第571回 女子中の入試問題 速さ 4
「第571回 女子中の入試問題 速さ 4」
女子中の2021年度入試で出された「速さ」の問題について考えています。
前回は「旅人算」のやや難しい定番の問題を取り扱いました。
今回は「旅人算」のグラフ問題を見ていこうと思います。
【問題】姉は徒歩通学をしています。ある日、学校まで残り450mの地点で忘れ物に気づいた姉は、歩いて家に引き返しました。妹は姉が家を出てから9分後に姉の忘れ物に気づき、姉を追いかけました。姉は妹から忘れ物を受け取った後、走って学校へ行き、妹は家に帰りました。下のグラフは、姉が家を出発してからの時間と、姉と妹の距離の関係を表したものです。ただし、家と学校は同じ直線道路沿いにあり、姉の歩く速さと走る速さはそれぞれ一定で、妹の速さは毎分60mとします。次の問いに答えなさい。
(1)姉の歩く速さを求めなさい。
(2)ア□、イ□、ウ□にあてはまる数を求めなさい。
(3)姉の走る速さを求めなさい。
(東洋英和女学院中学部 2021年 問題9)
【考え方】
旅人算の進行グラフ(ダイヤグラム)は速さや向きが変わったときに曲がりますが、2人の間の距離を表す「隔たりグラフ」では向かい合って進み始めたり、同じ向きに進み始めたりした場合にも曲がることに注意して、グラフの読み取りをします。
(1)問題文からわかることをグラフに書き込むと次のようになります。
グラフより、姉は家を出発してからの9分間で810m歩いたとわかります。
810m÷9分=90m/分
答え 毎分90m
(2)9分後から姉が忘れ物に気づくア□分後までは、姉と妹は同じ向きに進んでいますが、姉の方が早いので2人の差が810mから900mに広がっています。
(900m-810m)÷(90m/分-60m/分)=3分
9分+3分=12分 → ア□=12
2人の間の距離がイ□mとなる27分後は、姉が学校に着いたときなのか、妹が家に着いたときなのかがよくわかりませんが、いずれの場合でも27分後には姉は学校に、妹は家にいますから、イ□は家と学校との距離です。
しかし、隔たりグラフだけでは少し考えにくいので、わかった12分後までの様子を線分図に整理してみます。
この線分図から、
イ□=810+270+450=1530(m)
とわかります。
さらに、姉と妹が出会ったのは、
12分後+900m÷(90m/分+60m/分)=18分後
ということもわかります。
妹は家を出発してから姉と出会うまでに9分かかりましたから、姉と出会ってから家に帰るまでの時間も9分かかります。
つまり、姉が家を出発してから
9分+9分+9分=27分後
に家に帰りますので、ウ□分に姉が学校に着いたことになります。
妹はウ□分後から27分後までに、
1530m-1350m=180m
歩いています。
27分-180m÷60m/分=24分 → ウ□=24
答え ア 12、 イ 1530、 ウ 24
(3)1350m÷(24分-18分)=225m/分 … 姉(走る)+妹
225m/分-60m/分=165m/分
答え 毎分165m
本問は2人の間の距離を表す「隔たりグラフ」の読み取り問題でした。
隔たりグラフの問題は、
1 グラフが曲がる理由を考える
2 進行グラフ(ダイヤグラム)に書き換える
3 線分図に書き換える
の3つの方法から適切なものを選んで解きます。
隔たりグラフは速さのグラフの応用問題ですから、苦手な場合は進行グラフ(ダイヤグラム)の問題が解けるか、グラフと線分図の書き換えができるかといった点を、まずは確認してみましょう。
では、もう1問です。
【問題】直線上に点A、Bがあり、AとBの間は30cmです。直線上のAとBの間を、点Pと点Qがそれぞれ動きます。点PはAを出発しBに向かい、同時に点QはBを出発しAに向かいます。点P、Qは出会ったら向きを変えて進みます。点Pも点Qも、AまたはBにたどり着いたら向きを変えて進みます。ただし、点QはBにたどり着いたとき、2秒間止まってから再び動き出します。点P、Qの速さはそれぞれ一定です。また、グラフは点Pの移動の様子の一部を表したものです。
(1)点P、Qの速さはそれぞれ毎秒何cmですか。必要であれば、下のグラフを用いなさい。答えを出すために必要な式、図、考え方なども書きなさい。
(2)点P、Qが7回出会うまでに点Pが進んだ長さの合計は何cmですか。必要であれば、下のグラフを用いなさい。答えを出すために必要な式、図、考え方なども書きなさい。
(鷗友学園女子中学校 2021年 問題6)
【考え方】
(1)与えられたグラフに、点Qの動きをかき加えてみます。
グラフが二等辺三角形になっていますので、1回目の出会いは出発してから
8秒÷2=4秒後
です。
30cm÷4秒=7.5cm/秒 … 点Pと点Qの速さの和
また、グラフの中に「休み」がありますので、「もし、休まなければ…」というグラフもかきたしてみます。
もし、点QがBで止まらなければ、2回目に2点が出会うところは1回目と同じになりますから、8秒後+4秒=12秒後のはずです。
また、グラフの中に平行四辺形と二等辺三角形がありますので、この部分を拡大してみます。
すると、点Pが
12.8秒-12秒=0.8秒
かかる距離を、点Qは
2秒-0.8秒=1.2秒
かかっていることもわかります。
時間の比 P:Q=0.8:1.2=2:3
↓
速さの比 P:Q=③:②
③+②=⑤=7.5cm/秒 → ①=1.5cm/秒
1.5×3=4.5cm/秒 … 点Pの速さ
1.5×2=3cm/秒 … 点Qの速さ
答え Pは毎秒4.5cm、 Qは毎秒3cm
(2)2回目に出会った後のグラフをかいていきます。
グラフから1回目に出会う位置と3回目に出会う位置が同じであることがわかりますから、2回の出会いを1組とすることができます。
7回目÷2回=3組余り1回目
(18cm×2+21.6cm×2)×3組+18cm=255.6cm
答え 225.6cm
本問は、ダイヤグラムの5原則と出会いの規則性が利用できる問題でした。
今回は、2021年度に女子中で出された「速さ」の問題の中から、旅人算とグラフに関する問題をご紹介しました。
隔たりグラフやダイヤグラムの読み取り問題は、中学入試でもよく出される大切な問題です。
今回のような応用レベルの問題が少し難しいと感じるときは、塾教材の基本レベルから中級レベルの問題で、もう一度、グラフ問題の基礎を固めるようにしましょう。