第632回 共学中の入試問題 場合の数 2
「第632回 共学中の入試問題 場合の数 2」
前回から、近年の共学中入試で出された「場合の数」の問題について考えています。
今回取り扱うのは、大問形式の「場合の数」です。
さっそく1問目から見ていきましょう。
【問題】次の問いに答えなさい。
(1)下の図1で、6本の直線A、B、C、D、E、Fは平行です。この6本の直線から2本の直線を選ぶとき、その選び方は全部で何通りありますか。
(2)下の図2で、6本の直線A、B、C、D、E、Fは平行で、さらにこれらと交わる3本の直線G、H、Iも平行です。図2の中に平行四辺形は全部でいくつありますか。
(法政大学中学校 2023年 問題3 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
「組み合わせ」の問題です。
1本目の選び方は6通り、2本目の選び方は5通りありますから、
6通り×5通り=30通り
の組み合わせがあります。
その組のうち、例えば、
(1本目、2本目)=(A、B)、(B、A)
の2つの組は、どちらも同じ直線の組ですから1通りとして数えることになります。
ですから、選び方は全部で
30通り÷2=15通り
です。
答え 15通り
(2)
平行四辺形は2組の平行な直線で囲まれた図形ですから、「A~Fから選んだ2本の直線」と「G~Iから選んだ2本の直線」によって作られます。
A~Fから選ぶ2本の直線は、(1)より15通りあることがわかっています。
G~Iから2本の直線を選ぶことは、選ばない直線を1本決めることと同じですから、G、H、Iのいずれかを選ばない3通りです。
ですから平行四辺形は全部で
15通り×3通り=45通り
あります。
答え 45個
本問は、(1)が組み合わせの基本、(2)は四角形の個数の数え方の知識が確認できる問題です。
いずれも基本レベルですので、解けなかったり忘れていたりしたときは、すぐに復習をしておきましょう。
2問目は「点の移動と場合の数」の問題です。
【問題】次の図のようなすべての辺の長さが等しい三角すいOABCがあります。点Pは三角すいの頂点のいずれかにあり、1秒ごとに隣り合う点に移動します。点Pが頂点Oから出発するとき、次の各問いに答えなさい。
(1)点Pが出発してから3秒後に点A、B、C、Oにあるような移動の仕方はそれぞれ何通りですか。
(2)点Pが出発してから4秒後に点Oにあるような移動の仕方は何通りですか。
(3)点Pが出発してから5秒後に点Oにあるような移動の仕方は何通りですか。
(山手学院中学校 2023年 問題7)
【考え方】
(1)
はじめに、3秒後にOにあるような移動の仕方を考えます。
3秒後にOにあるためには、2秒後にAまたはBまたはCにあることが必要です。
Oを出発して2秒後にAにあるような移動の仕方は2通りあります。
同様に、Oを出発して2秒後にBやCにあるような移動の仕方もそれぞれ2通りありますから、3秒後にOにあるような移動の仕方は全部で
2通り×3=6通り
です。
次に、3秒後にAにあるような移動の仕方を考えます。
3秒後にAにあるためには、2秒後にOまたはBまたはCにあることが必要です。
Oを出発して2秒後にOにあるような移動の仕方は3通りあります。
Oを出発して2秒後にBにあるような移動の仕方は2通りあります。
同様に、Oを出発して2秒後にCにあるような移動の仕方も2通りありますから、3秒後にOにあるような移動の仕方は全部で
3通り+2通り×2=7通り
です。
同様に、Oを出発して3秒後にBまたはCにあるような移動の仕方も、それぞれAと同じく7通りあります。
答え A 7通り、 B 7通り、 C 7通り、 O 6通り
(2)
4秒後にOにあるためには、3秒後にAまたはBまたはCにあることが必要です。
ですから(1)の結果を利用すると、
7通り×3=21通り
とわかります。
答え 21通り
(3)
5秒後にOにあるためには、4秒後にAまたはBまたはCにあることが必要です。
4秒後にAにあるためには、3秒後にOまたはBまたはCにあることが必要です。
