第671回 共学中の入試問題 比と割合 3
「第671回 共学中の入試問題 比と割合 3」
前回は、近年の共学中の入試問題で出された「比と割合」の中から「売買算」を取り扱いました。
今回は「食塩水の濃さ」の基本レベルの問題を見ていきます。
1問目は「塩分数」と条件整理に関する問題です。
【問題】いくらかの量の10%の食塩水に8%の食塩水200gを入れてよく混ぜて9.2%にする予定でしたが、8%の食塩水を( )g入れたため8.4%になりました。( )に入る数を答えなさい。
(栄東中学校 2024年 問題1-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
「食塩水の濃さ」の問題を解く基本は、はじめに、問題の条件を「塩分数」で整理することです。
次に、食塩水の3公式(食塩水の重さ×濃さ=食塩の重さ など)を使って「塩分数」の空欄を埋めていきます。
200g×0.08=16g
食塩水の3公式を使ってわかる値を書き込みましたが、まだ、答え(( )gの部分)を求めることができません。
このような場合は、さらに面積図や天びん図を用います。
本問では、面積図を使って再整理してみます。
左の面積図で、★と☆が等しいことに着目します。
★=200g×(0.092-0.08)=2.4g=☆
□=2.4g÷(0.1-0.092)=300g … 濃さが10%の食塩水の重さ
わかったこと右の面積図で利用します。
☆=300g×(0.1-0.084)=4.8g
右の面積図でも☆と★が同じです。
4.8g÷(0.084-0.08)=1200g
答え 1200
本問は、食塩水の問題の基本が確認できる問題です。
「塩分数に整理 → 食塩水の3公式で計算 → (必要であれば)面積図や天びん図を利用」という基本の流れができることを確かめましょう。
なお、天びん図を利用した場合は、次のようになります。
2問目は食塩水の捨ててから水を入れる問題です。
【問題】
4%の食塩水110gに食塩を10g加えてよくかき混ぜたあと、できた食塩水を10g捨てます。その後、水を何gか加えてよくかき混ぜたところ、4%の食塩水ができました。このとき、水を何g加えたか求めなさい。
(市川中学校 2024年 問題1-(2))
【考え方】
加えたり、捨てたりする操作を何回かしますので、「塩分数」と「→」を用いた流れ図に整理します。
前問と同様に、食塩水の3公式を使って計算していきます。
110g×0.04=4.4g … はじめの食塩の重さ
食塩を10g加えると、食塩水の重さも溶けている食塩の重さも10g増えます。
(4.4g+10g)÷(110g+10g)×100=12% … 食塩を加えた後の濃さ
食塩水を10g捨てても、食塩水の濃さは変わりません。
(120g-10g)×0.12=13.2g … 残った食塩の重さ
残った食塩水に水を何g加えても、食塩の重さは変化しません。
13.2g÷0.04=330g … 水を加えた後の食塩水の重さ
ここまでにわかったことを空欄に書き込むと、次のようになります。
ですから、加えた水の重さは
330g-110g=220g
です。
答え 220g
本問も、食塩水の基本が確認できる問題です。
食塩を□g加えると食塩水もその中に溶けている食塩も重さが□g増えること、水を加えても食塩の重さが変化しないこと、食塩水を捨てても食塩水の濃さが変化しないことの3点が利用できることを確かめましょう。
なお、「濃さが12%の食塩水110gに水を入れると4%になる」を「12%÷4%=3倍に薄める」に読み替えると、3倍-1倍=2倍の水を加えればよいことになりますから、110g×2=220gのように求めることもできます。
3問目も、加えたり捨てたりする問題です。
【問題】2%の食塩水200gに8%の食塩水を何gか混ぜ合わせたところ、4%の食塩水ができました。この食塩水から何gか捨て、同じ量の水を加えると、2.4%の食塩水になりました。
① 8%の食塩水は何gですか。
② 捨てた食塩水は何gですか。
(神奈川大学附属中学校 2023年 問題2-(2))
【考え方】
①
まず、流れ図に整理します。
はじめの食塩の重さは求められますが、その後は「食塩水の3公式」で計算することができません。
そこで、面積図か天びん図に整理し直します。
今回は、天びん図を利用してみます。
2%の食塩水に8%の食塩水を混ぜると4%の食塩水になることを天びん図に表します。
うでの長さが
(4%-2%):(8%-4%)=1:2
なので、重さの比は逆比の2:1です。
200g×1/2=100g … 加えた8%の食塩水の重さ
答え 100g
② ①からわかることを流れ図に書き込みます。
書き込みましたが□を求めることができませんので、赤枠部分を①と同じ様に天びん図に表してみます。
うでの長さが
2.4%:(4%-2.4%)=3:2
なので、重さの比は逆比の2:3です。
加えた水の重さ(□g)を②gとすると、食塩水を捨てた後の濃さが4%の食塩水の重さは③gです。
4%の食塩水を②g捨てる前の食塩水の重さは300gですから、
②+③=300g → ①=60g
です。
よって、捨てた食塩水は
60g×2=120g
とわかります。
答え 120g
本問は、条件を整理した流れ図の着目点が確認できる問題です。
食塩水の3公式だけで解けないことに気づけたら、面積図や天びん図に条件を書きかえてみるという視点が大切です。
なお、前問と同様に、「濃さが4%の食塩水に水を入れて2.4%にするには、4%÷2.4%-1倍=2/3倍 の水を加えればよいので、水を加える前の食塩水の重さを③gとすると加える水の重さが②gとなる」と考えることもできます。
最後は「やりとりをする食塩水」の基本問題です。
【問題】2つの食塩水A、Bがあります。Aは20%の食塩水500gで、Bは15%の食塩水400gです。Aの食塩水を何gかBに移したところ、2つの食塩の量はそれぞれ同じになりました。このときBの食塩水は何%ですか。
(帝京大学中学校 2023年 問題2-(2))
【考え方】
「やりとり」の問題は流れ図に整理できます。
このとき、「やりとりをしても和は変わらない」という特徴にも注意します。
「食塩水の3公式」を用いると、次のような流れ図がかけます。
□g+□g=160g → □g=80g
★g=100g-80g=20g
よって、移した食塩水の重さは
20g÷0.2=100g
とわかります。
Aの食塩水を移した後のBの食塩水は、重さが
400g+100g=500g
その中に溶けている食塩の重さが80gですから、濃さは
80g÷500g×100=16%
です。
答え 16%
本問は、食塩水のやりとりを流れ図に整理して解く基本が確認できる問題です。
「流れの読み取り」と「やりとりをしても和は変わらない」がポイントになっています。
なお、上記の解答例以外に、
80g÷0.2=400g … Bに食塩水を移した後のAの食塩水の重さ
900g-400g=500g … Aから食塩水を移した後のBの食塩水の重さ
80g÷500g×100=16%
のようにして解くこともできます。
今回は、2023年度と2024年度に共学中の入試で出された「食塩水の濃さ」の基本問題をご紹介しました。
条件を「塩分数」を使って流れ図などに整理すると、そのまま計算ができる、面積図や天びん図が必要になるなど、問題を解く方針がわかりやすくなります。
食塩水の問題が苦手なときは、今回のような問題を使って条件整理と食塩水の3公式や面積図などの解法をきちんと身につけ直しましょう。