第584回 女子中の入試問題 立体図形 3
「第584回 女子中の入試問題 立体図形 3」
前回から、近年の女子中の入試で出された「立体図形」の問題について考えています。
今回は、前回の最終問題の続きとなる「回転体」について見ていきます。
1問目は基本レベルの問題です。
【問題】下の図の容器は、底面積が等しい円柱と円すいを合わせた形をしています。この容器に水を毎秒12㎤で注いだところ、2分37秒でいっぱいになりました。このとき、円すいの高さを求めなさい。ただし、円周率は3.14とします。
(晃華学園中学校 2021年 問題1-(6))
【考え方】
2分37秒=157秒
12㎤/秒×157秒=1884㎤ … 注いだ水の体積=容器の容積
10㎝×10㎝×3.14×5㎝=1570㎤ … 円柱の体積
1884㎤-1570㎤=314㎤ … 円すいの体積
10㎝×10㎝×3.14×□㎝÷3=314㎤
□㎝=314㎤×3÷3.14÷10㎝÷10㎝=3㎝
答え 3㎝
本問は、円すいの体積の公式が確認できる基本問題でした。
問題によっては「円すいの体積は(底面積)×(高さ)÷3で求めることができます」と書かれていないこともありますので、公式は覚えておきましょう。
では、2問目です。
【問題】下の図の台形ABCDを、辺CDを軸として1回転させてできる立体について次の問いに答えなさい。ただし、円周率は3.14として計算しなさい。
(1)この立体の体積を、式を書いて求めなさい。
(2)下の図はこの立体の展開図です。(図は正確ではありません)(ア)~(オ)に当てはまる長さ、角度を求めなさい。また、この立体の表面積を求めなさい。
(湘南白百合学園中学校 2021年 問題5 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
この台形を回転させてできる立体の見取り図は、回転させる台形を回転の軸について線対称な位置にもかき、対応する点をなめらかに結んで作ります。
図より、求める立体は円すい台とわかります。
円すい台の体積は円すい(大)から円すい(小)を引いて求めます。
そのために、台形の辺を延長して相似な三角形を作ります。
三角形EADと三角形EBCの相似比は、
AD:BC=3㎝:6㎝=1:2
です。
ED:EC=1:2
ED=4㎝ … □㎝
よって、大小の円すいの長さは次の通りです。
6㎝×6㎝×3.14×8㎝÷3-3㎝×3㎝×3.14×4㎝÷3=263.76㎤
答え 263.76㎤
(2)
(1)でかいた図を利用すると、(ア)=3、(イ)=6がわかります。
次に、円すい(大)と円すい(小)の展開図をかいて比べます。
図より、
(エ)=AB=5
(ウ)=EB=EA×2=AB×2=10
が求められます。
(オ)は円すいの特別な公式「半径/母線=中心角/360度」より、
6㎝/10㎝=3/5=(オ)度/360度
なので、
(オ)=360×3/5=216
とわかります。
立体の表面積はその立体の展開図の面積と等しいことを利用して求めます。
3㎝×3㎝×3.14=9㎠×3.14 … 小円の面積
6㎝×6㎝×3.14=36㎠×3.14 … 大円の面積
10㎝×10㎝×3.14×216度/360度-5㎝×5㎝×3.14×216度/360度=45㎠×3.14 … 側面積(せんす形の部分)
(9㎠+36㎠+45㎠)×3.14=282.6㎠
答え ア 3(㎝)、イ 6(㎝)、ウ 10(㎝)、エ 5(㎝)、オ 216(度)、表面積 282.6㎠
本問は、円すい台に関する知識や解法、円すいの特別な公式「半径/母線=中心角/360度」が確認できる問題でした。
なお、円すい台の側面積を求めるときに円すいの特別な公式「円すいの側面積=母線の長さ×底面の半径×円周率」の利用することや、大小の円すいが相似であることから、面積や体積を相似比を利用して求めてもOKです。
それでは最後の問題です。
【問題】次の問いに答えなさい。ただし、円周率は3.14とします。
(1)図1の太線で囲まれた図形を辺ABの周りに1回転してできる立体の体積を求めなさい。ただし、図の1目盛りは1㎝であるとします。
(2)図2は底面の半径が9㎝、高さが14㎝の円すいです。(1)の立体と図2の円すいを平らな床の上に、ともに高さが14㎝になるように並べて置きます。ただし、(1)の立体は辺BCを回転してできる面が床につくように置きます。次に2つの立体を床からの高さが同じ平面で水平に切ったところ、切り口の面積が等しくなりました。2つの立体を床から何㎝の高さで切ったのか、考えられるものをすべて求めなさい。
(学習院女子中等科 2021年 問題6)
【考え方】
(1)
次の見取り図のような立体ができます。
2㎝×2㎝×3.14×5㎝=20㎤×3.14 … 円柱(上)の体積
6㎝×6㎝×3.14×4㎝=144㎤×3.14 … 円柱(中)の体積
8㎝×8㎝×3.14×5㎝=320㎤×3.14 … 円柱(下)の体積
(20㎤+144㎤+320㎤)×3.14=1519.76㎤
答え 1519.76㎤
(2)
(1)の立体を床と平行な面で切ると、3種類の大きさの円ができます。
床からの高さが0~5㎝のとき→半径8㎝の円
床からの高さが5~9㎝のとき→半径6㎝の円
床からの高さが9~14㎝のとき→半径2㎝の円
図2の円すいは底辺9㎝、高さ14㎝の直角三角形が回転してできる立体ですから、この直角三角形に重ねて考えます。
大小4つの直角三角形ができましたが、これらはすべて相似です。
その高さは、小さい方から順に、
14㎝×2㎝/9㎝=3 1/9㎝
14㎝×6㎝/9㎝=10 1/3㎝
14㎝×8㎝/9㎝=12 4/9㎝
です。
従って、床からの高さは、
14㎝-3 1/9㎝=10 8/9㎝ … 9~14㎝の間にある→○
14㎝-10 1/3㎝=3 2/3㎝ … 5~9㎝の間にない→×
14㎝-12 4/9㎝=1 5/9㎝ … 0~5㎝の間にある→○
とわかります。
答え 10 8/9㎝、1 5/9㎝
本問は、回転体が三角形や四角形などを回転させた立体であることから、その回転させた図形=立体を縦に切ったときの断面に着目することが確認できる問題でした。
今回は、近年の女子中の入試で出された「回転体」に関する問題をご紹介しました。
円周率を含む計算が正確にできるか、円すいの特別な公式が利用できるか、回転させる図形=立体を縦に切ったときの断面に着目できるかなど、大切なポイントが定着できているかをチェックしてみましょう。