第606回 共学中の入試問題 比と割合 1
「第606回 共学中の入試問題 比と割合 1」
前回まで2022年度の共学中入試で出された「数と計算」の問題を見てきましたが、今回からは「比と割合」を取り扱っていきます。
その1回目は「比と割合の一行問題」です。
では、早速見ていきましょう。
【問題】Aさん、Bさん、Cさんが合わせて3000円持っています。AさんとBさんの所持金の差は180円で、Cさんの所持金が一番少ないです。また、AさんとCさんの所持金の差は、BさんとCさんの所持金の差の3/7です。
①AさんとCさんの所持金の差は何円ですか。
②Cさんの所持金は何円ですか。
(神奈川大学附属中学校 2022年 問題2-(2))
【考え方】
①
「比と割合」では、「もとにする量:比べる量=割合の分母:割合の分子」という関係を利用できます。
(BさんとCさんの所持金の差):(AさんとCさんの所持金の差)=⑦:③
となりますから、問題の条件は次のような線分図に表すことができます。
⑦-③=180円
①=45円
③=135円
答え 135円
②
⑦+③=450円
(3000円-450円)÷3=850円
答え 850円
本問は割合を比に直すという基本の解き方が確認できる問題です。
AさんがBさんよりも所持金が多いと、Cさんが一番少ないという条件にあてはまらないことに気をつけましょう。
では、2問目です。
【問題】ある本の3分の2を読み、さらに残りの35ページを読んだところ、残ったページは本全体の10分の1になりました。この本は全部で何ページありますか。
(中央大学附属横浜中学校 2022年 問題1-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
「比と割合」では、何を「もとにする量」にしたときの「割合」かに着目することが大切です。
本問は、割合のもとにする量が「本全体」の1つだけです。
本全体を割合の分母の3と10の最小公倍数の30○とすると。次のような線分図をかくことができます。
※ 本全体を1としてもOKです。
30○-(⑳+③)=35ページ
①=5ページ
30○=150ページ
答え 150ページ
本問は、割合のもとにする量が1つなので1本の線分図に整理することができます。
もとにする量を1としてもよいですし、解答例のように割合の分母の最小公倍数を用いて「整数で計算」できるように工夫してもOKです。
では、3問目です。
【問題】ある本を1日目に全体の1/3、2日目は残りの2/5、3日目はさらに残りの1/6を読んだところ、150ページ残りました。この本をちょうど10日間で読み終えるには、毎日何ページずつ読めばよいですか。
(青山学院横浜英和中学校 2022年 問題1-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
割合ともとにする量の関係を整理します。
割合 1/3 … もとにする量 本全体
割合 2/5 … もとにする量 1日目の残り
割合 1/6 … もとにする量 2日目の残り
このようにもとにする量が異なるときは、階段状の線分図に整理します。
6◇-1◇=150ページ
1◇=30ページ
6◇=180ページ=5□-2□
1□=60ページ
5□=300ページ=③-①
①=150ページ
③=450ページ
450ページ÷10日=45ページ
答え 45ページ
本問は、割合ともとにする量の関係が把握できているか確認できる問題です。
もとにする量が共通であれば1本の線分図に整理し、もとにする量がいくつか出てくる場合は階段状の線分図にすると考えやすくなります。
最後は今回見てきた問題の上級問題です。
【問題】ある本を1日目に全体の1/6より10ページ多く読み、2日目は1日目の半分を読みました。3日目は2日目よりも1ページ少なく読んだところ、残りのページは全体の3/5でした。この本は全部で何ページですか。
(芝浦工業大学附属中学校 2022年 問題3-(2))
【考え方】
割合に着目すると、もとにする量が「本全体」と「1日目」の2つがありますので、問題の条件を階段状の線分図に表してみます。
1日目は
本全体×1/6+10ページ
と表せますから、2日目は
(本全体×1/6+10ページ)×1/2
=本全体×1/12+5ページ
3日目は
本全体×1/12+4ページ
となります。
本全体を割合の分母の6、12、5の最小公倍数の60○とします。
⑩+10ページ+⑤+5ページ+⑤+4ページ+36○=60○
④=19ページ
60○=19ページ×60/4=285ページ
答え 285ページ
本問は、「割合の割合(割合どうしのかけ算)」が確認できる問題です。
1日に読む本のページ数が整数でないことで少し解きにくく感じるかもしれませんが、最終的に本全体のページ数が整数になる問題でした。
今回は「比と割合」の1回目として、「比と割合の一行問題」をご紹介しました。
「比と割合」は中学受験算数の大切な考え方です。
まずは、今回のような一行問題で理解度の確認をしてみましょう。