第538回 共学校の速さ 5
「第538回 共学校の速さ 5」
ここまで、近年に男女共学校の中学入試で出された問題の中から、「速さ」の問題を見てきています。
今回は、「動く歩道」、「エスカレーター」をテーマとした2問をご紹介します。
1問目は、この春に行われた中学入試の問題の中から選びました。
【問題】
駅の構内にA地点からB地点まで動く歩道があります。東さんがA地点を出発してB地点に動く歩道の上を歩いて向かいました。栄くんは、東さんが出発した5秒後にA地点を出発し、動く歩道にのって、東さんより速いスピードで歩いてB地点に向かいました。栄くんは出発して5秒後に東さんに気づき、声をかけると、東さんは動く歩道の上で歩くのをやめました。栄くんは東さんに声をかけたあとも、そのままのペースで歩き続け、声をかけてから3秒後に東さんに追いつきました。追いついた後、2人は動く歩道の上で歩かないままいっしょに進み、東さんがA地点を出発してからちょうど25秒後にB地点に着きました。栄くんが声をかけなければ、東さんはこれより9秒早く着いていました。動く歩道が動く速さと東さんが歩く速さと栄くんが歩く速さの比を最も簡単な整数の比で表しなさい。
(栄東中学校 2021年 問題1-(5) 問題文一部変更)
【考え方】
長文の問題ですから、まずは条件を整理するところから始めましょう。
問題で与えられている条件は時間条件だけですので、ダイヤグラムを利用するとよさそうです。
上のグラフを見ると、「ダイヤグラムの原則2 等高三角形(山&谷)」がありますから、ここに着目してみます。
上のように、等しい距離を進むのに、東さんが動く歩道上を歩くと6秒、立ち止まって動く歩道の速さだけで進むと15秒かかりますから、
より、
東さんが歩く速さ=⑤-②=③
動く歩道の速さ=②
とわかります。
このことをグラフに書き込んでみます。
グラフを見ると、栄さんが動く歩道上を歩いて進んだ距離(ア)を求めることができることに気づけます。
ア=⑤×10秒+②×3秒
5秒+3秒=8秒
(⑤×10秒+②×3秒)÷8秒=⑦ … 栄+歩道の速さ
⑦-②=⑤ … 栄さんが歩く速さ
答え 2:3:5
動く歩道やエスカレーターがテーマとなっている問題は、流水算の考え方を利用して解くことが多いのですが、本問は問題の条件をグラフに表すと、「ダイヤグラムの原則」を用いるだけで解くことができました。
では、もう1問見ていきます。
【問題】
兄と弟はエスカレーターに乗ってホームのある階から改札のある階まで移動します。兄が5段歩いて上がる間に弟は3段歩いて上がると、兄は50段、弟は40段歩いたところで改札のある階に着きました。このエスカレーターの段数は何段ですか。
(青山学院中等部 2020年 問題9 問題文一部変更)
【考え方】
「兄が5段歩いて上がる間に弟は3段歩いて上がる」という条件の読み取りがこの問題を解く1つ目のポイントです。
この条件は、「同じ時間(仮に1秒間としてみましょう)に、兄は5段歩き、弟は3段歩く」ということです。
50段÷5段/秒=10秒…兄がホームのある階から改札のある階まで移動するのにかかる時間
40段÷3段/秒=40/3秒…弟がホームのある階から改札のある階まで移動するのにかかる時間
2つ目のポイントは、このようにして求めた時間を利用した線分図の表し方です。
ここで、流水算の考え方
下りの速さ=静水時の速さ+流速
↓
下る距離=静水時の速さ×下る時間+流速×下る時間
を用います。
エスカレーターを歩きながら上る速さ=歩く速さ+エスカレーターの速さ
↓
エスカレーターの段数=歩く速さ×上る時間+エスカレーターの速さ×上る時間
これを利用して線分図をかくと、次のようになります。
上の線分図より、エスカレーターが
40/3秒-10秒=10/3秒間
に
50段-40段=10段
動いていることがわかります。
10段÷10/3秒=3段/秒 … エスカレーターの速さ
50段+3段/秒×10秒=80段
または
40段+3段/秒×40/3秒=80段
答え 80段
本問は、エスカレーター問題としては定番ですが、「~間に…」の「間」を「時間」に読み替えること、エスカレーターの段数を自分で歩いて上る段数とエスカレーターが運んでくれる段数の和として線分図にかくことが身についていないと難しく感じるでしょう。
今回は、「動く歩道問題」、「エスカレーター問題」について考えました。
1問目はダイヤグラムの原則だけで解くことができましたが、どちらかというと、動く歩道やエスカレーターがテーマとなっている問題は、流水算の考え方を応用して解くことが多いようです。
ですから、進んだ距離を分解して線分図に整理するという表し方も解法のひとつとして身につけておけるといいですね。