第615回 共学中の入試問題 速さ 3
「第615回 共学中の入試問題 速さ 3」
前回は2022年度の共学中入試で出された「速さ」の中から「旅人算」がテーマの問題を取り扱いました。
今回は「通過算」の問題を見ていきます。
はじめは通過算の一行問題です。
【問題】春男さんは旅行に行くときに、駅のホームで新幹線や特急がたくさん通過する様子を見ました。その駅の1番ホームでは、長さ400mの新幹線が時速270㎞の速さで春男さんの前を通過しました。2番ホームでは、長さ100mの特急が時速90㎞の速さで春男さんの前を通過しました。新幹線と特急がそれぞれ春男さんの前を通過し始めてから通過し終わるまでの時間を比べると、どちらが何秒短いですか。ただし、この駅の各ホームでは、新幹線も特急も一定の速さで通過するとします。
(お茶の水女子大学附属中学校 2022年 問題2-2)
【考え方】
通過算は、通過する列車の1点の動きに着目することが解き方の基本です。
はじめに、新幹線の速さを秒速に直します。
270㎞/時×1000÷3600=75m/秒
次に、新幹線が通過する様子を絵にします。
新幹線の最後尾に着目すると、新幹線が400m進んで春男さんの前を通過したことが分かります。
400m÷75m/秒=16/3秒 … 新幹線が通過する時間
特急についても同じようにします。
90㎞/時×1000÷3600=25m/秒
100m÷25m/秒=4秒 … 特急が通過する時間
16/3秒-4秒=4/3秒
答え 特急が4/3秒短い
本問は、通過算の基本が確認できる問題です。
定番の問題ですから絵をかかなくとも解けますが、通過算が苦手なときはこのような基本問題の絵をかくことから始めて見ましょう。
次も通過算の基本問題です。
【問題】ある電車が320mの橋を通過するのに18秒、6160mのトンネルを通過するのに3分57秒かかりました。この電車の長さは何mですか。また、この電車の速さは時速何㎞ですか。
(明治大学付属中野八王子中学校 2022年 問題3-1)
【考え方】
前問と同様に、問題の条件を絵に表します。
このとき、通過し始める位置が縦にそろうようにかきます。
通過算の絵は線分図の一種なので、矢印(→)に着目します。
(6160m-320m)÷(237秒-18秒)=80/3m/秒 … 電車の秒速
80/3m/秒×18秒-320m=160m … 電車の長さ
80/3m/秒×3600÷1000=96㎞/時
答え 160m、時速96㎞
本問も、通過算の基本が確認できる問題です。
上記のように,絵を縦に並べてかくと考えやすくなります。
最後は、大問形式の問題です。
【問題】秒速30mで進む特急列車と秒速24mで進む普通列車があります。特急列車と反対の向きに走る普通列車は出会ってからすれ違い終わるのに5秒かかります。また、特急列車がトンネルに入り始めてから出終わるまでに45秒かかるところ、普通列車では55秒かかりました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)普通列車と特急列車の長さの合計は何mか求めなさい。
(2)トンネルの長さは何mか求めなさい。
(帝京大学中学校 2022年 問題3)
【考え方】
(1)
特急列車と普通列車がすれ違う様子を絵に表します。
それぞれの長さは分かっていませんから、ここでは特急列車の方が長いものと仮定します。
「列車のすれ違いは、最後尾の出会い」と考えると、上の図のように、特急列車と普通列車の長さの合計は、それぞれの列車が5秒間に進んだ距離の和に等しいことが分かります。
(30m/秒+24m/秒)×5秒=270m
答え 270m
(2)
それぞれの列車がトンネルを通過する様子を絵に表します。
このとき、トンネルの出口(→の終端)の位置をそろえることがポイントです。
通過算の絵は線分図の一種なので、ここでも矢印(→)に着目します。
30m/秒×45秒=1350m … 特急列車の矢印の長さ
24m/秒×55秒=1320m … 普通列車の矢印の長さ
図より、2つの矢印の長さの差と2つの列車の長さの差は同じですから、特急列車は普通列車よりも
1350m-1320m=30m
長いことが分かります。
(270m+30m)÷2=150m … 特急列車の長さ
1350m-150m=1200m
答え 1200m
本問は、通過算の条件を整理した絵の読み取りが確認できる問題です。
通過算の絵は線分図の一種ですから、線分図解法の基本である
① →に長さを書く
② →に長さの比を書く
が利用できないかを、はじめに考えるようにしましょう。
今回は2022年度の共学中入試で出された通過算の問題をご紹介しました。
ご紹介した問題はいずれも基本の解き方を使う問題ですので、習い終えていたらこれらを使って解き方の定着確認をしてみるとよいと思います。