第513回 女子中の平面図形 3
「第513回 女子中の平面図形 3」
前回は、中学入試の中から女子中で出された「平面図形」の問題について、「求積(面積を求める問題)」の1行問題を見ましたが、今回取り扱うテーマは、「辺の比と面積比」の大問形式の問題です。
ご紹介する問題では、「平面図形と比」で学習する「高さが等しい三角形の面積比(等高三角形・区切り面積)」、「求積」で学んだ「琵琶湖型三角形」、「差とくればつけたし」という解法知識を用いますので、「平面図形と比」までの学習を終えていれば、5年生でも挑戦できそうです。
では、問題を見ていきましょう。
【問題】
下の図のような平行四辺形ABCDがあります。点E、Fはそれぞれ辺BC、辺ADのまん中の点で、AGとGBの長さの比は5:3です。また、AEとGDの交わる点をHとします。次の問いに答えなさい。
(1) 三角形AGEと三角形AEDの面積の比を最も簡単な整数の比で求めなさい。
(2) 三角形GEDと三角形AEDの面積の比を最も簡単な整数の比で求めなさい。
(3) 三角形DHEの面積が三角形AGHの面積より21cm2大きいとき、平行四辺形ABCDの面積は何cm2ですか。
(横浜共立学園中学校 2020年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
一般に、問題の図はすべての小問を解くために与えられています。
本問でも、(1)に関係しない点や線が書かれていますので、「三角形AGEと三角形AED」に関係する部分だけの図にしてみます。
上の左図で、四角形ABEFは平行四辺形ABCDの半分ですから、三角形ABEは平行四辺形ABCDの1/4です。
三角形AGE(赤色斜線)と三角形GBEは「高さが等しい三角形」ですから、「高さが等しい三角形の面積比=底辺の長さの比」という関係より、面積比が5:3とわかります。
三角形AGEの面積=平行四辺形ABCD×1/4×5/8
また、上の右図で、三角形AED(水色斜線)の面積は、平行四辺形ABCDの半分です。
三角形AEDの面積=平行四辺形ABCD×1/2
従って、
三角形AGEの面積:三角形AEDの面積比
=平行四辺形ABCD×1/4×5/8:平行四辺形ABCD×1/2
=5:16とわかります。
(2)
(1)と同様に、「三角形GEDと三角形AED」に関係する部分だけの図をかいてみます。
上の左図で、三角形GEDは「琵琶湖型三角形」ですから、「まわりから引く」または「等積変形」で面積を求めることができます。
「まわりから引く」ときは、(1)と同じように、「高さが等しい三角形の面積比=底辺の長さの比」を利用します。
三角形AGDの面積=平行四辺形ABCD×1/2×5/8
三角形GBEの面積=平行四辺形ABCD×1/4×3/8
三角形DEC=平行四辺形ABCD×1/2×1/2
なので、これら3つの部分(緑色斜線)の和は、
平行四辺形ABCD×(5/16+3/32+1/4)
=平行四辺形ABCD×21/32
です。
三角形GED:三角形AED
=平行四辺形ABCD×(1-21/32):平行四辺形ABCD×1/2
=11:16
(平行四辺形ABCDの面積を㉜と考えてもOKです)
なお、上の左図と右図では補助線を引いて、高さが等しい三角形を作りましたが、補助線を引かずに三角形AGDや三角形DECの面積を求めることも可能です。
また、「等積変形」を利用して三角形GEDの面積を求める場合は
のように変形します。
PEの長さは、台形GBCDに着目すると、PE=5.5とわかります。
※P、Eがそれぞれ辺DG、BCの真ん中の点ですから、(3+5)÷2=4、または、8(EF)-5(AG) ×1/2=5.5 としても構いません。
ですから、三角形PBCと平行四辺形ABCDの面積比は、次のようにして求められます。
底辺の比 1:1
高さの比 5.5:8=11:16
↓
三角形PBCの面積:平行四辺形ABCDの面積=1×11×1/2:1×16=11:32
(3)
「差とくればつけたし」が原則です。
(1)より
三角形AGEの面積=平行四辺形ABCD×1/4×5/8
(2)より
三角形GEDの面積=平行四辺形ABCD×11/32
とわかっていますので、
平行四辺形ABCDの面積=21cm2÷(11/32-5/32)=112cm2
です。
ここでは「三角形GEH」をつけたしましたが、「三角形AHD」をつけたして、三角形AEDと
三角形AGDの差が21cm2となることを利用して解くこともできます。
今回ご紹介しましたように、「辺の比と面積比」がテーマの問題は、前回の「求積」と異なり、入試では大問形式の問題として出されることが少なくありません。
ですから、「求積」で学習した「差とくればつけたし」や「辺の比と面積比」で学ぶ「高さの等しい三角形の面積比=底辺の比」などの解法知識を身につけたら、「等高三角形の作る補助線の引き方」や「小問ごとに図形をかく」といった「かき方」を練習し、問題に応じて必要な解法知識とかき方を自由に使いこなせるようにしておくことが、中学受験の算数では大切になります。
もし、塾の実力テストや
テキストの応用問題で、大問形式の問題があまり解けていないようでしたら、まずは、解法知識が身についているか、かき方は十分かといったことを再確認してみるとよいと思います。