第607回 共学中の入試問題 比と割合 2
「第607回 共学中の入試問題 比と割合 2」
前回から2022年度の共学中入試で出された「比と割合」の問題を見ています。
今回は、「比例式の利用」と「食塩水の濃さの一行問題」を取り扱っていきます。
それでは、1問目から見ていきましょう。
【問題】明子さんと弟はお年玉をもらいました。明子さんのお年玉の2/5と弟のお年玉の3/4の金額の比は4:5です。明子さんがお年玉の半分を使い、弟が3000円を使ったところ、2人の残金は同じになりました。明子さんがもらったお年玉は何円ですか。
(青山学院中等部 2022年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
1つめの条件は、比例式に表すことができます。
(明子さんのお年玉)×2/5:(弟のお年玉)×3/4=4:5
「内項の積=外項の積」ですから、
(明子さんのお年玉)×2/5×5=(弟のお年玉)×3/4×4
(明子さんのお年玉)×2=(弟のお年玉)×3
(明子さんのお年玉):(弟のお年玉)=3:2
です。
明子さんはお年玉の半分を使うので、使う前のお年玉の金額を3と2の最小公倍数の⑥円とすると、弟がもらったお年玉は④円です。
これを用いて、2つめの条件を式に表します。
⑥-③=④-3000円 → ①=3000円
⑥=18000円
答え 18000円
本問は、比例式の計算が確認できる問題です。
2問目からは、食塩水の濃さに関する問題です。
【問題】濃度が2%の食塩水100gがあります。この食塩水を熱して35gの水を蒸発させたあと、食塩5gを入れてかき混ぜました。食塩水の濃度は何%になるか求めなさい。
(広尾学園中学校 2022年 問題1-(3))
【考え方】
「食塩水の重さ×濃度=食塩の重さ」が、食塩水の問題を解く基本です。
100g×0.02=2g … はじめの食塩水に溶けている食塩の重さ
100g-35g+5g=70g … あとの食塩水の重さ
2g+5g=7g … あとの食塩水に溶けている食塩の重さ
7g÷70g×100=10%
答え 10%
本問は、食塩水の問題の基本が確認できる問題です。
次のような「塩分数(分母:食塩水の重さ 分子:食塩の重さ)」に表して解いてもOKです。
食塩水の問題を続けます。
【問題】20%の食塩水90gに食塩を入れてよくかき混ぜると、25%の食塩水になります。加える食塩水の重さを求めなさい。
(青陵中学校 2022年 問題2-(2) 問題文一部変更)
【考え方】
問題の条件を「塩分数」で表します。
分母と分子に同じ量(□)をたしていますから、分母と分子の差は一定です。
90g-18g=④-① → ①=24g
24g-18g=6g
答え 6g
本問は、「同じ量をたしても(引いても)差は一定」という倍数算の考え方を用いましたが、次のような面積図解法や天びん法でも解くことができる問題です。
3つの方法のうちの1つ以上の解き方がマスターできていることを確認しましょう。
では、4問目です。
【問題】太郎君は10%の食塩水Aと3%の食塩水Bをあわせて500gの食塩水をつくる予定でしたが、AとBの食塩水の量を逆にしてしまったため、予定よりも4.2%うすい食塩水ができてしまいました。もともとAを何g混ぜる予定でしたか。
(中央大学附属中学校 2022年 問題1-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
食塩水AとBの重さがわかりませんので、天びん法を使って問題の条件を整理します。
このとき、混ぜる食塩水の濃さは変わりませんから、長さが等しい天びんを上下に並べてかきくことがポイントです。
図より、
☆%+★%=7%
☆%-★%=4.2%
とわかります。
(7+4.2)÷2=5.6% … ☆%
5.6%-4.2%=1.4% … ★%
うでの長さの比が
☆%:★%=5.6%:1.4%=4:1
ですから、重さの比は①:④です。
①+④=500g → ④=400g
答え 400g
(別解)
本問を面積図で表す場合の一例は次の通りです。
☆と★の差が◎であることに着目すると、
500g×0.042=(アg-イg)×0.07
アg-イg=300g
以下は、和差算です。
(500g+300g)÷2=400g
本問は、「塩分数」が利用しにくいときに天びん法や面積図に解き方を切り替えることができるかを確認できる問題です。
最後に、もう1問見ておきます。
【問題】容器の中に16%の食塩水が200gあります。この容器から50gの食塩水を捨て、同じ量の水を入れてよくかき混ぜます。その後もう一度、50gの食塩水を捨て、同じ量の水を入れてよくかき混ぜました。何%の食塩水ができますか。
(淑徳中学校 2022年 問題2-(3))
【考え方】
食塩水の重さと濃さがわかっていますから、順に計算していけばOKです。
答え 9%
(別解)
本問は、「水との等量交換」問題です。
このとき、食塩水と水を同じ量入れかえた後の濃さは、次のように計算できます。
この式を利用すると本問は、
16%×(1-50/200)×(1-50/200)=9%
のようにして求めることができます。
今回は、2022年度の共学中の入試で出された「比例式の利用」と「食塩水の濃さの一行問題」をご紹介しました。
比例式の計算や「塩分数」の計算、面積図や天びん法などの整理方法は、この単元の基本となる部分です。
はじめにこれらをきちんとマスターし、その上で5問目に見たような「条件に応じた特別な解き方」を身につけていくようにしましょう。