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第557回 共学校の場合の数 3

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場合の数の練習問題 2021年07月17日18時00分

「第557回 共学校の場合の数 3」

前々回から、近年に共学校の中学入試で出された「場合の数」の問題を見てきています。今回取り扱うテーマは、中学入試でもよく出される「道順」の問題です。

 

【問題】下の図のように直角に交わる道があり、×の道は通行止めです。A地点からB地点まで遠回りせずに行く方法は全部で何通りありますか。

(早稲田実業学校中等部 2020年 問題1-(3))

 

【考え方】「道順」の問題の基本的な解き方は、「1・1解法(イチイチ解法)」ともいわれる書き出しです。

はじめに、次のような道でAからBまで遠回りせずに行く方法を見ていきましょう。

①Aからアへの行き方は1通り、Aからイへの行き方も1通りですから、次のように「1」を書きます。

②アからウへの行き方は1通り、イからウへの行き方も1通りですから、Aからウへの行き方は

1+1=2通り

ありますので、ウの「交差点」に「2」を書きます。

③アからエへの行き方は1通りですから、エの「交差点」に「1」を書きます。

④Aからウを通ってBへの行き方は2通り、Aからエを通ってBへの行き方は1通りですから、AからBへの行き方は全部で

2通り+1通り=3通り

あることが求められます。

 

このように「1・1解法」は、「ある交差点につながっている1つ前の交差点に書かれた数をたす」ことをくり返していく解き方です。

 

ですから、本問の場合は次のようになります。

上の図でCに数を書くとき、「×」を通ることができないことに注意します。

したがって、Cに書く数は「4」です。

続けて数を書いていきます。

よって、AからBへの行き方は、

52通り+38通り=90通り

とわかります。

答え 90通り

 

 

上記のように、「道順」の問題は「1・1解法」で数を書きこんでいきますが、「通行止め(×)」があると少しまぎらわしくなります。

そこで、次のような工夫をすることで考えやすくすることができます。

 

〈別解…「余事象」の利用〉

はじめに、「×」がないものとして数を書いていきます。

すべての道が通れるとき、AからBへの行き方は126通りあります。

次に、「必ず×の道を通る」ときの行き方を求めます。

「必ず×の道を通る」ためには、次の図の網目部分しか通ることができません。

上の図のようにAからDへの行き方は6通りあり、DからCは1通り、CからBは網目部分の形がAからDの場合と同じですから行き方は6通りあります。

ですから、A→D→C→Bの行き方は、

6通り×1通り×6通り=36通り

です。

AからBまでのすべての行き方が126通り、そのうち「必ず×の道を通る」ときの行き方が36通りですから、AからBまで×を通らない行き方は

126通り-36通り=90通り

とわかります。

このように、「すべての場合から、答え以外の場合を引く」という考え方を余事象といいます。

 

 

では、もう1問です。

 

 

【問題】AからBまでの行き方で、点Pを通り、点Qを通らない最短の行き方は何通りですか。

(芝浦工業大学附属中学校 2020年 問題1-(5))

 

【考え方】はじめに「点Pを通り」という条件から考えると、次の図のように網目部分の辺上を通ってCに行くことになり、ここまでの道順は2通りです。

次にCからBに行く道順は、さきほどの「余事象」を利用すれば、「CからBへのすべての場合-CからQを通ってBに行く場合」で求められます。

まず、「CからBへのすべての場合」を求めますが、ここでは「1・1解法」ではなく、「組み合わせ(計算)」を使ってみようと思います。

1問目の例と同じ図で考えてみましょう。

AからBまでの3通りの行き方は次の通りです。

上の図を見ると、いずれの行き方も「→」「→」「↑」の3つの矢印を並べかえたもの(→→↑、→↑→、↑→→)になっています。

これは、矢印を入れる箱を3つ用意し、その中に「→」「→」「↑」を入れる場合を考えることと同じです。

数の少ない「↑」に着目すると、「↑」の入れ方が3通りあり、3箱のうちのどれかに「↑」を入れると、「→」「→」は残りの2箱に入れることになりますから、矢印の入れ方は全部で3通りあることがわかります。

 

同様に、本問のCからBへ行く場合も、「→」「→」「↑」「↑」「↑」の5つの矢印を並べかえる問題と考えることができます。

5つの箱を用意して、はじめに「→」「→」の入れ方を考えてみます。

説明のため、箱にア、イ、ウ、エ、オと名前をつけておきます。

1つめの「→」の入れ方はア~オの5通り、2つめの「→」の入れ方は1つめ以外の4通りありますから、全部で

5通り×4通り=20通り

です。

ところが、1つめの「→」をアに入れ、2つめの「→」をイに入れても、1つめの「→」をイに入れ、2つめの「→」をアに入れても、(→→↑↑↑)と同じ並びになりますから、この入れ方は「2つで1つ」となります。

つまり、半分になるということです。

したがって、「→」「→」「↑」「↑」「↑」の5つの矢印の並べ方は、

5通り×4通り÷2=10通り

となり、これがCからBへのすべての場合です。

CからQを通ってBに行く場合は、下の図より2通りとわかります。

 

10通り-2通り=8通り … CからQを通らずにBに行く場合

AからPを通ってCへ行く道順は2通りでしかたら、AからPを通り、Qを通らないBまでの行き方は、

2通り×8通り=16通り

です。

答え 16通り

 

 

本問は前問の応用として、「余事象」と「組み合わせ(計算)」を使用しましたが、答えが16通りと少ない問題ですから、「1・1解法」を利用する方が簡単に解くことができるでしょう。

ですが、道順のマス目が多くなったときは、これらの工夫が活きてきます。

「1・1解法」がいつでも正確に使えるようになっているのであれば、今回の1問目を「余事象」と「組み合わせ(計算)」で解くことにもチャレンジしてみてください。

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場合の数の練習問題 / 中学入試の算数問題 2021年07月17日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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