第623回 共学中の入試問題 平面図形 5
「第623回 共学中の入試問題 平面図形 5」
前回は、近年の共学中入試で出された「平面図形」の問題の中から「辺の比と面積比」について見ました。
今回は「図形の移動」の問題を取り扱っていきます。
1問目は「平行移動」の問題です。
【問題】下の図のように、直角二等辺三角形と長方形が並んでいます。下の図の状態から、直角二等辺三角形は直線m上を毎秒1㎝の速さで矢印の方向へ動き、そのとき2つの図形が重なった部分の面積について考えます。ただし、長方形は動かないものとします。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)直角二等辺三角形が動き始めてから2秒後の重なっている部分の面積を求めなさい。
(2)直角二等辺三角形が動き始めてから6秒後の重なっている部分の面積を求めなさい。
(3)重なっている部分の面積が5㎠となるのは直角二等辺三角形が動き始めてから何秒後と何秒後ですか。
(江戸川学園取手中学校 2023年 問題3)
【考え方】
(1)
直角二等辺三角形は問題図の位置から
1㎝/秒×2秒=2㎝
動きます。
このとき、移動する図形の1点(○)を先にかいておくと、図形全体がかきやすくなります。
重なっている部分(赤色三角形)は直角二等辺三角形ですから、ア=2㎝です。
2㎝×2㎝÷2=2㎠
答え 2㎠
(2)
直角二等辺三角形は問題図の位置から
1㎝/秒×6秒=6㎝
動きます。
6㎝-5㎝=1㎝ … イ
より、赤色三角形は等しい辺の長さが1㎝の直角二等辺三角形です。
また、水色三角形は等しい辺の長さが2㎝の直角二等辺三角形です。
2㎝×5㎝-(1㎝×1㎝÷2+2㎝×2㎝÷2)=7.5㎠
答え 7.5㎠
(3)
5㎠は(1)の重なりよりも大きく、(2)の重なりよりも小さいですから、1回目に5㎠になるのは(1)と(2)の間、2回目に5㎠になるのは(2)の後とわかります。
5㎠-2㎠=3㎠ … ウ
3㎠÷2㎝+2㎝=3.5㎝ … エ
3.5㎝÷1㎝/秒=3.5秒後 … 1回目
1回目に重なっている部分と2回目に重なっている部分は合同な図形ですから、オ=3.5㎝です。
5㎝+6㎝-3.5㎝=7.5㎝ … カ
7.5㎝÷1㎝/秒=7.5秒後 … 2回目
答え 3.5秒後と7.5秒後
本問は、図形の平行移動の基本が確認できる問題です。
図形の平行移動では、移動する図形の1点に着目すると正確な図がかきやすくなります。
もし正解できなかったときは、2つの図形の辺が交わる点や図形の頂点の位置が正しくかけているかをチェックしましょう。
また、慣れないうちは、方眼用紙を利用して練習してもよいと思います。
2問目は「転がり移動」の問題です。
【問題】1辺の長さが2㎝の正方形ABCDと1辺の長さが4㎝の正三角形EFGがあります。最初は図のように点Cと点Fの位置が一致し、点Dは辺EF上にあります。ここから正方形ABCDが正三角形EFGの周りを辺FE、EG、GFに沿って矢印の向きにすべることなく回転しながら正方形のそれぞれの頂点が元の位置になるまで移動を続けます。このとき、点A、B、C、Dのうち、点Gを通る点をすべて記号で答えなさい。
(東京農業大学第一高等学校中等部 2023年 問題3-(1))
【考え方】
正方形ABCDが転がる様子を順にかいてもよいのですが、この問題では「頂点が動いてできる線の長さ」は求めないので、次のように工夫することができます。
上の数直線の左端の目もりを0とすると、Gは8、20、32、…の目もりのところに書くことになります。
一方、正方形の頂点の目もりは、C=0、D=2、A=4、B=6、C=8、…となります。
これは
G=8+12×□(12で割ると8余る数)
A=4+8×□(8で割ると4余る数)
B=6+8×□(8で割ると6余る数)
C=0+8×□(8の倍数)
D=2+8×□(8で割ると2余る数)
と言い換えることができます。
表より、点Gを通る頂点はAとCだけとわかります。
答え AとC
本問は、図形が転がるときに図形の頂点が規則的に並ぶことから、数の性質の考え方が利用できる問題です。
問題図に転がっていく正方形を順にかいて解くことができたときは、別解として上記のような考え方ができることも知っておきましょう。
3問目も「転がり移動」の問題です。
【問題】図2のように、3辺の長さが6㎝、8㎝、10㎝の直角三角形を2つ組み合わせた長方形があります。直角三角形ABCが、斜線部分の直角三角形の外側をすべらずに転がりながら1周して、もとの位置にもどりました。このとき、点Aが通ったあとの線の長さを求めなさい。
(成蹊中学校 2022年 問題2-(6))
【考え方】
本問は「線の長さ」を求めますので、問題図に転がる様子を順にかいていきます。
このとき、直角三角形の角に○、×(○+×=90度)も書いておくと、回転する角の大きさがわかりやすくなります。
10㎝×2×π×(270度/360度)=15㎝×π … 1回目の転がり
8㎝×2×π×(90度/360度)=4㎝×π … 2回目の転がり
6㎝×2×π×(90度/360度)=3㎝×π … 3回目の転がり
4回目の転がりでは点Aは回転の中心なので、動きはありません。
(15㎝+4㎝+3㎝)×3.14=69.08㎝
答え 69.08㎝
本問は転がり移動の作図が確認できる問題です。
どの点を中心に回転するかを考え、移動した図形の頂点に記号を書くようにすると、正解しやすいでしょう。
今回は、近年の共学中の入試で出された「図形の移動」の問題をご紹介しました。
いずれの問題も正確な作図が重要です。
苦手なときは、方眼用紙やコンパスを用いたり、実際に切った紙を使ったりして、まずは図形の正確な動きを学んでいきましょう。