第558回 共学校の場合の数 4
「第558回 共学校の場合の数 4」
ここまで、近年に共学校の中学入試で出された「場合の数」の問題について考えています。
今回取り扱うテーマは、場合の数の第1回で見ました「塗り分け」と第2回で見ました「組み合わせ」の応用問題です。
【問題】図1、図2のような旗があります。それぞれについてとなりあう部分が同じ色にならないように塗ります。
(1)図1の旗を赤・青・黄・緑の4色すべてを使う塗り方は何通りありますか。
(2)図1の旗を赤・青・黄の3色すべてを使う塗り方は何通りありますか。
(3)図2の旗を赤・青・黄の3色すべてを使う塗り方は何通りありますか。
(東京都市大学等々力中学校 2020年 問題5)
【考え方】
「塗り分け」問題の解き方は、色数と塗る場所の数、塗る図形が対称図形かどうかで決めます。
(1)色数と塗る場所の数が同じで、塗る部分は大きさや形がバラバラですから、最も基本的な問題です。
はじめに塗る場所に名前をつけておきます。
慣れれば、名前をつけなくてもOKです。
アは赤・青・黄・緑の4色のいずれかを使いますから4通り、イはアで使った色以外の3通り、ウはアとイで使った色以外の2通り、エは最後に残った1色ですから1通りです。
4通り×3通り×2通り×1通り=24通り
答え 24通り
場合の数を習ったばかりのときや計算で解くのが苦手であれば、塗る場所に名前をつけておいてから、樹形図をかいて考えてもよいでしょう。
(2)これも樹形図をかいて考えてもよいのですが、計算で解けると理想的です。
ポイントは、「色数<塗る場所の数 → 同じ色で塗る場所を先に決める」ことです。
本問は3色で4か所を塗りますからどれか1色を2か所に使うことになりますが、それには次の2つのパターンがあります。
Aパターンの場合、☆色は赤・青・黄の3色のいずれかですから3通り、イは☆色以外の2通り、ウは残りの1色ですから1通りとなり、塗り方は、
3通り×2通り×1通り=6通り
あります。
Bパターンの場合も、☆色は赤・青・黄の3色のいずれかですから3通り、アは☆色以外の2通り、エは残りの1色ですから1通りとなり、塗り方は、
3通り×2通り×1通り=6通り
あります。
したがって、
6通り+6通り=12通り
が答えです。
答え 12通り
上記のようにAパターンでもBパターンでも計算式は同じですから、「どちらか1つのパターンについて塗り方を求め、それを2倍する」と考えることができるようになれば最高です。
(3)「色数<塗る場所の数 → 同じ色で塗る場所を先に決める」というポイントは(2)と同じですが、塗り分けのもう1つの大切な考え方である、「最も多くの境界と接している部分から考える」も使うようにします。
上の図のように、「最も多くの境界と接している部分」であるエに着目すると、エで使った色は他の部分に使うことができないことがわかります。
したがって、次の図のように、アとオ、イとウをそれぞれ同じ色で塗るパターンしかないことがわかります。
エは赤・青・黄の3色のいずれかですから3通り、☆色はエ以外の2通り、◎色は残りの1色ですから1通りとなり、塗り方は、
3通り×2通り×1通り=6通り
とわかります。
答え 6通り
本問の(2)、(3)は答えの値が小さいですから、樹形図などで書き出していっても正解できると思います。
書き出しで正解できるようになれば、解き方を次のレベルに上げていくために、計算を使って解く方法も練習していきましょう。
では、もう1問です。
【問題】6枚の100円硬貨をAさん、Bさん、Cさんの3人で分けます。次の問いに答えなさい。
(1)全員が必ず1枚以上もらえる場合、分け方は何通りありますか。
(2)1枚ももらえない人がいてもよい場合、分け方は何通りありますか。
(法政大学中学校 2020年 問題3)
【考え方】
(1)6枚すべてについて調べてもよいですし、全員が1枚ずつもらった後の残りの硬貨の分け方に着目すると、より小さい値で考えることができます。
ここでは、後者の方法で解いていきます。
全員が1枚ずつもらった後の残りの硬貨の枚数は3枚です。これの分け方を考えますが、このとき「分ける枚数 → 誰がもらうか」のように2段階で考えるようにすると、計算を利用できます。
分け方(3枚、0枚、0枚)→3枚もらう人はAかBかCの3通り
分け方(2枚、1枚、0枚)→2枚もらう人はAかBかCの3通り、1枚もらう人は2枚もらった人以外の2通り、0枚の人は残りの1人なので1通りですから、
3通り×2通り×1通り=6通り
分け方(1枚、1枚、1枚)→A、B、Cのそれぞれが1枚もらうので1通り
3通り+6通り+1通り=10通り
答え 10通り
本問は、(A、B、C)=(3枚、0枚、0枚)、(2枚、1枚、0枚)、(2枚、0枚、1枚)、(1枚、2枚、0枚)…のように、してもよいのですが、上記の「分ける枚数 → 誰がもらうか」のように2段階で考えることができるようになると、計算を利用することができます。
また、次のように「○l解法(マル棒解法)」が使えるようになると、値が大きくなってもまちがいにくくなります。
〈別解…「○l解法」の利用〉
3枚の硬貨を○で表し、それに仕切り棒(l)を加えて並べ、誰が何枚もらうかを一気に求めます。
具体的に見ていきましょう。
上の図のように、○とlを並べることで、誰が何枚もらうかを表すことができます。
つまり、○○○llの並べ方=硬貨の分け方となります。
○○○llの並べ方は、前回見ました→→↑↑↑の並べ方と同じ考え方ですから、数の少ない「l」に着目して、
5通り×4通り÷2=10通り
のように計算で答えを求めることができます。
この考え方が使えると、(2)は計算だけで解けます。
(2)○○○○○○llの並べ方と同じですから、
8通り×7通り÷2=28通り
です。
答え 28通り
本問で見たように、「分け方」の問題は「○l解法」を用いると「区別がつかないものの並べ方(本問の○、lや前回の→↑)=組み合わせ」の計算で答えを求めることができます。
場合の数の学習では、樹形図などの書き出し、かけ算の利用、場合分けが、基本であり最も重要です。
この基本ができるようになれば、今回ご紹介しました「2段階で考える」や「○l解法」などに挑戦して、解法のレベルを1つ上げていけるといいですね。