第657回 女子中の入試問題 立体図形 4
「第657回 女子中の入試問題 立体図形 4」
前回は2023年度に女子中で出された「立体図形」の中から「切断」がテーマの問題を取り上げました。
今回は「水問題」について考えていきます。
1問目は大問形式ですが、レベルは基本の問題です。
【問題】下の図のように、底面の半径が30㎝、高さ30㎝の円柱の形をした水槽の中に、底面の半径が20㎝の円柱の形をした水槽を入れ、さらにその中に、底面の半径が10㎝の円柱の形をしたおもりを立てて入れました。内側の水槽とおもりの高さは等しいものとします。内側の水槽に水をいくらか注いだところ、水があふれ、外側の水槽の水面の高さは10㎝になりました。次に、内側の水槽に入っている水をすべて外側の水槽にあけて、内側の水槽とおもりを取り出すと、水面の高さは12㎝になりました。ただし、水槽の厚さは考えないものとします。次の□に当てはまる数を求めなさい。(円周率は3.14とします。)
(1)注いだ水の量は全部で□㎤です。
(2)水を注いだときに内側の水槽からあふれた水の量は□㎤です。
(3)内側の水槽の高さは□㎝です。(答えは、小数第2位を四捨五入しなさい。)
(横浜共立学園中学校 2023年 問題5)
【考え方】
(1)
内側の水そうとおもりを取り除くと水の深さが12㎝になったので、水の量は
30㎝×30㎝×3.14×12㎝=10800㎤×3.14=33912㎤
です。
答え 33912㎤
(2)
水そうを正面から見た図をかきます。
外側の水そうにあふれた水の量は
(30㎝×30㎝×3.14-20㎝×20㎝×3.14)×10㎝=5000㎤×3.14=15700㎤ … 水の量(☆)
です。
答え 15700㎤
(3)
(2)より、内側の水そうに残っている水の量は
10800㎤×3.14-5000㎤×3.14=5800㎤×3.14 … 水の量(★)
とわかります。
★の水の底面は、内側の水そうの底面よりもおもりの底面の分だけ小さいです。
内側の水そうの高さを□㎝とします。
(20㎝×20㎝×3.14-10㎝×10㎝×3.14)×□㎝=5800㎤×3.14
□=5800㎤÷300㎤=19.33…㎝ → 19.3㎝
答え 19.3㎝
本問は、水問題の図の書き方と読み取り方の基本が確認できる問題です。
「×3.14」の計算をまとめると、ミスを防ぎやすくなります。
2問目も大問形式の問題です。
【問題】図1のような水の入った直方体の形をした水そうに、図2のような三角柱の形をしたおもりを、縦40㎝、横60㎝の長方形の面を下にして入れたところ、水の深さが20㎝になりました。このとき、次の問いに答えなさい。ただし、答えが整数にならないときは、帯分数で答えなさい。
① おもりを水そうから取り出したとき、水の深さは何㎝になりますか。
② ①の後で、おもりを底辺60㎝、高さ40㎝の直角三角形の面を下にして入れました。このとき、水の深さは何㎝になりますか。
(浦和明の星女子中学校 2023年 問題1-(7))
【考え方】
①
水面より下にあるおもりの体積を求めます。
赤色の三角形と★の三角形は相似で、相似比は
40㎝:(40㎝-20㎝)=2:1
ですから、面積比は
(2×2):(1×1)=4:1
です。
60㎝×40㎝÷2×(4-1)/4=900㎠ … 台形の面積
900㎠×40㎝=36000㎤ … 水面より下にあるおもりの体積
36000㎤÷(60㎝×80㎝)=7.5㎝ … 下がる水面の深さ
20㎝-7.5㎝=12.5㎝
答え 12 1/2㎝
②
おもりを水そうに入れると、おもりの底面の分だけ水の底面が小さくなります。
60㎝×80㎝-60㎝×40㎝÷2=3600㎠ … 水が入っている部分の底面積
①より水の体積は
60㎝×80㎝×12.5㎝=60000㎤
なので、水の深さは
60000㎤÷3600㎠=16 2/3㎝
です。
答え 16 2/3㎝
本問は、相似を利用する水問題の考え方が確認できる問題です。
ひとつひとつの考え方は基本レベルですので、正解できなかったときはどこで間違えたかをチェックし、考え方を直しておきましょう。
最後は、水そうとグラフの問題です。
【問題】図1のような直方体の水そうの中に、直方体のおもりが置かれています。この水そうに毎分一定の割合で水を入れ続けたところ、水を入れ始めてからの時間と水面の高さの関係を表すグラフは、下のようになりました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)毎分何Lの水を入れているか、求めなさい。また、なぜそうなるのかを図や式などを使って説明しなさい。
(2)図1のxの値を求めなさい。また、なぜそうなるのかを図や式などを使って説明しなさい。
(3)水そうに入った水をすべて捨ててから、図1と同じおもりを図2のような向きで、1つ目のおもりにぴったりとつけて置きました。この状態で、(1)と同じ割合で水を入れたとき、水を入れ始めてからの時間と水面の高さの関係を表すグラフは、下のようになりました。あ□~お□にあてはまる数を求めなさい。
(田園調布学園中等部 2023年 問題3)
【考え方】
(1)
グラフが30分の所で折れ曲がっている理由は、水面がおもりの上の面をこえて水が入る部分の底面積が増えたからです。
□㎤/分の割合で水を入れているとして、★に着目します。
□㎤/分×(80分-30分)=100㎝×80㎝×(90㎝-40㎝)
□=100×80×50÷50=8000(㎤/分)
8000㎤=8L
答え 毎分8L
(2)
100㎝×80㎝×90㎝=720000㎤ … 水そうの容積
8000㎤/分×80分=640000㎤ … 水の体積
720000㎤-640000㎤=80000㎤ … おもりの体積
100㎝×x㎝×40㎝=80000㎤ → x=80000÷4000=20(㎝)
答え 20
(3)
水そうを真正面から見た図をかきます。
図より、あ□=20(㎝)、い□=40(㎝)とわかります。
次に、☆に着目します。
8000㎤/分×う□分=(100㎝×80㎝-100㎝×20㎝-100㎝×40㎝)×20㎝ → う□=5(分後)
☆と▲に着目します。
8000㎤/分×え□分=100㎝×80㎝×40㎝-80000㎤×2 → え□=20(分後)
☆と▲と△に着目します。
8000㎤/分×お□分=720000㎤-80000㎤×2 → お□=70(分後)
答え あ□ 20、い□ 40、う□ 5、え□ 20、お□ 70
本問は、「水を入れる割合×時間=水の体積」と水そうを正面から見た図で考えるという、水そうとグラフの問題の基本が確認できる問題です。
(3)の解答例では、「☆と▲と△」のようにまとめた部分に着目しましたが、各部の長さがわかっているので、それぞれの部分に着目しても解いてもよいでしょう。
今回は、2023年度の女子中の入試で出された「水問題」をご紹介しました。
いずれも基本の考え方が定着していれば正解できますので、もし間違えたときはその理由をチェックし、正しい考え方をマスターしましょう。