第572回 女子中の入試問題 速さ 5
「第572回 女子中の入試問題 速さ 5」
これまで2021年度の中学入試において女子中で出された「速さ」の問題について考えてきています。
今回取り扱うテーマは「流水算」です。
1問目は流水算の基本問題です。
【問題】川の上流にあるA地点と下流にあるB地点は180km離れています。ある船PはA地点からB地点まで下るのに6時間かかり、B地点からA地点まで上るのに10時間かかりました。このとき、船Pの川の流れのないところでの速さは時速(①)kmで、川の流れの速さは時速(②)kmです。また、ある船QがB地点からA地点へ上るのに15時間かかるとき、A地点からB地点へ下るのにかかる時間は(③)時間です。
(立教女学院中学校 2021年 問題1-(7))
【考え方】
船Pについて状況図に表してみましょう。
180km÷6時間=30km/時 … 船Pの下りの速さ
180km÷10時間=18km/時 … 船Pの上りの速さ
流水算では、上りの速さ、下りの速さ、川の流れの速さ(流速)、流れがないところでの速さ(静水時)を線分図に表すことができます。
(30km/時-18km/時)÷2=6km/時 … 流速
18km/時+6km/時=24km/時 … 静水時
次は船Qについて整理します。
180km÷15時間=12km/時 … 船Qの上りの速さ
12km/時+6km/時×2=24km/時 … 船Qの下りの速さ
180km÷24km/時=7.5時間
答え ① 24 ② 6 ③ 7.5
本問は、流水算の基本が確認できる問題です。
流水算を習い終えているときは、この問題で基本が身についているかを確認してみましょう。
では、2問目です。
【問題】川の上流のA地点と下流のB地点の間を往復する遊覧船があります。川はA地点からB地点に向かい一定の速さで流れています。また、遊覧船の静水時での速さは一定とします。この遊覧船でAB間を一往復したところ、AからBへ行くのに6分、BからAに戻るのに24分かかりました。次の問いに答えなさい。
(1)川の流れる速さと、遊覧船の静水時での速さの比を、最も簡単な整数の比で求めなさい。
(2)AB間には、パトロール船も往復しています。静水時では、パトロール船の速さは遊覧船の速さの2倍です。遊覧船とパトロール船がAを同時に出発し、遊覧船がはじめてBに着いたとき、パトロール船はBからAに向かって420mのところにいました。AB間の距離は何mですか。
(フェリス女学院中学校 2021年 問題3)
【考え方】
(1)前問と異なりAB間の距離がありません。
しかし、距離が上りと下りで同じですから時間の比と速さの比の関係が利用できますし、AB間の距離を1や上りと下りの時間の最小公倍数24と仮定してもOKです。
ここでは、距離を24として解いていきます。
24÷6=4 … 遊覧船の下りの速さ
24÷24=1 … 遊覧船の上りの速さ
(4-1)÷2=1.5 … 流速
1+1.5=2.5 … 遊覧船の静水時の速さ
1.5:2.5=3:5
答え 3:5
(2)(1)を利用して、パトロール船の速さについて線分図をかいてみます。
5-1.5=3.5 … パトロール船の上りの速さ
5+1.5=6.5 … パトロール船の下りの速さ
次に、遊覧船とパトロール船の動きを整理します。
同時マーク○~□に着目します。
速さの比 遊覧船:パトロール船=4:6.5=8:13
↓
距離の比 遊覧船:パトロール船=8:13
また、同時マーク□~△にも着目します。
速さの比 遊覧船:パトロール船=4:3.5=8:7
↓
距離の比 遊覧船:パトロール船=8:7
420m÷7=60m
60m×8=480m
480m÷(13-8)×13=1248m
答え 1248m
本問は、流水算と比に関する問題でした。
今回の1問目で流水算の基本を理解できていることが確認できましたら、この2問目で流水算で比の利用ができるかをチェックしてみてください。
今回は、2021年度に女子中で出された「流水算」の問題の中から、基本レベルの問題をご紹介しました。
もし、2問目が正解できないときは、1問目で流水算の基本が身についているか、前回までの旅人算などで「速さと比」の関係が利用できるか、線分図の基本となる同時マークが使えるかなどを確かめて、速さのいろいろな文章題を解くために必要な力を伸ばしていきましょう。