きは次のようになります。(○の大きさは60度)
(3㎝+6㎝)×2+6㎝×3.14×(90度×2+60度×2+120度)/360度
=9㎝×2+7㎝×3.14
=39.98㎝
答え 39.98㎝
本問は、円が図形の外側を転がるときの作図が確認できる問題です。
中心の動きを「直線 → 曲線」の順に考えると作図しやすいでしょう。
正確な作図ができないときは、厚紙などで問題の図形を作り、実施の動きを確かめてみましょう。
3問目は、定番の応用問題です。
【問題】下の図のように1辺が6㎝が正六角形の内側を、1辺が6㎝の正三角形ABCをすべることなく矢印の方向に転がします。このとき、頂点Aが最初の位置にもどるまでに動く長さは何㎝ですか。ただし、円周率は3.14とします。
(青山学院横浜英和中学校 2024年 問題2-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
正六角形の1つの内角の大きさは120度、正三角形の1つの内角の大きさは60度ですから、1回に転がる角の大きさは
120度-60度=60度
です。
回転の中心が移り変わっていくことに気をつけながら、作図をします。
頂点Aは「60度回転→60度回転→動かない(回転の中心)→60度回転→60度回転」のように動いて、最初の位置に戻ります。
6㎝×2×3.14×60度/360度×4=25.12㎝
答え 25.15㎝
本問は、正三角形の転がり移動の作図が確認できる問題です。
回転の中心が移り変わること、回転の中心となる点が回転の際に移動しないことに注意しましょう。
今回は、2024年度に共学中の入試で出された「転がり移動」の問題をご紹介しました。
平行移動、回転移動とともに、作図力が重要な要素となる問題です。
転がり移動の作図を正確にかけないときは、平行移動や回転移動の作図の復習、紙などを利用した実物を動きの確認をしてみましょう。