第664回 共学中の入試問題 数と計算 1
「第664回 共学中の入試問題 数と計算 1」
前回まで、近年の女子中の入試問題について見てきました。
今回からは、共学中の入試問題を取り上げていくことにします。
その1回目は、「数と計算」の中から「計算の工夫」や「計算のきまり」などの問題について考えます。
では、1問目です。
【問題】を利用すると、
□に入る数を答えなさい。ただし、□にはすべて同じ数が入ります。
(栄東中学校 2024年 問題1-(3) 問題文一部変更)
【考え方】
「部分分数分解」の計算問題です。
□=1と仮定して、問題の式を筆算の形で表します。
ですから、
□=5÷1=5
とわかります。
答え 5
本問は、部分分数分解の考え方が確認できる問題です。
正解できなかったときは、「帳消し」が利用できたかをチェックしましょう。
続けて、2問目です。
【問題】次の計算をしなさい。
(お茶の水女子大学附属中学校 2023年 問題1-④)
【考え方】
本問も、部分分数分解の考え方が利用できます。
はじめに、ひき算部分を( )を使ってひとまとめにします。
前問と同じように、分数を分解します。
このまま計算しても構いませんし、( )をはずしてから計算してもよいでしょう。
ここでは、( )をはずしてから計算していきます。
答え 1/7
本問も、部分分数分解の考え方が確認できる問題です。
「+」と「-」を見間違わないように注意しましょう。
3問目です。
【問題】次の計算をしなさい。
(江戸川学園取手中学校 2023年 問題1-(1)-④)
【考え方】
( )内の分数を通分をして足し、それから120をかけてもよいのですが、ここでは分母がどれも120の約数であることに着目して、分配のきまりを利用することにします。
答え 174
本問は、計算のきまりの利用が確認できる問題です。
そのまま計算したときは、分配のきまりを使った計算もしてみましょう。
では、4問目です。
【問題】次の□の中に適当な数を入れなさい。
1.2345+12.345+123.45+1234.5-12345×0.1101=□
(昭和学院秀英中学校 2023年 問題1-(2) 問題文一部変更)
【考え方】
分配のきまりが使える形に式を書き直します。
1.2345=12345×0.0001
12.345=12345×0.001
123.45=12345×0.01
1234.5=12345×0.1
1.2345+12.345+123.45+1234.5
=12345×(0.0001+0.001+0.01+0.1)
=12345×0.1111
ですから、
1.2345+12.345+123.45+1234.5-12345×0.1101
=12345×0.1111-12345×0.1101
=12345×(0.1111-0.1101)
=12345×0.001
=12.345
です。
答え 12.345
本問は、計算の工夫と分配のきまりが確認できる問題です。
小数点のずらし方をチェックしましょう。
なお、解答例の他に、12345×0.1101の方を
12345×0.1+12345×0.01+12345×0.0001
のように分配のきまりを利用して書き直す解き方でもOKです。
5問目は、虫食い算です。
【問題】ある割り算を下のような筆算で計算しました。このとき、割られる数を答えなさい。
(ドルトン東京学園中等部 2023年 問題1-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
筆算の□と□に着目します。
1□□(□)と498は、割る数(□)の倍数ですから
498=2×3×83=166×3
より、割る数(□)=166、ア=1、イ=3とわかります。
さらに、→□に着目します。
166×ウ=□□□4の一の位が4であることに着目すると、ウ=9、□□□4=1494とわかります。
よって、割られる数は
166×193=32038
です。
答え 32038
本問は、虫食い算の考え方が確認できる問題です。
割る数×商に着目できたかをチェックしましょう。
次が、今回の最終問題です。
【問題】4けたの整数の中で、9倍すると、もとの整数の数字の並び方と順番が逆になるような整数を求めなさい。
(東京農業大学第一高等学校中等部 2023年 問題2-(1) 問題文一部変更)
【考え方】
条件を筆算で表し、覆面算として考えていきます。
積の桁数と一の位の数に着目します。
ABCD×9が4けたの整数となるようなAは1だけです。
よって、Dも9とわかります。
この筆算では百の位から千の位へのくり上がりがありませんので、Bは0または1です。
積は9の倍数ですから、各位の和は9の倍数です。
よって、B=0のときはC=8、B=1のときはC=7となります。
この2つの筆算のうち、正しい計算となっている筆算は1089×9=9801だけです。
よって、もとの整数は1089です。
答え 1089
本問は、覆面算の考え方が確認できる問題です。
Cについては、解答例の他に、一の位から十の位へのくり上がりに着目して求めることもできます。
今回は、2023年度と2024年度の共学中の入試で出された「計算の工夫」、「計算のきまり」などの問題をご紹介しました。
部分分数分解や分配のきまりなどをマスターしていると、限られた試験時間を節約することも可能です。
虫食い算の考え方や覆面算の着目点なども含め、「解法の引き出し」が増やせるとよいですね。