第610回 共学中の入試問題 比と割合 5
「第610回 共学中の入試問題 比と割合 5」
2022年度の共学中入試で出された「比と割合」から、前回まで「食塩水の濃さ」の問題を取り扱ってきましたが、今回のテーマは「売買算」です。
1問目は、基本レベルの問題です。
【問題】ある商品の仕入れ値に3割の利益を見込んで定価をつけましたが、売れなかったので定価の1割引きで売り、4250円の利益がありました。この商品の仕入れ値はいくらでしたか。
(明治大学付属中野八王子中学校 2022年 問題2-(2))
【考え方】
「1個売り」の売買算です。
「1個売り」は、原価(仕入れ値)→定価→売価(値引き後の値段)の流れで整理することが、解き方の基本です。
・原価を□円とする場合
□円×(1+0.3)×(1-0.1)-□円=4250円
□円×1.17-□円=4250円
□円×0.17=4250円
□円=25000円
・原価を①円とする場合
①円×(1+0.3)×(1-0.1)-①円=4250円
①円=25000円
・比を利用する場合
117○円-100○円=4250円
⑰円=4250円
①円=250円
250円×100=25000円
答え 25000円
本問は、「1個売り」の売買算の基本が確認できる問題です。
正解できるときは、応用問題を解くときに備えて複数の解き方が使えるかもチェックしておきましょう。
では、2問目です。
【問題】原価が700円の商品を100個仕入れて、3割増で定価をつけて売ったところ70個売れました。残りの商品を定価の2割引ですべて売ると利益は全部で何円ですか。
(山手学院中学校 2022年 問題2-(2) 問題文一部変更)
【考え方】
「多数売り」の売買算です。
「多数売り」の解き方の基本は、表に整理することです。
表の空欄を埋めていきます。
「売上合計-仕入れ合計=総利益」ですから、
63700円+21840円-70000円=15540円
が答えです。
答え 15540円
(別解)
1個あたりの利益に着目します。
(910円-700円)×70個+(728円-700円)×30個=15540円
本問も基本レベルの問題で、「多数売り」の整理方法が確認できます。
条件が少ないので整理しなくても正解できる問題ですが、表を書くことができるかもチェックしてみましょう。
続けて、問題を見ていきます。
【問題】ある商品を200個仕入れて、仕入れ値に10%の利益を見込んだ値段で売り出しました。この商品を150個売ったところで、残りを1個あたり5円値下げして売り出しましたが10個売れ残りました。売れ残った商品をすてるのに1個あたり8円の費用がかかりました。そのため利益は1160円でした。この商品1個の仕入れ値を求めなさい。
(東邦大学付属東邦中学校 2022年 問題2-(3))
【考え方】
売れ残った商品を捨てるのに費用がかかる点が前問と異なりますが、「多数売り」であることは同じなので、表を使って整理します。
表の空欄を埋めていきます。
(1650○円+440○円-200円-80円)-2000○円=1160円
90○円=1140円
①円=16円
16円×10=160円
答え 160円
(別解)
「売れ残り」の問題は、「もし定価(または原価)で売れていたら」と仮定して解くことができます。
ここでは、「5円の値引きをして売った40個と売れ残った10個が定価で売れていたら」と考えます。
5円の値引きをして売った40個が定価で売れていれば、その売上は
5円×40個=200円
増えます。
また、売れ残った10個も定価で売れていれば、その売上は
(⑪円+8円)×10個
=110○円+80円
増えます。
ですから、200個すべてが定価の⑪円で売れていれば、その利益は
1160円+200円+110○円+80円
となります。
(⑪円-⑩円)×200個=1160円+200円+110○円+80円
200○円=110○円+1440円
90○円=1440円
①円=16円
16円×10=160円
答え 160円
本問は、「多数売り」の応用問題となる「売れ残り」の売買算です。
正解できなかったときは、損失を「負の数」として考える解き方、「もしすべてが定価で売れていれば」と仮定する解き方のいずれかでもう一度挑戦してみましょう。
では、最後の問題です。
【問題】あるお店ではチョコレートを定価150円で販売しています。電子マネーで支払うと支払った金額の5%分が後日、電子マネーとして返ってきます。ある日、このお店でチョコレートが定価から2割引になるセールを実施しました。この日にチョコレートを買い、電子マネーで支払うと、定価から何%引きで買えることになりますか。ただし、電子マネーで支払った際に返ってくる金額も割引額と考えて答えなさい。
(芝浦工業大学柏中学校 2022年 問題1-(2))
【考え方】
条件が複雑そうに見えますが、「1個売り」であることにかわりはありませんから、「定価→売価」の流れで整理します。
150円×(1-0.2)×(1-0.05)=114円
(150円-114円)÷150円=0.24
答え 24%引き
(別解)
(1-0.2)×(1-0.05)=0.76
1-0.76=0.24
答え 24%引き
本問は、売買算をテーマとした「割合の割合」の問題です。
「返ってくる金額も割引額」という但し書きがヒントになっていました。
今回は、2022年度の共学中入試で出された「売買算」の問題をご紹介しました。
中学入試の算数では、3問目の「廃棄費用」や4問目の「電子マネー」のように、現代社会や身の回りにあるものを題材として問題が作られることがあります。
子ども新聞を読んだり公共交通機関を使ったりするなど、算数以外の知識や経験も増やしておけるといいですね。