第616回 共学中の入試問題 速さ 4
「第616回 共学中の入試問題 速さ 4」
ここまで2022年度の共学中入試で出された「速さ」の問題について考えています。
「旅人算」、「通過算」に続き、今回は「流水算」の問題を見ていきます。
はじめは流水算の一行問題です。
【問題】ある川をボートで1.2㎞上るのに50分かかり、同じところを下るのに30分かかりました。静水時のボートの速さ、川の流れの速さはそれぞれ一定であるとすると、川の流れの速さは毎分何mですか。
(國學院大學久我山中学校 2022年 問題2-(5))
【考え方】
1.2㎞=1200m
1200m÷50分=24m/分 … 上りの速さ
1200m÷30分=40m/分 … 下りの速さ
上りの速さと下りの速さが求められたので、これらの関係を線分図に表します。
(40m/分-24m/分)÷2=8m/分
答え 毎分8m
本問は、流水算の整理方法の基本が確認できる問題です。
流水算が苦手なときはこの線分図をかき、それが読み取れるかをチェックしてみましょう。
では、2問目です。
【問題】毎時2㎞の速さで流れている川の下流のA地点から、5.6㎞上流のB地点まで船で向かいました。途中でエンジンが止まって14分間流されたため、A地点を出発してから1時間6分後にB地点に着きました。静水時の船の速さは毎時何㎞ですか。ただし、エンジンが止まっている時以外は、静水時の船の速さは一定とします。
(成蹊中学校 2022年 問題2-(3))
【考え方】
距離条件が1つ、時間条件が2つで時間条件の方が多いですから、ダイヤグラムを利用して整理します。
どこで流されたかは問われていませんので、「スタート直後に流された」と仮定します。
2㎞/時×14/60時間=7/15㎞ … AC間
(5.6㎞+7/15㎞)÷(66/60時間-14/60時間)=7㎞/時 … 上りの速さ
「上りの速さ=静水時の速さ-流速」より、静水時の速さは
7㎞/時+2㎞/時=9㎞/時
です。
答え 毎時9㎞
本問は、速さの整理方法の基本と「エンジンが故障」したときの考え方が確認できる問題です。
正解できなかったときは、「スタート直後に流される(または、ゴールを過ぎてから流される)」という仮定ができているかをチェックしておきましょう。
続けて3問目です。
【問題】静水での速さが一定の船が川下のA地点と川上のB地点を往復しました。A地点からB地点までは5時間かかり、B地点からA地点までは3時間かかりました。川の流れの速さが時速3㎞のとき、A地点からB地点までの距離は何㎞ですか。
(中央大学附属横浜中学校 2022年 問題1-(6) 問題文一部変更)
【考え方】
「往復 → 上りと下りの距離が同じ」を利用します。
求めた上りの速さと下りの速さの比を線分図に表します。
線分図より、①=3㎞/時とわかります。
3㎞/時×3×5時間=45㎞
答え 45㎞
本問は、流水算の解き方の基本となる線分図と比を組み合わせることができるかを確認できる問題です。
比が関係してくるとうまく解けないときは、比を使わない流水算の基本問題が正解できるか、「速さと比」の練習問題が正解できるかの2点をチェックして、課題のありかを明確にしていきましょう。
最後は大問形式の問題を見ていきます。
【問題】船Pが、流れの速さが一定である川を25㎞下るのにかかる時間と、この川を5㎞上るのにかかる時間は同じです。ある日、船Pがこの川のA地点を出発して6㎞はなれたB地点までの間を往復するのに、行きの静水時の速さはいつもの静水時の速さに1 1/2倍に、帰りの静水時の速さはいつもの静水時の速さの2/3倍にしたところ、往復で1時間5分かかりました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)船Pのいつもの静水時の速さは、この川の流れの速さの何倍ですか。
(2)この川の流れの速さは毎時何㎞ですか。
(明治大学付属明治中学校 2022年 問題4)
【考え方】
(1)
前問で利用した比の整理方法を利用します。
わかったことを線分図に整理します。
線分図より、
流速=②
静水時の速さ=③
とわかります。
③÷②=1.5倍
答え 1.5倍
(2)
整数比で計算できるように、
静水時の速さ=6□
流速=4□
としておきます。
問題の条件だけではA地点とB地点のどちらが上流でどちらが下流かが分かりませんので、場合分けをして解いていきます。
・A地点が下流、B地点が上流にある場合
6□×3/2-4□=5□ … 上りの速さ(A→B)
6□×2/3+4□=8□ … 下りの速さ(B→A)
「往復 → 上りと下りの距離が同じ」より、速さの比と時間の比は逆比の関係です。
速さの比 上り:下り=5□:8□=5:8
↓
時間の比 上り:下り=⑧:⑤
和 ⑬=65/60時間
6㎞÷(65/60時間×⑧/⑬)=9㎞/時 … 上りの速さ
9㎞/時×4□/5□=7.2㎞/時 … 流速
・A地点が上流、B地点が下流にある場合
6□×3/2+4□=13□ … 下りの速さ(A→B)
6□×2/3-4□=0 … 上りの速さ → 不適当(B→A)
答え 毎時7.2㎞
本問の(1)は今回の3問目の応用、(2)は「場合分け」をして解く問題です。
(2)では、問題文が「行き」、「帰り」となっており、「上り」、「下り」になっていないことに注意して解きましょう。
今回は、2022年度に共学中の入試で出された「流水算」の問題をご紹介しました。
流水算の基本公式
・静水時の速さ-流速=上りの速さ
・静水時の速さ+流速=下りの速さ
・(下りの速さ+上りの速さ)÷2=静水時の速さ
・(下りの速さ-上りの速さ)÷2=流速
を学んだら、静水時の速さや流速が上りと下りで変化する問題にも対応できるように、速さの関係を整理する方法もマスターしておくとよいと思います。