第533回 共学校の比と割合 4
「第533回 共学校の比と割合 4」
前回は、2020年度に行われた男女共学校の入試問題から、「比と割合」の単元の売買算について考えました。
今回は、食塩水の濃さの問題を取り扱います。
1問目は、濃さに関する基本レベルの問題です。
【問題】
濃度のわからない食塩水A、食塩水Bと濃度が7%の食塩水Cがあります。このとき、次の各問に答えなさい。
(1) 食塩水Aから100g、食塩水Cから100g取り出して混ぜ合わせたところ、濃度が9%になりました。食塩水Aの濃度は何%か答えなさい。
(2) 200gの食塩水Cを取り出したあと、熱して50gを蒸発させました。そこに100gの食塩水Bを混ぜ合わせたところ、濃度が12%になりました。食塩水Bの濃度は何%か答えなさい。
(3) 195gの食塩水Cを取り出したあと、5gの食塩を加えると濃度は何%になるか、小数第2位を四捨五入して答えなさい。
(法政大学第二中学校 2020年 問題4)
【考え方】
食塩水の濃さの問題を解くときの基本は、「塩分数」の式や食塩水のやりとりを見やすくする流れ図(フローチャート)に整理することです。
(1)
やりとりがありませんので、問題の条件を「塩分数(分母:食塩水の重さ、分子:食塩の重さ)」に整理し、「濃さの3公式 食塩水の重さ×濃さ=食塩の重さ」を用いてわかる値を書き込んでいきます。
上の式から、
□g=18g-7g=11g
とわかりますので、食塩水Aの濃さは、
11g÷100g=0.11 → 11%
です。
答え 11%
(2)
はじめに、食塩水C200gから水50gを蒸発させた様子を「塩分数」の式で表します。
次に、食塩水B100gを加えた様子も「塩分数」の式にします。
上の式から、
□g=30g-14g=16g
とわかりますので、食塩水Bの濃さは、
16g÷100g=0.16 → 16%
です。
答え 16%
(3)
(1)、(2)と同様に、問題の条件を「塩分数」の式にします。
上の式より、
18.65g÷200g=0.09325 → 9.325%
とわかります。
「小数第2位を四捨五入」とありますので、9.3%が答えです。
答え 9.3%
本問は食塩水のやりとりがない基本レベルの問題でしたので、塩分数を用いて問題の条件を整理してみると、どの問題も「濃さの食塩水の3公式 食塩水の重さ×濃さ=食塩の重さ」で解くことができました。(天秤法や面積図も利用できます。)
では、2問目を見ていきましょう。
【問題】
次の問いに答えなさい。
(1) 5%の食塩水が200g入っている容器Aと10%の食塩水が300g入っている容器Bがあります。それぞれの容器から同じ量ずつ取り出して移しかえたところ、容器Aの食塩水の濃度が6%になりました。何gずつ取り出したか求めなさい。
(2) 5%の食塩水が200g入っている容器Aと10%の食塩水が300g入っている容器Bがあります。それぞれに15%の食塩水を100gずつ入れて、それぞれの容器から同じ量ずつ取り出して移しかえたところ、容器Aと容器Bが同じ濃度になりました。同じになったときの濃度を求めなさい。
(3) 5%の食塩水が200g入っている容器Aがあります。容器Aに10%の食塩水と15%の食塩水をそれぞれの量が1:2となるようにして混ぜる予定でしたが、あやまって2:1となるようにして混ぜてしまいました。その結果、混ぜた容器Aの食塩水の濃度は予定より1%低くなってしまいました。実際に混ぜた10%と15%の食塩水の合計は、予定と同じ量であったとして、作られた食塩水の濃度を求めなさい。
(広尾学園中学校 2020年 問題2)
【考え方】
(1)
食塩水をやりとりしますので、その様子を流れ図(フローチャート)に整理していきます。
(解き方①…食塩の重さの増減に着目する)
「濃さの3公式 食塩水の重さ×濃さ=食塩の重さ」を利用してわかることを書き込みます。
上の流れ図を見ると、容器Aの食塩の重さが
12g-10g=2g
増えています。
もし、交換した食塩水の重さが100gであれば、容器Aから食塩が
100g×0.05=5g
容器Bに移り、容器Bから食塩が
100g×0.1=10g
容器Aに移りますから、容器Aの食塩の重さは
10g-5g=5g
増えます。
ですから、この問題で交換した食塩水の重さは、
100g×2g/5g=40g
とわかります。
答え 40g
(解き方②…天秤法を利用する)
下の流れ図の赤枠に着目すると、天秤法を利用出来ることがわかります。
5%の食塩水に10%の食塩水□gを混ぜると6%の食塩水200gになりますから、
より、
□g=200g×1/5=40g
と求められます。
(2)
(1)と同様に、問題の条件を流れ図に整理します。
(1)のようにいくつかの解き方がありますが、「移しかえたところ、容器Aと容器Bが同じ濃度になりました」に着目すると、「あとの容器Aの濃さ=あとの容器Bの濃さ=はじめの容器Aと容器Bの食塩水をすべて混ぜたときの濃さ」という関係を利用することができます。
答え 10%
(3)
濃度が予定より1%低くなったことを表しやすくするため、予定と誤って混ぜた実際の様子を、天秤図を用いて整理してみます。
上の天秤図で、予定のときも誤って混ぜた実際のときも食塩水の重さは200gと3ですから、うでの長さの比は予定でも実際でも同じです。
うでの長さの比をア:イとしてア+イに着目すると、予定では
13 1/3%-5%=8 1/3%
実際では
11 2/3%-5%=6 2/3%
にあたりますから、
予定のア+イ:実際のア+イ=8 1/3%:6 2/3%=5:4
です。
従って、予定のアを5□とすると実際のアは4□となり、
5□-4□=1% → 1□=1%
より、作られた食塩水の濃度は
5%+1%×4=9%
とわかります。
答え 9%
本問では食塩水のやりとりがありますから、流れ図を利用して問題の条件を見やすくしました。
その後、流れ図を見て、濃さの3公式が使えるか、天秤法や面積図で計算できるかなどを考えていくことで答えに達することができる問題でした。
今回は、男女共学校で2020年度に行われた入試問題の中から、食塩水の濃さに関する問題をみてきました。
食塩水の問題には、今回ご紹介した以外にもいくつかのバリエーションがあります。
それぞれ問題文中にキーとなる表現がありますので、「○○という条件があるときは☆☆が利用できる」という知識を身につけ、応用問題で活かせるような学習をしていければいいなと思います。