第612回 共学中の入試問題 比と割合 7
「第612回 共学中の入試問題 比と割合 7」
前回は2022年度の共学中入試で出された「比と割合」から、「仕事算」について考えました。
今回はその応用となる「ニュートン算」について見ていきます。
1問目は、ニュートン算の基本問題です。
【問題】新しいゲームソフトの発売日に、ある店の前にはすでに108人が並んでいます。さらに、この行列に毎分6人の割合で人が並んでいきます。3つのレジで対応すると、この行列は18分でなくなりました。4つのレジで対応すると、この行列は何分何秒でなくなりますか。
(東京農業大学第一高等学校中等部 2022年 問題4-(1))
【考え方】
ニュートン算の基本的な解き方には、合計に着目する解き方と1分あたりなどの単位量に着目する解き方の2つがあります。
本問では、合計に着目する解き方を使ってみます。
1つのレジが1分間に対応する人数を□人とすると、次のような線分図に整理できます。
□人/分×3×18分=108人+6人/分×18分
□=4 … 1つのレジが1分間に対応する人数
次に、4つのレジで対応すると△分で行列がなくなることを線分図で表します。
4人/分×4×△分=108人+6人/分×△分
16×△=108+6×△
10×△=108
△=10.8(分)
10.8分=10分48秒
答え 10分48秒
本問は、合計に着目するニュートン算の解き方が確認できる問題です。
「合計が等しい」ことに着目するときは、上記のように線分図を利用すると考えやすくなります。
では、2問目です。
【問題】毎分10Lの割合で水そうに水を入れていきます。この水そうには2つの排水管A、Bがあり、AはBより1分あたり5L多く排水されます。水そうがいっぱいになったところで、Aのみで排水すると9分で、Bのみで排水すると24分で水そうは空になります。このとき、水そうの容量を求めなさい。ただし、排水管を開いてからも毎分10Lの割合で水を入れ続けています。
(市川中学校 2022年 問題1-(3))
【考え方】
今回は、単位量に着目する解き方を用いてみます。
はじめに、「全体の仕事量=時間の最小公倍数」と仮定すると、9と24の最小公倍数の72○が水そうの容量です。
72○÷9分=⑧/分 … 排水管Aの1分あたりの排水量-10L/分
72○÷24分=③/分 … 排水管Bの1分あたりの排水量-10L/分
⑧-③=5
①=1
1L×72=72L
答え 72L
本問は、全体の仕事量を時間の最小公倍数に仮定とするニュートン算の解法が確認できる問題です。
単位量に着目するときは全体の仕事量を時間の最小公倍数に仮定しますので、「水そう解法」を利用すると整理がしやすいです。
3問目は、大問形式のニュートン算の問題です。
【問題】水そうに給水管が1本ついていて、毎分14Lの水が入ります。また、この水そうの底に排水管が5本ついていて、どの排水管からも一定の割合で同じ量の水が出ます。はじめに、9時に何Lかの水が水そうに入っている状態で、給水管1本と排水管5本を同時に開け、9時10分に排水管1本を閉じ、9時20分にさらに排水管3本を閉じました。水そうに入っている水量を調べると、9時10分の水量は9時の水量の1/2で、9時20分の水量は9時の水量の1/3でした。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)排水管1本から毎分何Lの水が出ますか。
(2)9時の水量は何Lでしたか。
(3)水量が初めて200Lになるのは、何時何分ですか。ただし、水そうの容量は200L以上あるものとします。
(明治大学付属明治中学校 2022年 問題3)
【考え方】
(1)
問題の条件を「水そう解法」で整理します。
「水そう解法」は単位量に着目する解き方です。
□L/分×10分=9時の水量×(1-1/2)
↓
□L/分×20分=9時の水量
■L/分×10分=9時の水量×(1/2-1/3)
↓
■L/分×60分=9時の水量
よって、9時の水量を20と60の最小公倍数の60○と仮定できます。
30○÷10分=③/分 … □L/分
⑩÷10分=①/分 … ■L/分
差に着目します。
③/分-①/分=②/分 … 排水管1本が1分あたりに排水する水の量
毎分14Lの水を入れながら排水管5本を使って水を出すと、毎分③Lの水が減りますから
②/分×5本-14L/分=③/分
①=2
とわかります。
②=4(L/分)
答え 毎分4L
(2)
2×60=120(L)
答え 120L
(3)
120L×1/3=40L … 9時20分の水量
200L-40L=160L … 9時20分から増える水量
14L/分-4L/分×1本=10L/分 … 9時20分から1分あたりに増える水量
160L÷10L/分=16分
9時20分+16分=9時36分
答え 9時36分
本問は操作をしたときに水量が0にならないので、整理のしやすい「水そう解法」を用いましたが、「合計」を利用する解き方を選んでもOKです。
今回は、2022年度の共学中の入試問題の中から、ニュートン算の問題をご紹介しました。
ニュートン算は「邪魔の入る仕事算」と考えることができますので、ニュートン算が苦手なようでしたら、仕事算の2つの解法がマスターできているかをまずは確認しましょう。
その後、ニュートン算の2つの基本解法のいずれか一方を身につける練習をすると、正解できる問題が増えていくと思います。