第646回 女子中の入試問題 速さ 5
「第646回 女子中の入試問題 速さ 5」
前回は、2023年度に女子中で出された「速さ」の問題の中から「流水算」の問題を見ました。
今回は「流水算」の長文問題と「時計算」の問題を取り扱っていきます。
1問目は、「流水算」の問題です。
【問題】ある川の上流にA地点と、その下流にB地点があり、A地点とB地点の距離は30㎞です。船Pが、A地点からB地点まで移動するのにかかる時間は2時間で、B地点からA地点まで移動するのにかかる時間は3時間20分です。船Qが、B地点からA地点まで移動するのにかかる時間は2時間30分です。船Pと船Qの静水上での速さと川の流れの速さはそれぞれ一定です。次の問いに答えなさい。
(1)川の流れの速さは時速何㎞ですか。
(2)船Qの静水上での速さは時速何㎞ですか。
船Pと船Qは、それぞれA地点とB地点の間を次のように往復しました。
船Pについて
・A地点を出発し、B地点に着いてから1時間後にA地点に引き返した。
船Qについて
・船PがA地点を出発してから1時間後に、B地点を出発した。
・A地点に着いてから30分後にB地点に引き返した。
・B地点へ向かう途中で故障したので、川の流れと同じ速さで流れ、予定していた時刻よりも1時間40分おくれてB地点に着いた。
(3)船QがB地点を出発してB地点にもどってくるまでにかかった時間は、何時間何分ですか。途中の式や考え方なども書きなさい。
(4)船Pと船Qは、船Qが故障するまでに2回すれちがいます。
① 1回目にすれちがう地点は、B地点から何㎞ですか。
② 2回目にすれちがう地点は、B地点から何㎞ですか。
(5)船Qが故障した地点は、B地点から何㎞ですか。
(吉祥女子中学校 2023年 問題4)
【考え方】
(1)
30㎞÷2時間=15㎞/時 … 船Pの下りの速さ
30㎞÷3時間20分=9㎞/時 … 船Pの上りの速さ
(15㎞/時-9㎞/時)÷2=3㎞/時
答え 時速3㎞
(2)
30㎞÷2時間30分=12㎞/時 … 船Qの上りの速さ
12㎞/時+3㎞/時=15㎞/時
答え 時速15㎞
(3)
船QがA地点からB地点へ向かう様子をグラフに整理します。
15㎞/時+3㎞/時=18㎞/時 … 船Qの下りの速さ
30㎞÷18㎞/時=5/3時間=1時間40分 … 船QがA地点からB地点までにかかる時間(予定)
1時間40分+1時間40分=3時間20分 … 船QがA地点からB地点までにかかった時間
2時間30分+30分+3時間20分=6時間20分
答え 6時間20分
(4)
船Pと船Qが動く様子をグラフに整理します。
① グラフの中にある相似形を利用します。
1時間+2時間30分=3時間30分 … ア
2時間-1時間=1時間 … イ
ア:イ=3時間30分:1時間=7:2
↓
高さの比 ⑦:②
⑦+②=30㎞ → ①=10/3㎞
②=20/3㎞=6 2/3㎞
答え 6 2/3㎞
②
①と同じようにして求めます。
3時間20分-30分×2=2時間20分 … ウ
30分×2+1時間40分=2時間40分 … エ
ウ:エ=2時間20分:2時間40分=7:8
↓
オ:カ=⑦:⑧
⑦+⑧=30㎞ → ①=2㎞
⑧=16㎞
答え 16㎞
(5)
船Qは、はじめ時速18㎞で下り、途中から時速3㎞で流され、合計で3時間20分かかって30㎞を進んだことになりますから、つるかめ算が利用できます。
(18㎞/時×3時間20分-30㎞)÷(18㎞/時-3㎞/時)=2時間 … 時速3㎞で流されていた時間
3㎞/時×2時間=6㎞
答え 6㎞
本問は流水算の長文問題ですが、ひとつひとつの問いは基本レベルです。
わかっていること、わかったことを整理して順序よく解いていくことができるかも確認できますので、流水算の復習として解いてみましょう。
2問目は、時計算の基本問題です。
【問題】午後3時から午後4時までの間で、長針と短針が反対方向に一直線になる時刻は午後3時何分ですか。
(田園調布学園中等部 2023年 問題1-(9))
【考え方】
時計算の解き方は、はじめに「□時0分の絵をかく」ことが基本です。
次に、問題の条件を書き加えます。
最後に、長針が動いた角の大きさと短針が動いた角の大きさの差に着目します。
(長針が動いた角の大きさ)-(短針が動いた角の大きさ)=90+180=270(度)
長針は1分間に6度、短針は1分間に0.5度動きますから、その差は11/2 度/分です。
270度÷11/2 度/分=540/11分=49 1/11分
答え (午後3時)49 1/11分
本問は、時計算の解き方の基本が確認できる問題です。
基本は上記のように「2針とも動かす」ですが、「遅い方の短針を止め、長針を毎分11/2度動かす」という解き方もできます。
(90度+270度)÷11/2度/分=540/11分
最後は、時計算の応用問題を見ていきます。
【問題】短針と長針がある普通の時計に、一定の速さで反時計回りに回る特別な針Aを取り付けて、3本の針が回転する様子を観察しました。4時に針Aと長針が重なっている状態から観察を始めたところ、長針と短針の作る角が初めて直角になるのと同時に、針Aと長針を作る角が初めて180度になりました。このとき、次の問いに答えなさい。ただし、答えは整数か帯分数で答えなさい。
(1)針Aが一周するのに何分かかりますか。
(2)図のように12と5の間にある針Aが、初めて短針と長針の作る角を2等分するのは4時何分ですか。
(白百合学園中学校 2023年 問題4)
【考え方】
(1)
短針を止めて、長針と針Aが動く様子を絵にします。
30度×4-90度=30度 … 長針と短針の動いた角の大きさの差(左図)
30度÷11/2度/分=60/11分 … 長針と短針が直角になるまでの時間
長針と針Aは60/11分で合わせて180度動いています。(右図)
180度÷60/11分=33度/分 … 長針と針Aの速さの和
33度/分-6度/分=27度/分 … 針Aの速さ
360度÷27度/分=40/3分=13 1/3分
答え 13 1/3分
(2)
「真ん中シャドー解法」を用います。
4時ちょうどに、長針と短針の真ん中にある針(シャドー)は4時10分を指しています。
例えば、4時10分になると下の図のようになりますから、シャドーが動く速さは
65度÷2÷10分=3.25度/分
です。
さらに、針Aとシャドーの動きを絵にします。
針Aとシャドーは重なるまでに合わせて
360度-30度×2=300度
動きます。
300度÷(27度/分+3.25度/分)=1200/121分=9 111/121分 … 針Aとシャドーが重なるまでの時間
シャドーは長針と短針の真ん中にありますから、針Aとシャドーが重なると針Aも長針と短針の真ん中にあります。
ですから、4時9 111/121分に針Aが長針と短針が作る角を初めて2等分します。
答え (4時)9 111/121分
本問は時計算の応用問題です。
(1)では、「短針を止める」解き方を利用すると絵がかきやすく、方針も立てやすくなると思います。
(2)は「シャドー解法」が使えることに気づけると解きやすいと思いますが、なかなかの難問ですから、時計算が苦手な場合は「パス」しても構わないでしょう。
今回は、2023年度の女子中の入試で出された流水算の長文問題と時計算の問題をご紹介しました。
3問目の小問2を除くとこれまでに習ってきたことを使えるかが確認できますので、もし正解できない問題があれば、すぐに基本の復習をしましょう。