第627回 共学中の入試問題 立体図形 3
「第627回 共学中の入試問題 立体図形 3」
ここまで、近年の共学中入試で出された「立体図形」について考えています。
今回は、「回転体」と「立体図形の切断」について見ていきます。
1問目は、前回のおさらいができる回転体の問題です。
【問題】下の図のような1辺の長さが4㎝の正方形ABCDがあります。点P、Qはそれぞれ辺AB、BC上の点で、AP=CQ=3㎝、DP=DQ=5㎝です。このとき、次の問いに答えなさい。(円周率は3.14)
(1)三角形QCDを、辺CDを軸として1回転させてできる立体について考えます。
① この立体の体積を求めなさい。
② この立体の表面積を求めなさい。
(2)四角形PBQDを、辺CDを軸として1回転させてできる立体の表面積を求めなさい。
(江戸川学園取手中学校 2022年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
問題の条件を図に表します。
図より、できる立体は底面の半径が3㎝、高さが4㎝、母線の長さが5㎝の円すいとわかります。
①
3㎝×3㎝×3.14×4㎝÷3=37.68㎤
答え 37.68㎤
②
3㎝×3㎝×3.14=9㎠×3.14 … 底面積
5㎝×3㎝×3.14=15㎠×3.14 … 側面積
9㎠×3.14+15㎠×3.14=75.36㎠
答え 75.36㎠
(2)
問題の条件を図に表します。
↓
見取り図から、できる立体は円すいと円柱を組み合わせた立体から内部の円すいを取り除いたものとわかります。
5㎝×4㎝×3.14=20㎠×3.14 … 円すいの側面積(外側)
4㎝×2×3.14×1㎝=8㎠×3.14 … 円柱の側面積
4㎝×4㎝×3.14-3㎝×3㎝×3.14=7㎠×3.14 … 底面積
5㎝×3㎝×3.14=15㎠×3.14 … 円すいの側面積(内側)
20㎠×3.14+8㎠×3.14+7㎠×3.14+15㎠×3.14=157㎠
答え 157㎠
本問は、平面図形の回転の基本が確認できる問題です。
大問形式となっていますが考え方は基本通りですから、もし正解できなかったときは前回に取り扱った問題などで復習をしてみましょう。
2問目は「立体図形の回転」に関する問題です。
【問題】下の図のような一辺の長さが1㎝の立方体があります。この立方体を辺GCを軸として1回転させたとき、側面ADHEが通過してできる立体の体積を求めなさい。(円周率は3.14)
(芝浦工業大学附属中学校 2023年 問題3-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
立体図形の場合も「回転の軸から最も遠い点と最も近い点の動きに着目」します。
上の見取り図を矢印の向きから見たときの投影図をかきます。
図より、回転軸から最も遠い点はE(A)、最も近い点はH(D)とわかります。
これらの点はGCを軸として1回転すると円をえがきますから、側面ADHEが通過してできる立体は円柱(大)から円柱(小)を取り除いた立体とわかります。
GE=□㎝として正方形EFGHの面積を表すと、
□㎝×□㎝÷2=1㎝×1㎝
なので
□×□=2
です。
(□㎝×□㎝×3.14-1㎝×1㎝×3.14)×1㎝=3.14㎤
答え 3.14㎤
本問は立体図形の回転の基本が確認できる問題です。
立体図形を回転させるときは、回転の軸を「真上からのぞき込む」ようにして投影図をかくと、最も遠い点や最も近い点が見つかります。
3問目は「断頭円柱(切断された円柱)」の問題です。
【問題】底面の直径が8㎝の円柱を斜めに2回切断し、図のような立体を作りました。この立体の体積を求めなさい。ただし、円周率は3.14とします。
(帝京大学中学校 2022年 問題2-(7))
【考え方】
円柱や立方体、直方体を切断してできる立体では、「高さの平均=向かい合う高さの平均」という考え方が利用できます。
本問の場合は、次のようになります。
ですから、求める立体の体積は、円柱アの体積から円柱イの体積を引いたものになります。
8㎝÷2=4㎝ … 底面の半径
4㎝×4㎝×3.14×4㎝-4㎝×4㎝×3.14×1.5㎝=125.6㎤
答え 125.6㎤
本問は、切断された円柱や立方体、直方体の体積の求め方が確認できる問題です。
なお、等積変形を利用すると、高さ5㎝の円柱を半分に切った立体と考えることもできます。
では、もう1問、切断の問題を見ていきます。
【問題】下の図のような立方体ABCD-EFGHがあります。三角すいB-DEGと三角すいA-CFHが重なった部分の立体の面の数はいくつあるか求めなさい。
(広尾学園中学校 2022年 問題1-(5) 問題文一部変更)
【考え方】
2つの三角すいを別々の図にかきます。
「立体の重なり」は、「一方の立体を他方の立体の面で切断する」のように考えることができます。
はじめに、三角すいB-DEGを三角すいA-CFHの面ACFで切断します。
辺BDと辺AC、辺BEと辺AF、辺BGと辺CFが交わりますので、その交点をそれぞれP、Q、Rとすると、三角すいB-DEGは面PQRで切断されることがわかります。
同じように、三角すいB-DEGを三角すいA-CFHの残りの面で切断します。
以上から、三角すいB-DEGと三角すいA-CFHが重なった部分の立体は、次のような正八面体とわかります。
答え 8面
本問は、立体図形の重なりの考え方が確認できる問題です。
考えやすい立体の場合はそのまま2つの立体を重ねた図にしてもかまいませんが、その図でイメージがうまくできないような問題は、今回のように「(立体の)面で切断する」と考えるようにします。
このとき、立体の面と切断する面が交わる直線をかき入れることが大切なポイントです。
なお、「面が4つある三角すいを4回切断したとき、もとの三角すいの4つの面の一部分がそれぞれ残り、さらに切断によって新たに面が4つできるので、合わせて8面の立体ができる」のように考えることもできます。
今回は、2023年度と2022年度の共学中入試で出された「立体の回転」と「立体の切断」の問題をご紹介しました。
いずれの問題を解くときも、立体を見る向き、図に何をかくかということが重要です。
家庭学習で問題を解くときに試行錯誤しながら自分の手で図をかき、その練習を通じて作図力をつけていけるといいですね。