第517回 女子中の立体図形 2
「第517回 女子中の立体図形 2」
前回より、近年の女子中の入試問題から、「立体図形」について見ています。
前回は体積や表面積を求める問題(「求積」)を取り扱っていましたが、今回は「展開図」がテーマとなる問題をご紹介します。
1問目は、直方体の展開図に関する問題です。
【問題】
下の図は直方体の展開図です。この直方体の表面積は何cm2ですか。また、体積は何cm3ですか。
(鎌倉女学院中学校 2020年 問題3-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
直方体の6つの面は、3組の合同な長方形(または合同な正方形2つと合同な長方形4つ)が向かい合っていますから、展開図の中には、次のように、ア、イ、ウの3種類の長方形があるとわかります。
上の図より、長方形アの横の長さは、
(14cm-6cm)÷2=4cm
とわかります。
ですから、長方形イの横の長さも、
17cm-4cm=13cm
と求められます。
従って、この直方体は次のような長さの立体だとわかります。
(13cm×6cm+6cm×4cm+4cm×13cm)×2=308cm2 … 表面積
6cm×13cm×4cm=312cm3 … 体積
答え 表面積 308cm2、体積 312cm3
本問は、直方体の面が3組の合同な長方形(または合同な正方形2つと合同な長方形4つ)からできていることと結びつけると、どのような展開図であるかがわかります。
なお、表面積は3方向から見える面の面積を2倍する方法を用いて計算していますが、「立体図形の表面積=展開図の面積」を利用してもOKです。
2問目は、正八面体の展開図についての問題です。
【問題】
図1のような8つの面からなる立体があります。8つの面はすべて同じ大きさの正三角形で、青、赤、黄、白、緑、黒、茶、紫の8色で塗られています。この立体を上から見ると図2のように見え、下から見ると図3のように見え、横から見ると図4のように見えました。この立体の展開図に残り4面の色を書き入れなさい。
(浦和明の星女子中学校 2020年 問題1-(6))
【考え方】
見取り図と展開図の問題は、見取り図の頂点に記号を打って考えるのが原則です。
次に、見取り図に打った記号を横から見た図4に記入します。
青と赤の間にCがあることに着目して、上から見た図2に頂点を記入すると、次のようになります。
さらに、横から見た図で、黒と緑の間にCがあることと、上から見たときと下から見たときではB、C、D、Eの並びが逆回りになっていることを利用して、下から見た図3に頂点を記入します。
従って、見取り図は次のようになります。
それぞれの色の三角形の頂点がわかりましたので、このことを展開図に書き込みます。
最後に、重なる点、一番遠い向かい合う点の記号を書き込んでいくと、上の図のようになります。
完成した展開図から、残りの4色が次の図のようになっているとわかります。
見取り図から展開図を完成させる問題は、「空間把握」が得意な場合はすぐに答えを出すことができると思います。
しかし、正八面体のように身の回りであまり見ることがない立体図形の場合は、上手くいかないこともあるでしょう。
そのようなときは、本問のように「頂点記号を書き込む(頂点打ち)」をすると、位置関係がわかりやすくなります。
また、展開図に記号を書くときは、「重なる点」、「一番遠い向かい合う点」、「頂点記号の並び順(時計回り・反時計回り)」に着目すると、記号を正確に記入することができます。
今回は「立体図形」の2回目として、見取り図と展開図に関する問題について考えました。
立体図形は、「空間把握」の力が強ければ問題図を見ただけで答えを導き出すこともできると思います。
しかし、問題に取り組んでいて「難しい」と感じるようでしたら、今回ご紹介したような計算方法やポイントを利用してみましょう。
これらのことがらが身につくと、解ける問題を増やすことができまので、家庭学習で立体図形の問題に取り組むときは、まずは、見取り図をかく、見取り図を見て展開図や投影図、断面図をかくなどして、立体図形を平面図形でとらえる練習をすすめていければと思います。