第613回 共学中の入試問題 速さ 1
「第613回 共学中の入試問題 速さ 1」
ここまで2022年度の共学中入試で出された「比と割合」について見てきました。
今回からは「速さ」の問題について考えていきます。
その1回目のテーマは「速さの一行問題」です。
1問目は「速さの3公式」の基本問題です。
【問題】太郎くんと花子さんは3.2㎞はなれた地点AとBを往復します。太郎くんは、行きは毎時4㎞、帰りは毎時6㎞で歩きました。花子さんは行きも帰りも同じ速さで歩いたところ、太郎くんよりも往復で40分多くかかりました。花子さんの歩く速さはいくつですか。
(淑徳中学校 2022年 問題2-(2))
【考え方】
「速さ×時間=距離」が速さの問題の基本公式です。
3.2㎞÷4㎞/時=4/5時間 … 太郎くんが行きにかかった時間
3.2㎞÷6㎞/時=8/15時間 … 太郎くんが帰りにかかった時間
4/5時間+8/15時間+40/60時間=2時間 … 花子さんが往復にかかった時間
3.2㎞×2÷2時間=3.2㎞/時
答え 毎時3.2㎞
本問は「速さの3公式」の使い方と時間の単位換算が確認できる速さの基本問題です。
続けて2問目を見ていきます。
【問題】Mさんは、A町からB町まで一本道を休まずに歩きました。A町から途中のP地までは上り、P地からQ地までは平地、Q地からB町までは下りになっています。また、Mさんの上りの速さは毎時3㎞、平地の速さは毎時4㎞、下りの速さは毎時5㎞です。A町からB町まで歩いたときの平均の速さは毎時4.5㎞です。Mさんが上りと平地を歩くのに同じ時間がかかったとき、上りの道のりは全体の道のりの何倍ですか。
(明治大学付属明治中学校 2022年 問題1-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
具体的な数字が与えられているのは速さだけですから、「仮定や比を使う」という方針を立てます。
問題文の「上りと平地を歩くのに同じ時間がかかった」をそれぞれ1時間と仮定すると、次のような線分図をかくことができます。
速さの比 5㎞/時:4.5㎞/時=10:9
↓
距離の比 ⑩:⑨
差 ⑩-⑨=9㎞-(3㎞+4㎞)
①=2㎞
3㎞+4㎞+2㎞×10=27㎞ … 全体の道のり
3㎞÷27㎞=1/9
答え 1/9倍
本問は、速さの3公式が使えないときに仮定や比を使って解くことが確認できる問題です。
なお、仮定をする代わりに、3㎞/時、4㎞/時、4.5㎞/時で進む時間の比を1:1:2として解いてもOKです。
また、問題文中に「平均の速さ」という言葉があることから、次のような天びん法を利用した解き方を選ぶこともできます。
(別解)…天びん法の利用
(3㎞/時×①時間)÷(4.5㎞/時×⑥時間)=1/9(倍)
最後は「速さと比」の一行問題です。
【問題】Aさんは、待ち合わせの時刻ちょうどに着く予定で、自転車に乗って毎時10㎞の速さで家を出発しました。しかし、忘れ物に気づき、いったん家に戻りました。再び家を出発したのは最初に出発した時刻より5分遅れになってしまったため、毎時12㎞の速さで向かったところ、待ち合わせ時刻ちょうどに着きました。Aさんは、最初に家を出てから待ち合わせ場所に着くまで何分かかりましたか。
(法政大学中学校 2022年 問題2-(7) 問題文一部変更)
【考え方】
速さ以外の条件が「時間条件」ですから、ダイヤグラムに整理します。
「ダイヤグラムの5原則」は
① 相似
② 等高三角形
③ 二等辺三角形
④ 平行四辺形
⑤ “琵琶湖型”三角形
に着目するの5つです。
上のグラフを見ると「② 等高三角形」が見つかります。
赤線の直角三角形と水色斜線の直角三角形に着目します。
速さの比 10㎞/時:12㎞/時=5:6
↓
時間の比 ⑥:⑤
⑥-⑤=5分
①=5分
5分×6=30分
答え 30分
本問は、「速さと比」の基本が確認できる問題です。
ここではグラフに整理しましたが線分図を利用しても構いませんし、条件が比較的少ないので条件整理を省略してすぐに比を利用して解いてもよいでしょう。
今回は、2022年度の共学中入試で出された速さの問題の中から、一行問題をご紹介しました。
いずれも速さの問題を解く上で必要な基本解法を用いていますので、正解できなかったときは類題を使っておさらいをしておきましょう。