第564回 女子中の入試問題 比と割合 1
「第564回 女子中の入試問題 比と割合 1」
前回まで2021年度の女子中の入試で出された「数の性質」の問題を取り扱ってきました。
今回からは「比と割合」について考えていこうと思います。
1回目の今回は、「比と割合」の基本的な問題を見ていきます。
【問題】ある小学校では、男子は全体の2/3より72人少なく、女子は全体の2/5より40人多いです。この小学校の生徒数は何人ですか。
(東洋英和女学院中学部 2021年 問題2-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
割合の基本は「(比べる量)=(もとにする量)×(割合)」という関係と、何をもとの量とした割合なのかを問題文中から読み取ることにあります。
もとにする量は、原則として、割合のすぐ前にあります。
本問では、「2/3」という割合はそのすぐ前にある「全体」がもとにする量、「2/5」という割合もそのすぐ前にある「全体」がもとにする量ですから、2つの割合はどちらももとにする量が同じです。
もとにする量が同じであるときは、問題の条件を1本の線分図に整理することができます。
しかし、1本の線分図にすると、上の図のように「見にくい」こともあります。
そのようなときは数本の線分図に分け直すと「見やすく」なります。
線分図は割合を表している長さの端(○、□)に着目すると、式を作ることができます。
上の線分図のアより、
72人-40人=32人が(2/3+2/5)-1=1/15と同じ、
つまり、32人が全体の1/15と等しいとわかります。
全体×1/15=32人全体=32人÷1/15=480(人)
答え 480人
本問は「比と割合」の基本が確認できる問題です。
なお、全体を3と5の最小公倍数⑮とした線分図にして解くこともできます。
では、2問目です。
【問題】Aさんは1冊の本を読んでいます。1日目に全体の1/3を、2日目には30ページを、3日目には残りの3/5を読んだところ、20ページが残りました。この本は全部で何ページか答えなさい。
(晃華学園中学校 2021年 問題1-(3))
【考え方】
前問と同じように、まず、文中の割合が何をもとにする量としているのかを見ていくと、「1/3」は「全体」、「3/5」は「残り」がもとにする量とわかります。
割合のもとにする量が異なる場合、問題条件を表す線分図は階段状になります。
上の線分図の3段目に着目すると、
2日目に読んだあとの残り(=もとにする量)の1-3/5=2/5が20ページに等しい
とわかります。
2日目に読んだあとの残り×2/5=20ページ
2日目に読んだあとの残り=20ページ÷2/5=50ページ
わかったことを線分図に書きこんでいくと、
全体(=もとにする量)の1-1/3=2/3が80ページと等しい
とわかります。
全体×2/3=80ページ
全体=80ページ÷2/3=120ページ
答え 120ページ
本問も、「何に対する割合かが読み取れる」ことが確認できる、「比と割合」の基本問題です。
今回の最後は、大問形式の問題です。
【問題】Aさんは、母、兄、姉とお金を出し合って、父にプレゼントを買いました。母はプレゼント代の2/3を、兄はその残りの2/3を出し、残りの金額を姉とAさんで支払いました。Aさんが出した金額は、兄と姉の2人が出した金額の合計の1/7でした。次の問いに答えなさい。
(1)兄が出した金額はプレゼント代の何倍ですか。
(2)Aさんが出した金額はプレゼント代の何倍ですか。途中の式や考え方も書きなさい。
(3)姉はAさんより200円多く出しました。プレゼント代はいくらですか。
(吉祥女子中学校 2021年 問題2)
【考え方】
問題の条件を線分図に表します。
(1)兄が出した金額の割合(2/3)は、母が出した金額の残りを「もとにする量」としていますが、この「もとにする量」はプレゼント代全体の1-2/3=1/3と同じです。
ですから、
兄が出した金額=母が出した金額の残り×2/3=(プレゼント代全体×1/3)×2/3
となります。
したがって、兄が出した金額=プレゼント代全体×2/9です。
答え 2/9倍
(2)母が出した金額はプレゼント代全体の1/3、兄が出した金額はプレゼント代全体の2/9となり、もとにする量が同じ(プレゼント代全体)ですから、同じ線上に書くことができます。
上の線分図で母が出した金額の残りに着目します。
母が出した金額の残りは兄、姉、Aさんが出しましたが、Aさんが出した金額は、兄と姉が出した金額をもとにする量としたときの1/7です。
つまり、(Aさんが出した金額):(兄と姉が出した金額)=1:7ですから、Aさんが出した金額は、母が出した金額の残りの1/8です。
Aさんが出した金額=母が出した金額の残り×1/8=(プレゼント代全体×1/3)×1/8=プレゼント代全体×1/24
答え 1/24倍
(3)(2)よりAさんが出した金額の割合ももとにする量がプレゼント代となりましたから、母や兄と同じ線上に書くことができます。
上の線分図より、
姉が出した金額の割合=1-(2/3+2/9+1/24)=5/72
とわかります。
姉が出した金額はプレゼント代全体の5/72、Aさんが出した金額はプレゼント代全体の1/24、姉とAさんの出した金額の差が200円より、
プレゼント代全体×(5/72-1/24)=200円
プレゼント代全体=200円÷(5/72-1/24)=7200円
とわかります。
答え 7200円
本問は「割合の割合」とも呼ばれるもので、もとにする量を1種類に統一することで(3)のように割合どうしを足したり引いたりすることができるようにする問題です。
また、同じ(3)では「割合→比」という言い換えにより、問題を簡単に解けるようにする工夫(割合のままでも解くことはできます)がありました。
今回は、2021年度の中学入試において、女子中で出された「比と割合」の基本問題をご紹介しました。
今回の基本問題を解く力は、中学入試問題に取り組む上で非常に大切な計算技術となっています。(ご紹介した解き方は一例ですので、同じ過程で解かなくとも構いません。)
上記の3問に取り組んで、この大切な計算技術が身についているかを確認してみましょう。