第631回 共学中の入試問題 場合の数 1
「第631回 共学中の入試問題 場合の数 1」
前回まで、近年の共学中入試で出された「立体図形」の問題を取り扱ってきました。
今回からは「場合の数」について考えていきます。
1回目の今回は「場合の数の一行問題」を見ていきます。
では、1問目です。
【問題】下の図のように、たて2列、横6列に並んだ合計12席の座席があります。その中から前後左右で隣り合わないように5席の座席を選ぶとき、選び方は何通りありますか。
(中央大学附属横浜中学校 2022年 問題1-(8) 問題文一部変更)
【考え方】
次のように、座席にA~Lの名前をつけておきます。
はじめに、必ずAの座席を選ぶ場合を考えます。
FとLの列を選ばないとき
1通り
EとKの列を選ばないとき
2通り
DとJの列を選ばないとき
2通り
CとIの列を選ばないとき
2通り
BとHの列を選ばないとき
2通り
ですから、必ずAの座席を選ぶ場合は
1+2×4=9(通り)
です。
同様に考えると、必ずGの座席を選ぶ場合も9通りあります。
最後に、AとGの列を選ばない場合を考えます。
2通り
よって、全部で
9×2+2=20(通り)
とわかります。
答え 20通り
本問は、問題の条件に従って順序よく調べていく力を確認できる問題です。
調べる過程で「×印より後ろについては2通りしかない」ことに気づいたときは、以下を省略して計算で答えを求めてもよいでしょう。
続けて、2問目です。
【問題】A、B、C、D、E、Fの6人は、文化祭のポスターを3人、2人、1人の3つの班に分かれてはります。そのとき、AとBは同じ班で、CとDは別々の班に分かれました。このとき、3人、2人、1人の分け方は何通りあるか答えなさい。
(東京農業大学第一高等学校中等部 2023年 問題4-(5))
【考え方】
「AとBは同じ班」なので、AとBが3人の班の場合と2人の班の場合について調べます。
●AとBが3人の班の場合
3人の班の3人目がCのとき
D、E、Fの内の誰か1人が1人の班になります。 → 3通り
3人の班の3人目がDのとき
C、E、Fの内の誰か1人が1人の班になります。 → 3通り
3人の班の3人目がEのとき
C、D、Fの内のCまたはDのどちらか1人が1人の班になります。 → 2通り
3人の班の3人目がFのとき
C、D、Eの内のCまたはDのどちらか1人が1人の班になります。 → 2通り
3×2+2×2=10(通り)
●AとBが2人の班の場合
CまたはDのどちらか1人が1人の班になります。 → 2通り
よって、全部で
10+2=12(通り)
の分け方があります。
答え 12通り
本問は、いくつかある問題の条件のうちの1つに着目して場合分けをする力を確認できる問題です。
解答例以外の解き方として、CとDの2人が3人の班や2人の班で同じにならないことに着目する方法もあります。
●Cが3人の班、Dが2人の班の場合
AとBが3人の班になり、EとFは2人の班と1人の班に分かれるので2通りです。
●Cが3人の班、Dが1人の班の場合
AとBが3人の班のとき、EとFは2人の班になるので1通りです。
AとBが2人の班のとき、EとFは3人の班になるので1通りです。
●Cが2人の班、Dが1人の班の場合
AとBが3人の班になり、EとFは3人の班と2人の班に分かれるので2通りです。
2+1+1+2=6(通り)
上記について、CとDを入れかえることもできますから、全部で
6×2=12(通り)
です。
それでは、今回の最後の問題です。
【問題】5色の絵の具をすべて使って、立方体の各面をぬります。ただし、どの面も1色のみでぬり、隣り合う面は異なる色でぬります。回転させて同じ配色になるぬり方は1通りと考えるとき、ぬり方は全部で何通りありますか。
(三田国際学園中学校 2022年 問題1-(5) 問題文一部変更)
【考え方】
立方体には6つの面がありますから、どれか1色は向かい合う2面を塗るのに使われます。
この面に使う絵の具の選び方は5通りあります。
残りの4つの側面を下の図のようにア→イ→ウ(上から見て時計回り)の順にA、B、C、Dの4色で塗ると、4色を塗る順番は
4×3×2×1=24(通り)
あります。
しかし、この問題には「回転させて同じ配色になる塗り方は1通り」という条件もありますので、下の4つの図の塗り方は「4つとも同じ塗り方=1通り」となります。
24÷4=6(通り)
上下の面の塗り方が5通り、4つの側面の塗り方が6通りですから、
5×6=30(通り)
の塗り方があるように思われます。
しかし、上から見て時計回りにA→B→C→Dと塗った場合(下左図)と時計回りにA→D→C→Bと塗った場合(下右図)は、立方体を上下逆さまにすると同じ配色になります。
よって、5色で立方体の6つの面を塗る場合の数は全部で
30÷2=15(通り)
です。
答え 15通り
本問は「立体図形の塗り分け」の考え方が確認できる問題です。
この「立体図形の塗り分け」の問題は「順列」、「円順列」、「じゅず順列」などの知識が必要な、場合の数の定番問題の中でも難しい部類に入ります。
これを苦手としているようでしたら、家庭学習では解答例のように実際に図をかき、式との関係を自分なりに納得できる学習をしてみましょう。
今回は、2022年度と2023年度の共学中の入試で出された「場合の数の一行問題」をご紹介しました。
場合の数の問題は、1、2問目のように基本レベルの問題でも場合分けをして調べる力が必要なものがありますし、3問目のように少し難しめの知識を必要とする定番問題もあります。
今回の問題でもし正解できなかったときは、樹形図などの書き出し、場合分け、計算公式などそれぞれの知識について、使っているテキストの基本問題を使って見直しをしてみましょう。