第519回 女子中の立体図形 4
「第519回 女子中の立体図形 4」
2020年度の女子中の入試で出された「立体図形」の問題について見てきています。
前回は「立体切断」について考えました。
今回は「水問題」を取り扱っていきます。
では、1問目です。
【問題】
<図1>のような側面に平行な長方形の仕切り①、②で左からA、B、Cの3つの部分に分けられている直方体の水そうがあります。この水そうのAの部分に水を一定の割合で入れていきました。<図2>は、水を入れ始めてからの時間とAの部分の水の深さの関係を表したグラフです。次の問いに答えなさい。ただし、仕切りの厚みは考えないものとします。
(1) 水は毎分何cm3の割合で入っていますか。
(2) グラフの□にあてはまる数を答えなさい。
(3) 水を入れ始める前に仕切り①をとりはずした場合を考えます。仕切り①があった場合と比べて、Aの部分の水の深さが同じになるのは、何分後から何分後ですか。途中の式や考え方も書きなさい。
(横浜雙葉中学校 2020年 問題2)
【考え方】
「水槽とグラフ」の問題は、「水槽を真正面から見た図にグラフからわかることを書き込む」が、解き方の基本です。
(1)
次の図のAの部分に着目します。
(20cm×10cm×50cm)÷2分=5000cm3/分
答え 毎分5000cm3
(2)
□分後には、下の図のようになっています。
(30cm×60cm×50cm) ÷5000cm3/分=18分
答え 18
(3)
仕切り①を取り除くと、ア→イ→ウの順に水が入ります。
(30cm×30cm×50cm) ÷5000cm3/分=9分…ア
(30cm×30cm×50cm) ÷5000cm3/分=9分…イ
(10cm×60cm×50cm) ÷5000cm3/分=6分…ウ
このことを、<図2>のグラフに書き込みます。
グラフのPは、仕切り①がある水槽では、AとBに20cmまで水が入っていることを示していますから、仕切り①があってもなくても同じことです。
ですから、P以降、2つの水槽の水面は同じ深さになります。
(20cm×30cm×50cm) ÷5000cm3/分=6分
答え 6分後から24分後
本問は、「水槽とグラフ」の問題を解くときの基本である「水槽を真正面から見た図にグラフからわかることを書き込む」が身についているかどうかを確認できる問題でした。
もし不正解のときは、仕切りがある水槽に水を入れたときに、水が入っていく順序が正しく真正面から見た図にかけているかを確認してみましょう。
では、次の問題です。
【問題】
右の図のような水そうがあり、真ん中は仕切りで区切られていて、仕切りで区切られた左側のそうをAそう、右側のそうをBそうと呼ぶこととします。図のAそう、Bそうの二か所に同時に同じ量の水を流し入れます。また、下の図は、水を流してからの時間と水そう内の最も高い水面の高さを表したグラフを途中までかいたものです。6分後に20cm、16分後に40cmの高さになります。次の問いに答えなさい。
(1) Bそうには毎分何cm3の水が流れていますか。
(2) 図のaの値を求めなさい。
(3) AそうとBそうの水面の高さが同じになるのは、水を入れ始めて何分後か求めなさい。
(4) 水そうの水がいっぱいになるまでのグラフを完成させなさい。
(湘南白百合学園中学校 2020年 問題3)
【考え方】
(1)
前問と同様に、水槽を真正面から見た図にグラフからわかることを書き込みます。
AそうよりもBそうの方が横の長さが短いですから、Bそうの水面の方がAそうりも速く上昇します。
20cm×12cm×30cm÷6分=1200cm3/分
答え 毎分1200cm3
(2)
底から20cmよりも上の部分も、Bそうの方が横の長さが短いと仮定してみます。
上の図の水色部分に着目します。
1200cm3/分×(16分-6分)÷(20cm×30cm)=20cm…水色部分の横の長さ
底から20cmより上の部分はAそうとBそうの横の長さが同じとわかりましたので、16分後もBそうの水面の方が高くなります。
20cm-12cm=8cm
答え 8
(3)
「Aそう、Bそうの二か所に同時に同じ量の水を流し入れます」とありますから、Aそうにも毎分1200cm3の水が入ります。
そこで、「もし隣の水槽から水が流れ込まないとすれば」と仮定して、水面の高さが80cmになるまでの時間を求めます。
(80cm×20cm×30cm) ÷1200cm3/分=40分…AそうにBそうから水が流れ込まないときに水面の高さが80cmになるまでの時間
16分+(40cm×28cm×30cm) ÷1200cm3/分=44分…BそうにAそうから水が流れ込まないときに水面の高さが80cmになるまでの時間
これらのことから、40分後にAそうの方がBそうよりも先に水面の高さが80cmになるとわかりますから、2つの水槽の水面が同じ高さになるのは16分後から40分後までの間です。
(1200cm3/分×16分)÷(20cm×30cm)=32cm…16分後のAそうの水面の高さ
(1200cm3/分×1分)÷(20cm×30cm)=2cm…1分間に上がるAそうの水面の高さ
(1200cm3/分×1分)÷(28cm×30
cm)=10/7cm…16分後から1分間に上がるBそうの水面の高さ
16分後には、Bそうの方がAそうよりも水面は
40cm-32cm=8cm
高くなっていますから、2つの水そうの水の高さが等しくなるのは
16分+8cm÷(2cm-10/7cm)=30分後
です。
答え 30分後
(4)
(3)より、30分後の水の高さは、
2cm/分×30分=60cm
です。
30分後からはAそうの方が水面の高さは高く、
80cm÷2cm/分=40分後
からBそうに水が流れ込みはじめます。
その後、
40分+{(80cm×48cm-16cm×20cm-8cm×20cm)×30cm}÷(1200cm3/分×2)=42分後
までは、BそうにAそうから水が流れ込みます。
※上の式は厚みのある仕切りの体積を引く方法で計算をしていますが、図の赤色斜線の部分にかかる時間を求めてもOKです。
最後に、底から80cmより上の部分に二ヶ所から水が入りますから、満水までの時間は42分+(20cm×48cm×30cm) ÷(1200cm3/分×2)=54分後です。
答え 右の図 (グラフが曲がる部分を見やすくするため、一部に赤色を用いています。)
本問では、グラフは途中までしか与えられていませんでしたが、それでも「水槽とグラフ」問題の解き方の基本である、「水槽を真正面から見た図にグラフからわかることを書き込む」を利用すること、さらに「一定の時間に入る水の量×時間=縦×横×高さ(直方体の形をした水の体積)」で求めたことを真正面から見た図に書き込むことで、順々に小問を解いていくことができました。
今回は、2020年度に女子中の入試で出された「水問題」をご紹介しました。
「水問題」は、今回の「水槽とグラフ」以外に、「棒入れ」、「容器を傾ける」などの問題があります。
しかし、いずれも容器や水槽を「真正面から見た図」を使うことは共通しています。
「水問題」では、見取り図を見たりかいたりすると「問題を解く方針を立てるためのイメージ」がつかみやすくなりますし、投影図(真正面から見た図など)をかくと「問題を解くために必要な数値」が得やすくなります。
ですから、他の立体図形の問題と同じように、家庭学習で問題演習に取り組むときは、多少の時間はかかりますが、自分の手で図をかくようにするとよいと思います。