第611回 共学中の入試問題 比と割合 6
「第611回 共学中の入試問題 比と割合 6」
ここまで、2022年度の共学中入試で出された「比と割合」から、「比と割合の一行問題」、「食塩水の濃さ」、「売買算」について考えました。
今回は「仕事算」の問題を取り上げます。
1問目は、「名前のある仕事算」の基本問題です。
【問題】ある仕事をするのにAさんは15時間、Bさんは12時間かかります。
① この仕事をはじめから最後まで2人で行うと何時間何分かかりますか。
② この仕事を最初にAさんだけで3時間行い、残りの仕事は2人で行いました。2人で仕事をしたのは何時間何分ですか。
(神奈川大学附属中学校 2022年 問題2-(3))
【考え方】
①
「名前のある仕事算」は、全体の仕事量を1または時間の最小公倍数に仮定することが基本の解き方です。
今回は、最小公倍数を利用した解き方をご紹介します。
15時間と12時間の最小公倍数の60○を全体の仕事量とします。
60○÷15時間=④/時間 … Aさんの1時間の仕事量
60○÷12時間=⑤/時間 … Bさんの1時間の仕事量
60○÷(④/時間+⑤/時間)=20/3時間
答え 6時間40分
②
仕事を前半と後半に分けていますので、線分図を利用すると条件がわかりやすくなります。
60○-④/時間×3時間=㊽ … Aさんが3時間行った後の残りの仕事量
㊽÷(④/時間+⑤/時間)=16/3時間
答え 5時間20分
本問は、「名前のある仕事算」の基本の解き方が確認できる問題です。
仕事算が苦手な場合はこのレベルで理解度のチェックをしてみましょう。
2問目です。
【問題】プールを満水にするのに、給水管Aでは4時間、給水管Bでは3時間かかります。また、排水管Cを使うと6時間で満水のプールの水をすべて排水できます。いま、空のプールに給水管A、Bを使って水を入れ、同時に排水管Cで水を出したとき、プールを満水にするのにかかる時間は何時間何分ですか。
(青山学院横浜英和中学校 2022年 問題1-(6) 問題文一部変更)
【考え方】
「名前のある仕事算」に「邪魔が入る」パターンですが、解き方は1問目と変わりません。
満水時のプールの水の量を、4時間、3時間、6時間の最小公倍数⑫と仮定します。
⑫÷4時間=③/時間 … 給水管Aが1時間に入れる水の量
⑫÷3時間=④/時間 … 給水管Bが1時間に入れる水の量
⑫÷6時間=②/時間 … 排水管Cが1時間に出す水の量
③/時間+④/時間-②/時間=⑤/時間 … A、B、Cを同時に使ったときに1時間に入る水の量
⑫÷⑤/時間=12/5時間
答え 2時間24分
本問は、「水を入れる」とその反対の「水を出す」が同時に起きる場合の考え方が確認できる問題です。
間違えたときは、「たす」、「ひく」が正しく使えているかをチャックしましょう。
続けて、3問目を見ていきます。
【問題】ある仕事を終わらせるのに、兄だけでは18日、弟だけでは24日、妹だけでは27日かかります。この仕事を兄、弟、妹の3人で同時に始めたところ、妹が何日間か休んだため、終わらせるのに8日かかりました。妹は何日間休みましたか。
(青陵中学校 2022年 問題2-(6) 問題文一部変更)
【考え方】
「名前のある仕事算」で「休み」があるパターンです。
「休み」がある仕事算は、面積図を利用すると考えやすいです。
全体の仕事量を日数の最小公倍数216○とすると、次のような面積図に表せます。
216○÷18日=⑫/日 … 兄が1日にする仕事量
216○÷24日=⑨/日 … 弟が1日にする仕事量
216○÷27日=⑧/日 … 妹が1日にする仕事量
216○-(⑫/日+⑨/日)×8日=㊽ … 妹がした仕事量
㊽÷⑧/日=6日 … 妹が仕事をした日数
8日-6日=2日間
答え 2日間
(別解)… つるかめ算の利用
「休み」のある問題は、「もし休まなければ」と仮定して解くこともできます。
(⑫/日+⑨/日+⑧/日)×8日-216○=⑯ … ★
⑯÷⑧/日=2日間
本問は、「名前のある仕事算」の「休み」がある問題の基本の解き方が確認できる問題です。
正解できなかったときは、面積図をかいて考えてみましょう。
では、4問目です。
【問題】ある仕事を、AとBとCの3人で行うとちょうど25日で終わり、AとBの2人で行うとちょうど40日で終わります。この仕事を、1日目はAとC、2日目はBとC、3日目はAとC、4日目はBとC、…というように、Cは毎日、AとBは1日ずつ交互に行うと、何日目の途中で仕事が終わりますか。
(明治大学付属明治中学校 2022年 問題1-(2) 問題文一部変更)
【考え方】
「名前のある仕事算」で「繰り返し」のあるパターンです。
「繰り返し」の問題は1周期を調べることが、解き方の基本です。
全体の仕事量を25日と40日の最小公倍数200○とします。
200○÷25日=⑧/日 … AとBとCが1日にする仕事量
200○÷40日=⑤/日 … AとBが1日にする仕事量
⑧/日-⑤/日=③/日 … Cが1日にする仕事量
仕事は「AとCは1日」、「BとCが1日」を繰り返しますから、1周期は2日間です。
200○÷⑪/周期=18周期あまり②
Cが1日にする仕事量は③ですから、あまりの②は周期の1日目にし終えます。
2日×18周期+1日=37日
答え 37日目
本問は「繰り返し」がある仕事算の基本が確認できる問題です。
「全体の仕事量を1」とする解き方で間違えるようでしたら、最小公倍数を用いた解法を試してみましょう。
最後に「名前のない仕事算」を1問見ておきます。
【問題】7人で毎日働いて24日かかる仕事があります。はじめの6日間は7人で行い、残りを2人増やして行うと、7人で毎日働くより何日早く終わりますか。
(明治大学付属中野八王子中学校 2022年 問題2-(3))
【考え方】
「名前のない仕事算」は、1人が1日にする仕事量(単位あたりの仕事量)を1と仮定することが基本の解き方です。
本問は仕事を前半と後半に分けていますので、1問目と同じように線分図で整理します。
1×7人×24日=168 … 全体の仕事量
1×7人×6日=42
168-42=126 … 残りの仕事量
126÷(1×9人)=14日
24日-(6日+14日)=4日
答え 4日
(別解)…比の利用
働く人数 7人:9人=7:9
↓
かかる日数 ⑨:⑦
⑨=24日-6日
①=2日
⑨-⑦=4日
本問は、「名前のない仕事算」の基本が確認できる問題です。
仕事算は名前のあるなしで解き方を使い分けると解きやすくなりますので、仕事算が苦手な場合はこの点をチェックしてみましょう。
今回は、2022年度に共学中入試で出された「仕事算」について考えました。
次回は「仕事算」の応用となる「ニュートン算」を取り扱う予定です。