第670回 共学中の入試問題 比と割合 2
「第670回 共学中の入試問題 比と割合 2」
近年の共学中の入試問題で出された「比と割合」について考えています。
今回は売買算の問題を取り扱います。
1問目は基本レベルの問題です。
【問題】ある品物を原価の2割の利益を見込んで定価をつけましたが、売れなかったので定価の600円引きで売ったところ、利益は原価の8%でした。この品物はいくらで売れましたか。
(成蹊中学校 2024年 問題2-(4))
【考え方】
品物の個数が1個のときは、「→」を使って条件を整理することができます。
割合に着目すると、「2割」も「8%」も元にする量(→の根元部分)が「原価」ですから、原価を1とします。
原価の
1.2-1.08=0.12
が600円にあたりますので、原価は
600円÷0.12=5000円
です。
5000円×1.08=5400円
答え 5400円
本問は、「1個売り」の売買算の整理方法が確認できる問題です。
なお、上記の解答例以外に、
原価:定価:売価=1:1.2:1.08=㉕:㉚:㉗
㉚-㉗=600円 → ①=200円
200円×27=5400円
のようにして求めることもできます。
2問目は「多数売り」の売買算です。
【問題】原価600円の品物を仕入れ、それに10%の利益を見込んで定価をつけて売ったところ、40個余りました。余った40個を定価の1割引きですべて売ったところ、9360円の利益を得ました。品物は全部で何個仕入れましたか。
(國學院久我山中学校 2024年 問題2-(5))
【考え方】
「多数売り」は表を使うと、条件がわかりやすくなります。
表の空欄にわかることを書き足していきます。
600円×(1+0.1)=660円 … 定価(ア)
660円×(1-0.1)=594円 … 値引き後の売価(イ)
594円×40個=23760円 … 値引いて売った品物の売上合計(キ)
この後は、(エ)を□個、(ウ)を(□+40)個として解く方法と1個あたりの利益から考えていく方法などがあります。
ここでは1個あたりの利益を利用してみます。
660円-600円=60円 … 定価で売ったときの1個あたりの利益
600円-594円=6円 … 値引きして売ったときの1個あたりの損失
6円×40個=240円 … 損失の合計(ケ)
(ク)-(ケ)=9360円
9360円+240円=9600円 … 定価で売ったときの利益の合計(ク)
9600円÷60円=160個 … 定価で売った個数(エ)
160個+40個=200個
答え 200個
本問は、利益についての考え方が確認できる問題です。
値引きをすると損失がでることに気をつけます。
なお、上記の解答例以外以外に、「もし、値引きをしなければ…」とする解き方もあります。
定価から
660円-594円=66円
を値引かなければ、売り上げが
66円×40個=2640円
増えますから、総利益も2640円多い12000円になります。
値引きをしなければ1個あたりの利益はすべて60円ですから、売った個数(=仕入れた個数)は
12000円÷60円=200個
とわかります。
3問目も「多数売り」に関する問題です。
【問題】3200円で100個仕入れた商品を、3割5分の利益がでるように値段をつけて販売しました。20個しか売れなかったので、利益が2割となるようにするためには、いくら値下げをすればよいですか。
(広尾学園小石川中学校 2023年 問題2-(5))
【考え方】
「多数売り」の問題ですから、条件を表に整理することにします。
はじめは予定についてです。
3200円×100個=320000円 … 仕入れ合計
320000円×0.35=112000円 … 総利益
320000円+112000円=432000円 … 売り上げ合計
432000円÷100個=4320円 … 定価
次に実際について整理します。
4320円×20個=86400円 … 定価で売った商品の売り上げ合計
320000円×0.2=64000円 … 総利益
320000円+64000円=384000円 … 売り上げ合計
384000円-86400円=297600円 … 値下げして売る商品の売り上げ合計
100個-20個=80個 … 値下げして売る商品の個数
297600円÷80個=3720円 … 値下げ後の売価
定価が4320円の商品を3720円で売るので、値下げ額は
4320円-3720円=600円
です。
答え 600円
本問は、「多数売り」の売買算の考え方が確認できる問題です。
3200円を100個分の仕入れ合計として計算すると、
3200円÷100個=32円 … 原価
32円×(1+0.35)=43.2円 … 定価
のように、値段に1円未満の数がでてきますので、「3200円は1個あたりの仕入れ値」と気づけます。
なお、上記の解答例以外に、利益率に着目した天びん図で解く方法もあります。
④=35%-20%=15% → ①=15%÷4=3.75%
20%-3.75%=16.25% … 値引き後の利益率
3200円×(0.35-0.1625)=600円
最後は、「利益が等しくなる売り方」の売買算です。
【問題】原価が1個320円の品物があります。この品物を定価の5%引きで20個売るときの利益と、定価の10%引きで30個売るときの利益は等しくなります。この品物の定価は、1個何円ですか。
(法政大学中学校 2023年 問題2-(6) 問題文一部変更)
【考え方】
この問題でいう「利益」とは、総利益のことです。
総利益は(1個あたりの利益)×(個数)で求められますので、比を使った整理ができます。
わかったことを線分図に表すと、次のようになります。
定価の5%と定価の10%の差が利益の差の①にあたりますから、定価は
(③-②)÷(0.1-0.05)=⑳
です。
⑳×0.05=① … 定価の5%
⑳=320円+③+① → ①=320円÷(20-4)=20円
20円×20=400円
答え 400円
本問は、総利益が等しくなる2通りの売り方についての考え方が確認できる問題です。
売買算では、「総利益」も「1個あたりの利益」も「利益」と表現されることがあります。
問題文の前後関係からどちらのことを示しているのかを正しく読み取りましょう。
今回は、2023年度と2024年度に共学中の入試で出された「売買算」の問題をご紹介しました。
見てきましたように、売買算のポイントは、
① 条件の整理方法を選ぶ
② 原価、定価、売価、利益の関係や仕入れ合計、売り上げ合計、総利益の関係を覚える
③ 「仕入れ」や「利益」が1個あたりのものなのか総額なのかを読み取る
です。
また、定価や売価で解けないときは1個あたりの利益を利用するなど、複数の視点も必要です。
これらのポイントを問題集や塾のテキストでひとつひとつきちんとおさえ、入試レベルの問題が解けることを目指しましょう。
手始めに、今回ご紹介した問題を解き、どのポイントに弱点があるのかを明確にしていくとよいと思います。