第643回 女子中の入試問題 速さ 2
「第643回 女子中の入試問題 速さ 2」
前回から、2023年度に女子中で出された「速さ」の問題を取り扱っています。
前回に続いて今回も、「速さ」の一行問題を見ていきます。
1問目は、基本レベルの問題です。
【問題】晃子さんは、毎朝同じ時刻に学校に着くように登校しています。8時ちょうどに家を出たときは、分速60mで歩き、8時5分に家を出たときは、分速90mで歩きます。晃子さんが学校に着く時刻を求めなさい。
(晃華学園中学校 2023年 問題1-(3))
【考え方】
距離と時間がわかりませんから、速さの3公式では解けません。
そこで、「晃子さんの家から学校までの距離を、速さの最小公倍数の180m」と仮定します。
180m÷60m/分=3分 … 8時に家を出たときにかかる時間
180m÷90m/分=2分 … 8時5分に家を出たときにかかる時間
3分-2分=1分 … 距離が180mのときにかかる時間の差
8時5分-8時=5分 … 本当の時間の差
5分÷1分=5倍
本当にかかる時間の差が180mのときの5倍ですから、距離も時間も仮定の5倍とわかります。
8時+3分×5=8時15分
答え 8時15分
【別解】… 比の利用
距離が家から学校までで一定ですから、速さの比と時間の比は逆比の関係です。
速さの比 60m/分:90m/分=2:3
↓
時間の比 ③:②
③-②=①=5(分)
5分×3=15分 … 60m/分のときにかかる時間
8時+15分=8時15分
本問は、速さの3公式が使えないときの解き方が確認できる問題です。
比を習っていなければ「距離を仮定」して、比を習っていれば「速さと比の関係」を利用して解きましょう。
2問目も、基本レベルの問題です。
【問題】家から公園まで2400mあります。姉は走って家と公園を往復し、妹は姉が家を出るのと同じ時刻に公園を出発して家まで一定の速さで歩きます。姉は、家から公園まで毎分200mの速さで行き、公園から家までは行きの0.8倍の速さで帰りました。妹は家から1120mのところで姉にぬかれ、姉よりも( )分( )秒遅れて家に着きました。( )の中にあてはまる数を求めなさい。
(香蘭女学校中等科 2023年 問題1-(14) 問題文一部変更)
【考え方】
速さ以外の条件が距離条件ですから、線分図に整理します。
200m/分×0.8=160m/分 … 姉の帰りの速さ
妹が姉に追い抜かれるまでの様子は次のように表せます。
2400m÷200m/分=12分 … ●~○
(2400m-1120m)÷160m/分=8分 … ○~□
12分+8分=20分 … ●~□
ここまでにわかったことを線分図に書き込みます。
(2400m-1120m)÷20分=64m/分 … 妹の速さ
2400m÷64m/分=37.5分 … 妹が公園から家までにかかる時間
12分+2400m÷160m/分=27分 … 姉が家と公園を往復する時間
37.5分-27分=10.5分 → 10分30秒
答え 10(分)30(秒)
本問は、線分を使った条件整理の基本が確認できる問題です。
「同時マーク(●や□など)」を線分図に書くと、かかる時間をまちがいにくくすることができます。
では、3問目です。
【問題】姉と妹が家を同時に出発して駅に向かいました。家から駅までの道のりのちょうど中間の地点にはポストがあります。姉はポストまでは時速6㎞で行き、郵便物を入れてすぐに時速4㎞で駅に向かいました。妹は家から駅まで一定の速さで歩いたところ、姉と同時に駅に着くことができました。妹が歩いた速さを求めなさい。
(学習院女子中等科 2023年 問題2)
【考え方】
速さ以外の条件は、距離条件が「ちょうど中間の地点」の1つ、時間条件が「同時に出発して同時に着く」の1つですから、線分図でもダイヤグラムのどちらに整理してもOKです。
ここでは線分図を利用してみます。
速さの3公式が使えませんので、家からポストまでの距離(=ポストから駅までの距離)を姉の速さの最小公倍数の12㎞と仮定します。
12㎞÷6㎞/時=2時間 … 姉が家からポストまでにかかる時間
12㎞÷4㎞/時=3時間 … 姉がポストから駅までにかかる時間
2時間+3時間=5時間 … 姉妹が家から駅までにかかる時間
ここまでにわかったことを、線分図に書き込みます。
(12㎞×2)÷5時間=4.8㎞/時
答え 時速4.8㎞
【別解】… 比の利用
6㎞/時×②時間×2=㉔㎞ … 家から駅までの距離
②時間+③時間=⑤時間 … 妹が家から駅までにかかる時間
㉔㎞÷⑤時間=4.8㎞/時
※ 姉の「時間の比」がわかった後、もう一度、「速さと比の関係」を利用するとき方もあります。
6/㎞時×(4/5)=4.8㎞/時
本問は、今回の1問目と2問目の融合問題です。
条件を線分図に整理し、「距離を仮定する」または「速さと比の関係」を利用すると解くことができます。
もし、まちがえるようでしたら、1問目または2問目に戻って解き方を確認しましょう。
今回も前回に引き続き、2023年度の女子中の入試で出された「速さの一行問題」をご紹介しました。
問題に用いる解法は3問とも基本レベルですので、正解できなかったときはすぐに復習をしましょう。