第551回 共学校の立体図形 5
「第551回 共学校の立体図形 5」
これまで、近年に共学校の中学入試で出された「立体図形」に関する問題を見てきています。
「立体図形」の最終回となる今回で取り扱うテーマは、「水問題」です。
はじめに、「水そうとグラフ」に関する問題について考えることにします。
【問題】
図1のような1つの角を囲うように2枚の仕切りがついた直方体の水そうがあります。2枚の仕切りは、どちらも底面に対して垂直につけられていて、しゃ線部分は正方形です。この空の水そうに、図のじゃ口から一定の割合で水を入れると、水面が一番高いところの高さと時間の関係は図2のグラフのようになりました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)アの時間は何分ですか。
(2)イの時間は何分ですか。
(3)図1のしゃ線部分の面積は、水そうの底面の面積の何倍ですか。
(淑徳中学校 2020年 問題5)
【考え方】
「水そうとグラフ」の問題では、水そうを正面から見た図にグラフから分かることを書き込んでいくことが、解き方の基本です。
この問題で水そうを正面から見た図をかくとき、仕切られた部分の底面が正方形ですが、縦の長さが水そうの奥行きと等しい長方形に「等積変形」しておいても条件に変わりはありませんので、次のような図で表すことができます。
(1)
水そうを正面から見た図を利用するときは、まずは長方形に見える部分に着目するようにします。
水面の高さを45cmにするのに30分かかっていますから、仕切りより上の部分にかかる時間は
30分×30cm/45cm=20分
です。
したがって、
ア=30分-20分=10分
とわかります。
答え 10分
(2)
水面の高さが15cm以上になると、水が入る部分の底面積が変化しないことを利用します。
問題のグラフより、イの時間に水面は仕切りより15cm上にあることがわかります。
10分+30分×15cm/45cm=20分
答え 20分
(3)
水を入れ始めてから10分後には次のようになっています。
上の図より、
☆分=10分-7分=3分
とわかります。
2つの長方形の高さは共通ですから、
底面積の比 A:B=7:3
です。
3÷(7+3)=0.3倍
答え 0.3倍
本問は仕切られた部分が正方形になっていますが、底面が長方形になるように仕切っても条件は変わりませんので、テキストなどで練習する通常の「仕切りのある水そう」の問題と同じように解くことができます。
次は「棒入れ」問題を見ていきます。
【問題】
下の図のような直方体の水そう〈図1〉と、おもりA〈図2〉、おもりB〈図3〉があります。水そうにはある量の水がすでに入っています。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)おもりAを矢印の方向に水そうの底まで入れると、水面が3cm上がり、水面の高さが、おもりAの高さのちょうどまん中になりました。おもりAの体積は何cm3ですか。
(2)(1)の後、おもりAを取り除き、おもりBを矢印の方向に水そうの底まで入れると水面の高さが16cmになりました。おもりBの(ア)の部分の長さは何cmですか。
(法政大学第二中学校 2020年 問題6)
【考え方】
(1)
「棒入れ」問題では、底面積を書き入れた水そうを正面から見た図を横に並べて比べることが、解き方の基本です。
上の図からでも解くことはできますが、「棒入れ」問題の補助線として「高い方の水面を延長」しておくと、考えやすくなります。
上の図で、赤色の長方形の面積は等しく、また水の量(斜線部分)も等しいですから、☆どうしの面積も等しいことが分かります。
☆=200cm2×3cm=600cm3
600cm3×2=1200cm3
答え 1200cm3
(2)
(1)よりおもりAの高さは、
1200cm3÷40cm2=30cm
とわかります。
30cm÷2-3cm=12cm…はじめの水面の高さ
そこで、(1)と同様に底面積を書き入れた水そうを正面から見た図を横に並べ、さらに補助線として「高い方の水面を延長」した線をかき込むと、赤色の長方形の面積は等しく、また水の量(斜線部分)も等しいですから、Bと★も等しいことが分かります。
★=200cm2×(16cm-12cm)=800cm3=おもりBの体積
800cm3÷8cm=100cm2…おもりBの凹の形をした面の面積
(16cm×8.5cm-100cm2)÷6cm=6cm…(ア)
答え 6cm
本問は「棒入れ」の基本となる解き方が確認できる問題です。
今回は、立体図形の最終回として「水問題」を取り扱いました。
「水問題」の基本の解き方は、「水そうとグラフ」の問題も「棒入れ」問題も、水そうを正面から見た図をかき、長方形に着目することです。
問題のレベルが上がると「比」の考え方も必要になってきます。
水問題が苦手なときは、比を使わずに解ける基本レベルの問題で、正面から見た図の利用の仕方を練習することから始めて見ましょう。