ですから(1)の結果を利用すると、
6通り+7通り×2=20通り
とわかります。
同様に、4秒後にBまたはCにあるような移動の仕方もそれぞれ20通りあります。
よって、5秒後にOにあるような移動の仕方は全部で
20通り×3=60通り
です。
答え 60通り
本問は、「1つ前の利用」という考え方を応用する難しい問題です。
Oが出発点なので、AとBとCが同じだけ場合の数があることも利用しましょう。
なお、次のように「ある点への行き方は隣り合う点からの場合の数の和(1・1解法)」を1秒ごとに書く解き方もあります。
最後は「すごろく」の問題です。
【問題】1から6までの目があるサイコロを使って下のような双六をします。
コマは最初スタートの位置にあり、1回サイコロを振るたびに出た目の数だけコマを進め、ゴールにちょうどついたとき【あがり】とします。ただし、コマがゴールにちょうど止まれずに越えてしまうときは、その振った回は考えずに振り直しをすることにします。例えば、
1回目 5の目 → 5□に進む
2回目 3の目 → 振り直し
再度2回目 1の目 → ゴール□
この場合サイコロの目の出方は、1回目に5の目、2回目に1の目が出て【あがり】と考えます。
(1)サイコロを何回か振ったところ、コマが4□のマスに止まりました。このようなサイコロの目の出方は何通りありますか。ただし、4□のマスに止まって以降のことは考えないことにします。
(2)サイコロを何回か振ったところ、【あがり】となりました。このようなサイコロの目の出方は何通りありますか。
(3)双六を下のように、4□のマスを4.スタートに戻る(初めて止まったときのみ)□と作り変えました。
このとき、【あがり】までのサイコロの目の出方は何通りありますか。
(芝浦工業大学柏中学校 2023年 問題6)
【考え方】
(1)
出た目の数の和が4になる場合です。
振った回数が1回のとき … (4)の1通り
振った回数が2回のとき … (1、3)、(2、2)、(3、1)の3通り
振った回数が3回のとき … (1、1、2)、(1、2、1)、(2、1、1)の3通り
振った回数が4回のとき … (1、1、1、1)の1通り
1+3+3+1=8(通り)
答え 8通り
(別解)
次のように4を○○○○で表し、切れ目∧で切るまたは切らないを選びます。
○∧○∧○∧○
例えば、左から1つ目の∧だけで切る(○∧○○○)と、それは「1回目の目が1、2回目の目が3」を表します。
3つの∧について「切る」「切らない」の選び方(=目の出方)は
2通り×2通り×2通り=8通り
あります。
(2)
(1)の別解の考え方を利用します。
出た目の数の和が6になる場合ですから、
○∧○∧○∧○∧○∧○
を用いて考えることができます。
∧は5つありますから、選び方は
2通り×2通り×2通り×2通り×2通り=32通り
あります。
答え 32通り
(3)
場合分けをします。
4.スタートに戻る(初めて止まったときのみ)□(以下★)に止まるとき
(1)より★に止まるような目の出方は8通りあります。
ですから★に止まった後、スタートに戻ってゴールするような目の出方は
8通り×32通り=256通り
です。
★に止まらないとき
もとの双六で考えます。
必ず4□に止まるような目の出方は8通りあり、4□から【あがり】までの目の出方は「1+1」または「2」の2通りありますから、
8通り×2通り=16通り
の【あがり】方があります。
(2)より【あがり】方は全部で32通りとわかっていますから、★に止まらない【あがり】方は
32通り-16通り=16通り
です。
よって、作り変えた双六の【あがり】方は全部で
256通り+16通り=272通り
あります。
答え 272通り
本問は、場合分けがポイントになっています。
また、(1)、(2)は書き出しでも答えが出せますが、(3)は(1)、(2)の誘導の利用が求められる問題でした。
今回は、2023年度の共学中の入試で出された大問形式の場合の数をご紹介しました。
難しい問題も含まれていますが、場合の数をある程度まで習い終えたら、計算方法や場合分けなどの練習としてチャレンジしてみましょう。