第549回 共学校の立体図形 3
「第549回 共学校の立体図形 3」
これまで、近年に共学校の中学入試で出された「立体図形」の中から、体積や表面積を求める問題、見取り図や投影図に関する問題を見てきました。
3回目となる今回は、立体の切断に関する問題を取り扱います。
1問目は立方体の切断です。
【問題】
図のような1辺8cmの立方体があります。この立方体を3つの点B、G、Dを通る平面で切り、2つの立体に分けました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)2つの立体の表面積の差を求めなさい。
(2)体積の大きい方の立体を、辺AB、BF、FG、GH、HD、DAのそれぞれの真ん中の点(図の黒丸)を通る平面で切ります。このときできる立体のうち、点Bがある方の立体の体積を求めなさい。ただし、三角すいの体積は、(底面積)×(高さ)÷3で求めることができます。
(帝京大学中学校 2020年 問題3)
【考え方】
(1)
それぞれの立体の表面積を計算してからその差を求めてもよいのですが、見取り図が与えられていますので少し工夫をしてみましょう。
図形式で考えると次のようになります。
上の図形式からわかるように、2つの立体の表面積の差は1辺8cmの正方形3つ分です。
8cm×8cm×3面=192cm2
答え 192cm2
(2)
問題図に新たな切断面をかき込んでもかまいませんし、切断が苦手なようでしたら面BGDで切られる前の図に、新しい切断面をかいてみると考えやすくなると思います。
ここでは、後者の図から考えることにします。
立方体の辺AB、BF、FG、GH、HD、DAのそれぞれの真ん中の点を通る平面は上の図のように正六角形です。
この正六角形は次の図のように立方体の「中心」を通っていますので、立方体の体積を2等分します。
そこで、求める立体を図形式で表すと次のようになることがわかります。
三角すいC-BGDは体積公式から求めてもかまいませんが、この切り方でできる三角すいの体積が立方体の1/6であることを覚えておくと計算が楽になります。
8cm×8cm×8cm×(1-1/6-1/2)=8cm×8cm×8cm×1/3=512/3cm3
答え 512/3cm3
本問は切断される立体が立方体であること、2つの切断面が交わらないことから、立体切断の基本が身についているか確認しやすい問題です。
途中でも触れましたように、2回切断が苦手な場合は見取り図を2つかき、どのような立体になるかを先にはっきりさせておく(イメージしやすくする)と考えやすくなると思います。
では、もう1問見ていきます。
【問題】
体積が24cm3の図のような立方体ABCD-EFGHがあります。対角線BHとDFの交点をOとします。次の問いに答えなさい。
(1)立体CBGDの体積を求めなさい。
(2)立体ACFHの体積を求めなさい。
(3)立体OBGDの体積を求めなさい。
(昭和学院秀英中学校 2020年 問題3)
【考え方】
(1)
前問と同じ切り方でできる三角すいの体積です。
立方体と底面積、高さを比べると、
底面積の比 正方形ABCD:直角二等辺三角形BCD=2:1
高さの比 CG:CG=1:1
↓
体積比 2×1:1×1÷3=6:1
より、
24cm3×1/6=4cm3
と求められます。
答え 4cm3
(2)
見取り図をかくと、求める立体ACFHは立方体から(1)と体積が同じ立体を4つ取り除いたものとわかります。
24cm3×(1-1/6×4)=24cm3×1/3=8cm3
答え 8cm3
(3)
(2)が誘導になっています。
下の見取り図のように、求める立体は(2)の立体の向きを変えたものの一部です。
問題文の「対角線BHとDFの交点をO」というヒントから、向きを変えた(2)の立体を長方形BFHDで切断してみると次のようになります。
上の図より、求める立体を、(2)の立体を長方形BFHDで1/2に切断した立体と底面積、高さについて比べてみると、
底面積の比 三角形BOD(長方形BFHDの1/4):長方形BFHDの1/2=1:2
高さの比 どちらも対角線EGの長さの1/2 → 1:1
↓
体積比 1×1÷3:2×1÷3=1:2
です。
8cm3×1/2×1/2=2cm3
答え 2cm3
本問の(3)は、問題文中のヒント「対角線BHとDFの交点をO」を2回切断と結びつける点が難しいところです。
ですが、普段の家庭学習から正確な見取り図(この問題では三角形BODと長方形BFHDが同じ平面上にあるように作図)をかくことや、図が重なって立体がわかりにくい(イメージしにくい)ときには見取り図を2つかくようにしていれば気づけたのではないかと思います。
今回は近年に共学校の中学入試で出された立体の切断の問題の中から、立方体の切断に関する問題を取り扱いました。
切断の問題を解くためには、切断の3原則(作図)、切断された立体の表面積や体積の求め方をマスターすることが必要です。
自分で見取り図をかく練習や、立方体の切断パターンはそれらを身につけていくための基礎力となります。
切断の問題が苦手なときは、これらの基礎ができているか、まずは確認してみましょう。