第530回 共学校の比と割合 1
「第530回 共学校の比と割合 1」
2020年度に男女共学の中学校で出された入試問題を単元別に見てきています。
ここまでの「文章題」に続き、今回からは「比と割合」の問題を取り扱います。
「比と割合」には、倍数算や分配算、濃さ、売買算などがありますが、1回目は倍数算について考えていこうと思います。
1問目は、基本レベルの倍数算です。
【問題】
兄と弟が持っている鉛筆の本数の比は3:2です。兄が弟に6本あげると、その日は7:8となりました。はじめに兄が持っていた鉛筆の本数を求めなさい。
(市川中学校 2020年 問題1-(3))
【考え方】
問題の条件を線分図に整理してみます。
このときに大切なことは、「:」でつながっている数には「同じマーク(○や□)」をつけることができるということです。
上の線分図の「6本」に着目すると、兄については
③-7□=6本、
弟については
8□-②=6本
という式を作ることができます。
③-7□=8□-②
⑤=15□
①=3□
これを兄の式に「代入」すると、
9□-7□=6本
1□=3本
とわかりますから、
3本×7+6本=27本
がはじめに兄が持っていた鉛筆の本数です。
答え 27本
「代入」したことからもわかるように、上記の解き方は「消去算」を利用したものです。
そこで、他の解き方がないか考えてみます。
上の線分図で□マークを使わないようにすると、
(③-6本):(②+6本)=7:8
という「比例式」を作ることができます。
この比例式は「外項の積=内項の積」より、
(③-6本)×8=(②+6本)×7
㉔-48本=⑭+42本
⑩=90本
①=9本
となりますから、はじめに兄が持っていた鉛筆の本数は
9本×3=27本
と求められます。
比例式を用いる場合は、計算の過程で「分配のきまり」、「等式の性質」を使用することがありますので、「計算力」も重要なポイントのひとつです。
ところで、本問は2人の間で鉛筆が移動しているだけですから、2人の合計本数に増減のない「和一定」の倍数算です。
この「和一定」に着目すると、もう少し計算を楽にすることができます。
そこで、問題の条件を「和一定」が利用しやすくなる線分図に整理し直します。
上の線分図で2人の鉛筆の合計本数(和)を1とすると、はじめに兄が持っていた鉛筆の本数は合計の3/5、6本を弟にあげた後の本数は合計の7/15ですから、合計の2/15が6本にあたることになります。
従って、
6本÷(3/5-7/15)=45本 … 1にあたる鉛筆の本数
45本×3/5=27本
のようにして、はじめに兄が持っていた鉛筆の本数を求めることができます。
また、問題の条件を次のような「はじめとあと」に整理すると、分数を用いずに計算することも可能です。
⑨-⑦=6本
①=3本
⑨=27本
本問は、倍数算の問題でした。
倍数算にはいくつかの解き方がありますが、本問のような「和一定」の問題や、「差一定」の条件がある問題では、それらを利用することで計算がしやすくなります。
そこで、2問目は「差一定」の倍数算の問題を見てみます。
【問題】
17/32の分母と分子に同じ数を足して約分したところ、3/4になりました。足した数を求めなさい。
(開智中学校 2020年 問題1-(2) 問題文一部変更)
【考え方】
一見すると倍数算に見えませんが、分数を「比の値」とみると、分数は「分子:分母」という比の形で表せますので、倍数算としてこの問題を解くことができます。
そこで分数を比の形で表し、「同じ数を足しても(または引いても)差は変わらない」ということと合わせて、「はじめとあと」に整理します。
□=㊺-⑰=㉘
約分する前の分数より①=1ですから、
□=28
です。
答え 28
本問も、前問と同様に消去算や比例式で解くこともできますが、「はじめとあと」に整理すると計算を楽にすることができます。
今回は、「比と割合」の中から倍数算の問題について考えました。
ご紹介しましたように、同じ問題でも条件整理の方法が異なると、その計算方法も変わってきます。
はじめは自分にとって考えやすい整理方法と計算で問題を解き、その後、より正確に、早く、楽に解ける方法を身につけていければよいと思います。